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マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「アウシュヴィッツの〈回教徒〉」 柿本昭人著

2013-05-05 18:48:07 | 日記
本書には、アウシュビッツなどの、ナチスの強制収容所を生き残った方々が、
収容所内で「回教徒」と呼んでいた人たちについてどの様に捉えているか、
それが現代にどの様に影響しているかについて書かれてある。
強制労働と、乏しい食料による飢餓状態で、骸骨のように痩せて、消耗しきって、毛布を被って
体を揺すっているなど、死ぬ寸前の方々を蔑称で「回教徒」と呼んでいたそうだ。
生き残った方々は、「回教徒」達は、自分の意思も精神も持っていない、我々とは違う種類の人間で、
生きる価値が無いとしていたそうだ。
それに比べて、生き残った我々は、それだけの価値があるから
生き残ったと語られるそうだ。
強制収容所の異常な状況で持つようになった価値観が
解放後数十年しても変わらず、本人たちも、「回教徒」という
呼び方に何の疑問も持たずに、使っていたそうだ。
「アーリア人は優れていて、スラブ人は劣っていて、
アラブ人、ユダヤ人はさらに劣っている」という
ナチスによる強制収容という、一種の監禁、洗脳は
解放後も「有用なものは生きる価値があり、無用なものには生きる価値がない」という
価値観として、生き残った方々にも植えつけられて、
戦後社会にも大きな影響を残しているそうだ。
もちろん強制収容された方々には何の責任もないが
単に生理的に生き残ったからと、その後の対応が
なされなければ、自然に元に戻る訳ではないようだ。