<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

雛の季節

2022-07-02 12:05:08 | 「遊来遊去の雑記帳」
雛の季節      <2004.5.1>

 この季節になると川で子連れのカモをよく見かけます。親鳥の後ろに雛が一列に並んで川面を泳いでいく姿を見るのはいいものです。今年はまだですが、連休明けくらいにはきっと見られるでしょう。
 カモは冬にこちらに渡ってきて夏には北に帰ると聞いています。とすると春に孵った雛が1,2か月でシベリアまで渡ることが出来るほどに成長をするということでしょうか。このあたりのことは知りませんが、そうなると親鳥も餌を集めるのに随分忙しいことだろうと思います。
 春先には澄んでいた川の水も今は田んぼが始まったために泥が流れ込んで濁っています。先日、いつもの川で、親鳥が二羽、小さな中州の草むらの際にじっとしているのを見ました。川に近寄るときはいつもカモがいないことをそっと確かめます。それから土手を散歩するのですが、その日は草むらから覗き込んだら向こうの方にカモがいたので引き返そうと思いながら眺めていると、そのカモがこちらに近づいて来たのです。カモは気付いていません。水際の草の根元をがさがさ突っつきながらやってきます。草の根を食べているのか小魚を食べているのか分かりませんが、水が濁っていてはやりにくいだろうと思いました。サギなどは目で見て魚を捕っています。この濁りの中でどうやって魚を見つけるのでしょうか。この濁りは八月の終わりまで続きます。鳥たちには人間には想像もできないような能力があるのかも知れません。
 親鳥たちには、ここで充分餌を取って雛を育てて北の大地に渡り、そして冬にはまた戻ってきてほしいものだと思っています。

★コメント
 野生で生きるのはどんな生き物にとっても厳しいことでしょう。いつ何が起こるか分かりません。先日もそんな場面に遭遇しました。
 月に一度くらい山の中の御堂に水を取りに行きます。そこは無住ですが、十一面観音菩薩像などが安置されていて、近くの集落の人たちが月に一度、境内と本堂の清掃活動を行っているそうです。下の道から境内までは石段になっています。30段くらいでしょうか。先月のことですが、石段を上りかけると3段目くらいのところに何かいます。よく見るとフクロウの雛のようでした。かなり大きいです。ハトくらいはあります。そして横には水入れが置いてありました。ペットボトルを切って作ったようです。私は雛を驚かさないように端の方を通って石段を上り、水を取るとまた端を通って降りてきました。雛はじっとしていました。誰かが雛を見つけて水を置いたのだろうと思いました。
 ここは人里から離れています。私がここで人に出会うのは数年に一度です。その日は軽トラックが一台止めてあったので山仕事に来ているかもしれないと思いました。そこから山道を少し歩くと「丹波の里」という場所に出ます。棚田の跡があり、如何にもそんな感じがするので私が勝手に付けました。その辺りで人を見たのはこの30年で5回くらいです。
 その日は棚田跡で老人が草を刈っていました。山道では老婆(?)が石に腰掛けて「スマホ」を覗き込んでいました。何という不似合いな情景だろうと思いましたがこれが現代なのでしょう。私は老人の方に近付いて行き、声を掛けました。70代半ばくらいか。この辺りは鹿や猪だらけです。まさかとは思いましたが、棚田をまた開くのかと尋ねると草が生い茂っているのが気になるので刈っているという返事でした。フクロウの雛の話をすると水を置いたのは自分だということでした。横の木から落ちたのだろうということでした。人間の臭いが付くと親が警戒するかも知れないので水だけ置いてきたと話していました。
 そのあと私は少し山を登り、クヌギの林で気功をしました。すぐに鹿が一匹逃げていきました。夕暮れ近くに山を下りると老人たちはもう帰ったようでした。雛のことを考えながら山道を出て石段の方を見たときです。大きな鳥の後ろ姿にぎょっとしました。距離は5mくらいです。その刹那、鳥も私に気付いたのでしょう。翼を広げて飛び上がると石段に沿って上の方に飛んでいきました。大きい。羽を広げるとびっくりするほど大きいです。フクロウの飛ぶところを始めて見ました。
 鳥のいた所には雛がじっとしていました。やはり親鳥はどこかでずっと雛を見ていたのでしょう。だけど問題は雛を巣に連れ帰れるかどうかです。親鳥が雛を足でつかんで巣に戻すということは物理的には可能だと思いますが、獲物ではない雛をつかむという行為ができるかどうか、これが問題です。親鳥に思いつくのは雛に餌を運んでくるくらいではないかと思います。前に、巣から落ちた雀の子のところに親が餌を運んでくるのは見たことがあります。さっきの親鳥も餌を運んできていたのでしょうか。きっと親鳥はどこかから見ていると思うので雛には近付かず、すぐにそこを離れました。雛の生き残る確率は小さいが、これも自然の掟なら仕方ありません。
2022年7月2日

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