<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

カワセミ

2020-04-30 14:19:00 | 「遊来遊去の雑記帳」
カワセミ    <2002.10.27 ~ 11.9>
 しばらく見かけなかったのですが、10月に入ってから頻繁に見るようになりました。殆んど一日おきくらいに見ています。最初は流れのすぐ横のコンクリートブロックにいたのですが、黄色っぽいのでキビタキかなと思いました。それにしては頭が大きいなあと考えていると、いきなりパッと飛び、そのまま水面の少し上に一筋の青い線を引いて去りました。
 2日後、今度は葦の穂の中ほどに止まっているのを見つけました。ちょうど釣りざおのように水の上にせり出した穂は格好の見張り場所です。そこでじっと水の中を覗き込んでいたのです。私は驚かさないようにそっと後ずさりをしてそこを離れました。
 翌日そこへ行ったとき、そこには釣りざおのような穂はありません。ただ真っ直ぐ上に伸びた一本の穂があるだけです。なるほど、なかなかやるものだと思いました。カワセミは自分の体重で釣りざおのように穂を曲げて見張り場にしていたのです。
 その次のときは水面から頭を出した石の上に止まっていました。そのときカワセミは口に魚をくわえて食事中でした。見るとメダカくらいの大きさの魚です。確かにカワセミにすればそれでも十分に大きいのでしょうが、ちょっと拍子抜けしてしまいました。だいたいその辺りにいる魚は10cm以上のものばかりでそんなに小さいものは少ないのです。魚はたくさんいるのに、皮肉にも、カワセミには大きすぎてエサにはならないのかも知れません。魚を食べてしまうとパッと飛び立ちました。行ってしまうなと思った瞬間、ほぼ直角に折れ曲がり水の中にダイビング。間髪を入れず水中から飛び出して来ましたが、残念ながら手ぶらでした。食後の軽いエクササイズだったのかも知れません。すぐ横の岸に止まるとオレンジ色の胸をこちらに向けて流れをながめているようでした。
 この一月の間、たくさんカワセミを見ることができました。カワセミがいると川がきれいな気がしてうれしいのです。ずっと居てくれるといいと思います。


★コメント
 カワセミというと、なぜか、5月が頭に浮かびます。宮沢賢治の「やまなし」でも「5月」のところに登場するので、その関係もありそうです。しかし、何といってもあの鮮やかなスカイブルーと腹のオレンジ色は明るい5月の陽光に映えるでしょう。
 私が最初にカワセミを見たのはこの川ではなく、前の家から車で30分くらい離れた山の中でした。今はここから自転車で20分ほどの渓流です。そこには小さな川原があってよくテントを張って一晩過ごしたものです。20年近くも前のことになります。
 「やまなし」に合わせた音楽もこの川原での印象にもとに作りました。自分の教えたクラスの最後の授業の日にはできるだけ演奏してきたので相当な回数を弾いてきたのですが、非常勤講師を止めたこともあってしばらくは弾いていませんでした。今弾いてみたら殆ど覚えていました。キラキラ散乱する陽光と水の透明感がすばらしい賢治さんの世界ですね。これからは弾いて楽しむことができるので作ってよかったと思います。
2020年4月30日
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