事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「総理と呼ばないで」(フジテレビ)

2013-01-23 | テレビ番組

Sourikunimg01古畑任三郎」成功の余勢をかって、脚本三谷幸喜、主演田村正和&西村雅彦というドリームチーム再結集。枠は「踊る大捜査線」が終了した火曜9時。田村正和を現役の総理大臣にして……盤石の企画、のはずだった。オンエア(1997年春)前の視聴者の期待値もとても高かったと記憶している。

しかし視聴率は下降の一途。ドラマとしての評価も……当時、その原因として挙げられたのが三谷脚本の破綻。たとえば第一回など、本気でやれば90分は必要な分量をぶちこんでしまったと語られている。

でもね、みんな古畑や「王様のレストラン」を基準にして考えるから意外に思うのであって、実は三谷ドラマは視聴率が望めないことで有名だったのである。「竜馬におまかせ」「今夜、宇宙の片隅で」「合言葉は勇気」……死屍累々じゃないですか。

確かに、「総理~」はエンジンのかかりが遅く、面白くなりはじめるまでが長すぎたかもしれない。しかし後半どんどんボルテージがあがり、特に最終回にいたってはそれまでぶん撒いた伏線をきれいに刈り込むみごとな出来。涙涙です。

三谷のねらいは、

「政治家の虚飾を剥いで赤裸々に描く」

ことの正反対、

「どんな政治家だって最初はこの世の中をよくしようと思っていた時期がある」

だろう。能力も人望もない史上最低の総理が、だからこそなしえた政治改革とはどんなものだったか。うまい。

それに、三谷は政治を描くことと同時に、日本における本当の上流階級を描いてみたかったのだと思う。

その意味でわたしが好きなのは総理が妻(鈴木保奈美)と迷子になってしまった夜に、夫婦漫才をやって糊口をしのぐ「カラオケの総理」の回。日本で(架空の国という設定だけれど)「ローマの休日」をやろうと思えば、これほどのしかけが必要なのかと大笑い。

役者はみんないいが、総理失脚の引き金をひいてしまう首席補佐官を演じた小林勝也がひときわすばらしい。こんな俳優がいたなんて知らなかったなあ。

※ある理由があって山形県人が彼女の悪口をいうのははばかられますが、史上最大のミスキャストとでもいえそうな、鶴田真由の存在はちょっとなあ。彼女だけは、このファンタジーの住人ではなかった。

コメント
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