2010年、念願だった南イタリアとシチリア島を旅しました。
その感動を絵織りにしようと昨年の個展でシチリア島を素材にして個展を開きました。
多くの方に来ていただき、中でも個展の初日にメイン作品『シチリアへ』というタペストリーを
お買い求めくださった方が現れたのには驚きました。
この作品はタオルミーナのギリシャ劇場からエトナ山を眺めた絵織りで、
今でも煙を吐き続けるエトナ山とイオニア海の青が美しく、丁寧に白く小さい家の1軒1軒までを
細かく織った自慢の作品でしたが、入ってくるなり「こんなものがほしかった!」という方に
ありがたく買っていただきました。 元気で飾られているかしら?
来年秋に開く個展は南北のイタリアを舞台にします。
南イタリアの代表地はナポリでしょう、やっぱりね。
アマルフィーもソレントも美しく、ナポリは汚れて治安が悪そうな街でしたが、
みんなが憧れて訪れるのが納得できる街でした。
ナポリへ来れば、カプリ島へ渡るのが常識になっていて、
そこでは<青の洞窟>に入るのがメインです。
客船から6人乗りの小さなボートに乗り換え、仰向けに寝たまま
船頭さんの手漕ぎで<青の洞窟>へと入ります。
その美しさと言ったら、あまりの美しさに息を飲むなんてものではありませんでした
小さな出入り口から入り込む太陽の陽射しが、青の色が単色ではなく ”様々な青” に変化していきます。
船頭さんはそこで『サンタルチア』を高らかに歌ってくれました。美声でした!
その感動を、どう表現できるのか・・・つづれ織りの絵織りでは単調なものにしかならないだろう・・・
考えた結果「シャギー織りにして色を混ぜる」という技法です。
シャギー織りというのは、本来、マット、絨毯で使うものです。
糸を8㎝に切って、それを結んでいく・・・非常に細かい作業です。
以前、トルコへ行ったとき、絨毯工場で織り子さんたちが同じ方法で絨毯を織っていました。
たて糸の下に絵を描いた紙があり、その絵の通りに織っていました。
私の絵織りもそれと同じ方法で織るので、今回も絵を描き、それに沿って織っていきましたが、
色選びはその時々の感覚で選んでいきました。
『青の洞窟』70×70 タペストリー
経糸は織り用のタコ糸です。横糸はウールのシャギー織り専用糸です。
真ん中の「は?織り忘れ?」というような”抜けた部分”は洞窟の出入り口です。
この出入り口をどう表現するかでは悩みましたが、これを”ぽっかり抜けて”織り、
この近辺を 明るい青 に表現しました。
”ぽっかり”部分はシルクのカモミール染めを使って織ってみました。
結果については、あまり自信がなかったのですが、もう執念ですね、執念で織り上げました。
目の疲れは”めまい”につながるからと医師に停められていますが、やめられませんよ。
これにて、今年の織りは終了します。目を休めます。