事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「映画クレヨンしんちゃん アッパレ!嵐を呼ぶ戦国大合戦」 (2002 東宝)

2009-09-13 | アニメ・コミック・ゲーム

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それでは2002年のゴールデンウイークにタイムリープ。

Kureshin03  大傑作。

 今年度ベストワンもう決定。

 親子四人で観たが、中盤にお姫さまが、家来にして愛する男のために全力疾走するあたりから全員涙ほとばしり状態。小二の娘にいたっては、終映後、お昼ご飯を食べに入った酒田の中華料理屋のなかで

「どうしてあの男の人(家来)は死ななきゃならなかったの?」

と突然思い出して再び泣きはじめたぐらいである。

 テレビのクレしんからは想像もつかないような繊細な画調、CGの使い方も上品。今回特に気合いが入っているのはおそらく音響。耳元をかすめていく銃声、槍のこすれ合う音、そして森の中の徹底した無音……すばらしい。

 そして相変わらず見事なのが原恵一の脚本だ。クレヨンしんちゃんというお馬鹿な設定と、時代劇という不自由なフォーマットの上に、だからこそ衒いなく極太のドラマを描いている。予告編からしてそうだったが、およそ現代の日本映画界で、ここまで黒澤明な世界が展開できる人材が他にいるだろうか。

特に「隠し砦の三悪人」からはキャラクター設定からセリフまで(「裏切り御免!」……しかもこの必殺のセリフを吐くのがボーちゃんなのには大笑い)引用し放題。ただパクるのではなく、すべて最後の青空のシーンに結実するように作ってあるのだ。すげー。

 前作の「嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲」があまりに素晴らしかったので、実はちょっと心配していたのだが、杞憂もいいところだった。今年これがベストテンに入らないようなら、それはそのベストが異常なのである。そう言い切っていいほどの、これは最高の映画体験だった。お昼のカニ炒飯とデラックスラーメンも最高。素晴らしい休日。

Kureshin04 ※その中華屋とは市立病院前の「桃花苑」。ここのカニ炒飯と豚肉の細切りラーメンを食べるたびに、酒田市民でよかったと痛感。新婚旅行は中国に行った私たち夫婦は、結局「中華は酒田に限る」という結論に至った。

この日はいかにも若奥様と一緒な教育委員会の職員と遭遇。

「あーホリさん」

「おー、今クレヨンしんちゃん観て来たんだけどさー。絶対観てよね。」

「はいはい(笑)」

あとでウチの奥さんにたしなめられる。

「新婚さんはしんちゃん観ないでしょう?」

そういうことではイカン!と私は思う。今回はあまり客が入っていないらしいので、下手すると次作からはお子さま向けオンリーの映画になってしまうぞ。「オトナ帝国~」とこれを、タマタマ出来上がった奇跡の作品にしてたまるか。来年も好き放題がんばれよ原!

……あれから7年。さまざまなことがおこった。おそれていたように興行成績はふるわず、原恵一はクレしんでやることはもうない、と5年もかけてクゥを完成し、戦国大合戦はまさかの実写映画化(これで東宝はもとをとったかな)。

「BALLAD」における“しんちゃん”がいじめの対象になっているあたりは、明らかにクゥへの返歌になっているし、オトナ帝国がなかったら「ALWAYS」の企画が実現していたかすらわからない。東宝の屋台骨をささえるアニメは、興行以上の貢献をしている。

なにより哀しいのは、せっかく桃花苑が出前してくれる学校に転勤したというのに、カニチャーハンがメニューからけずられてしまったことかな

野原しんのすけについても少し。

彼の行動は、明らかにいじめられっ子のそれ。でも想像以上に逸脱しているために喝采をあびている。心ひそかに彼を応援している子どもは多いはず。「子どもに見せたくない」番組としていつもクレしんはとりあげられるけれど、あれこそが子どもにとって救いになっている番組じゃないかなぁ。

コメント
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