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東電の信用力回復にブレーキ、綱渡りの経営再建を不安視

2012-07-24 18:57:16 | 文化(Culture)
[東京 24日 ロイター] 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)の信用力回復にブレーキがかかっている。決まった家庭向け電気料金の値上げは収益回復へのポジティブ材料だが、値上げ幅が大幅に圧縮されたほか、その前提となる原子力発電所を再稼動できるのかも不透明だ。
原発が再稼動できなければ追加の電気料金値上げに踏み切らざるを得ないが、交渉の難航は必至。綱渡りの経営再建を余儀なくされており、総合特別事業計画(総合計画)の策定・提出を契機に高まっていた投資家のリスク許容度は再び低下しつつある。

政府の原子力損害賠償機構による東電への1兆円出資も当初予定の25日からからずれ込む見通しとなっただけで、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムが上昇し、社債(SB)の価格にも下押し圧力がかかるなどマーケットは再建計画の進ちょくに敏感だ。東電の社債残高は依然として4兆円規模と巨大で、信用力の低下(価格下落)は投資家を直撃する。

結局、「電気料金が値上げされることが決まったことと、原損賠機構からの東電への1兆円出資がずれ込むとはいえ月内に払い込まれるとの見通しにあることを理由に、ワイド化の勢いは弱まりつつある」(外資系証券)が、信用リスクを積極的に取ろうというポジションが入らず、CDSのプレミアムは高止まりしたままだ。社債に関しても、買い意欲が高まらず、下落した価格の戻りは鈍いという。

原損賠機構からの東電への1兆円出資の遅れに関しては、月内に払い込まれれば信用力への影響は軽微であり、遅れたとしても、9月末の上期中であれば大した問題にならないとの見方が大勢だ。とはいえ、「値上げ実施日が2カ月間ずれ込むことによるマイナス影響は約400億円に上る」(東電)ことも事実。さらに「追加の特別損失が出てくる可能性があることに加え、資本の増強やバランスシート上の健全性を高められるという意味合いからも、今上期中の1兆円出資は大事なポイントになる」(大手証券)ことは間違いない。

ただ、今回は出資の遅れよりも、今回の電気料金の値上げ議論で見られたように次回の交渉も一筋縄ではいかないのではないかとの懸念をマーケットに植え付けたことの方が問題だ。「信用力を大きく損なうまでには至らないものの、交渉ごとに振り回されるリスクをマーケットは警戒している」(別の外資系証券)という。総合計画を提出した時も、後任会長人事や政府が握る議決権をめぐって調整が難航して遅れた経緯があり、政府への不信感につながっている。総合計画が予定どおり進むのかといった不安が強まっているほか、「計画の修正にまで話しが発展しかねない」(投信投資顧問)との警戒感もある。

そもそも、今回の家庭向け電気料金の値上げ幅は来年度中の新潟県柏崎刈羽原発の再稼動を前提とした数値。仮に再稼動できなければ、その分の帳尻を合わせるために電気料金の追加の値上げが避けられなくなる。値上げ幅を申請の平均10.28%から8.47%に圧縮したことの埋め合わせも必要になるが、値上げの再交渉は容易ではない。東電の広瀬直己社長は、値上げ幅の圧縮により年間800億円近くの減収要因になると話している。

停止中の柏崎刈羽原発の周辺にある活断層が連動した場合の地震の影響も不安視されており、「反原発に世論の声が高まっているなかで、他の電力会社はともかく、事故を起こした当事者である東電が原発を再稼動するのはたやすいことではない」(銀行系証券)との指摘が出ている。消費者はいずれ、原発再稼動を容認するか、追加の電気料金の引き上げを受け入れるかの選択に迫られることになるが、どちらも難航しそうで、最終決着までにかなりの紆余曲折が予想される。

発送電分離の議論に関しては、ひとまず安心感が出ている。送電網の所有権を残したまま運用を中立的な独立組織に委ねる機能分離と、持ち株会社方式で各部門を分社化する法的分離の2案が示されているが、枝野幸男経済産業相は21日付読売新聞朝刊のインタビューで「法的分離が望ましい」との考えを述べている。

法的分離型となった場合の社債権者への影響について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券・リサーチ部シニア・クレジットアナリストの安蒜信彦氏は「過去の例を見ると、債券保有者に配慮して既発債を連帯債務とする措置が講じられたことによって、大きな混乱や信用力の低下などを招くことなく、円滑に社債の承継が行われた。これらと同様の措置を講じる限り、投資家の利益が大きく損なわれるようなことはない」と指摘している。

(ロイターニュース 片山直幸 編集;伊賀大記)




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