「B高で一緒だった西条和夫だよ」
雪と亮の前に現れた男は、自らの名を名乗った。
名前を言われても亮は最初ピンと来なかったが、蘇ってくる記憶があった。
高校生だった頃、同じクラスだったのだ。脳裏にぼんやりとあの頃の顔が浮かんだ。
「ああ、西条和夫か!」
ようやくピンときた亮に、西条は少し皮肉ってみせた。
「まぁ、高校中退した奴が同級生のことなんて覚えてるはずもないよな?」
チクリと刺された刺。
亮は西条の顔を凝視しながら固まった。
西条は亮が地方に行っていると思っていたため、ここで会ったことを意外に感じていた。
そしてかつてあれだけイケていた亮が、今はどうしてこんなにダサくなったのかと残念そうに溜息を吐いた。
チラ、と雪の方を見る。
「ま、そんなんでも女は連れてるのな」
目を丸くした雪に、西条は「ねぇコイツと付き合ってんの?」と聞いてきた。
当然雪は困惑する。「コイツと居たって何の得もないだろうに」と続ける西条の言葉にも戸惑った。
少し言葉の過ぎた西条に、亮は幾分キツメに腕を押した。
キャンキャンと弱い犬が鳴くようによく喋り、文句を垂れるところは変わっていない。
「てめーぶっ殺されてぇのか?」
そう凄んだ亮に対して、西条はお前こそ何も変わってねぇなと幾分ビビりながら言った。
「俺を殴るのはいいけどちゃんと金はあるのか?」
金もクソもねぇか、と西条は暴言を吐いたが、亮は拳を握って怒りを堪えた。
それを見て西条はほくそ笑み、落ち着けよと言って小さく息を吐いた。
「青田だってもうお前との縁は切ったみたいだし、静かに生きるんだな。
興奮したって何もいいことないぜ?」
雪は先輩の名前が出て来たことに幾分驚いて目を見開いたのだが、
亮はそんな雪にも気付かないほど、何も言えずその場に佇んでいた。
西条はニヤリと笑った。
亮が言い返せないことに、味をしめた表情だった。
西条は亮に、地方まで行って何をしてたのかと聞いてきた。
そして意地悪そうに「ピアノでも弾いてたのか?」と言うと、亮の肩がピクッと動いた。
西条の暴言は止まらない。
「田植えしてる横でベートーベンでも弾いちゃったりなんかして?投げ銭でも稼いで?」
雪は自分が口を挟むことではないと思いながらも、西条の口の酷さにドン引きだった。
そして次に彼が口に出した言葉は、明らかに常軌を逸していた。
「あ!お前の手、イカれちまったんだっけ?」
亮の視線が泳ぐ。
心の奥にこびりつく、自分の悔恨の縁が覗く‥。
さすがにこれには雪も黙っていられず、「ちょっと!」と思わず声を掛けた。
西条は悪い悪いとわざとらしく頭を掻いて見せると、卒業して随分経ってるもんだから大目に見てくれとニヤついた。
亮はそんな西条を、明らかに今までと違う目つきで睨んだ。
瞳の中に、憎しみの炎が揺れている。
西条は尋常ではない亮の表情に、冷や汗をかきながら幾分たじろいだ。
殴られる、という本能が彼を後ずさらせる。
亮の手が伸びた。
「このクソ野郎!!」
西条が腕で顔をホールドする。
「ひいっ!」
しかし亮はそのまま雪の手を取ると、
「行くぞ!」と行って反対方向へ歩き出した。
振り返ることなく、二人は足早にその場から去って行った。
そんな二人を見ながら、西条は決まり悪そうに居住まいを正した。
そしてポケットから携帯を取り出すと、亮の後ろ姿に向けてカメラを向けた。
高校時代、天才と褒めそやされていた謂わばヒーローが、今やあの落ちぶれたナリだったのだ。
そんな河村亮の姿を見過ごすわけにはいかないと、西条はシャッターを切った。
ピロリン、という音と共に画像は保存された。
西条は自分の、Twitterアカウントを開く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<えぐられた傷(1)>でした。
西条和夫‥なんとなく横山と似た匂いを感じますね。
友達になれそうな二人‥。
二人共ニヤニヤ。
次回は<えぐられた傷(2)>です。
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雪と亮の前に現れた男は、自らの名を名乗った。
名前を言われても亮は最初ピンと来なかったが、蘇ってくる記憶があった。
高校生だった頃、同じクラスだったのだ。脳裏にぼんやりとあの頃の顔が浮かんだ。
「ああ、西条和夫か!」
ようやくピンときた亮に、西条は少し皮肉ってみせた。
「まぁ、高校中退した奴が同級生のことなんて覚えてるはずもないよな?」
チクリと刺された刺。
亮は西条の顔を凝視しながら固まった。
西条は亮が地方に行っていると思っていたため、ここで会ったことを意外に感じていた。
そしてかつてあれだけイケていた亮が、今はどうしてこんなにダサくなったのかと残念そうに溜息を吐いた。
チラ、と雪の方を見る。
「ま、そんなんでも女は連れてるのな」
目を丸くした雪に、西条は「ねぇコイツと付き合ってんの?」と聞いてきた。
当然雪は困惑する。「コイツと居たって何の得もないだろうに」と続ける西条の言葉にも戸惑った。
少し言葉の過ぎた西条に、亮は幾分キツメに腕を押した。
キャンキャンと弱い犬が鳴くようによく喋り、文句を垂れるところは変わっていない。
「てめーぶっ殺されてぇのか?」
そう凄んだ亮に対して、西条はお前こそ何も変わってねぇなと幾分ビビりながら言った。
「俺を殴るのはいいけどちゃんと金はあるのか?」
金もクソもねぇか、と西条は暴言を吐いたが、亮は拳を握って怒りを堪えた。
それを見て西条はほくそ笑み、落ち着けよと言って小さく息を吐いた。
「青田だってもうお前との縁は切ったみたいだし、静かに生きるんだな。
興奮したって何もいいことないぜ?」
雪は先輩の名前が出て来たことに幾分驚いて目を見開いたのだが、
亮はそんな雪にも気付かないほど、何も言えずその場に佇んでいた。
西条はニヤリと笑った。
亮が言い返せないことに、味をしめた表情だった。
西条は亮に、地方まで行って何をしてたのかと聞いてきた。
そして意地悪そうに「ピアノでも弾いてたのか?」と言うと、亮の肩がピクッと動いた。
西条の暴言は止まらない。
「田植えしてる横でベートーベンでも弾いちゃったりなんかして?投げ銭でも稼いで?」
雪は自分が口を挟むことではないと思いながらも、西条の口の酷さにドン引きだった。
そして次に彼が口に出した言葉は、明らかに常軌を逸していた。
「あ!お前の手、イカれちまったんだっけ?」
亮の視線が泳ぐ。
心の奥にこびりつく、自分の悔恨の縁が覗く‥。
さすがにこれには雪も黙っていられず、「ちょっと!」と思わず声を掛けた。
西条は悪い悪いとわざとらしく頭を掻いて見せると、卒業して随分経ってるもんだから大目に見てくれとニヤついた。
亮はそんな西条を、明らかに今までと違う目つきで睨んだ。
瞳の中に、憎しみの炎が揺れている。
西条は尋常ではない亮の表情に、冷や汗をかきながら幾分たじろいだ。
殴られる、という本能が彼を後ずさらせる。
亮の手が伸びた。
「このクソ野郎!!」
西条が腕で顔をホールドする。
「ひいっ!」
しかし亮はそのまま雪の手を取ると、
「行くぞ!」と行って反対方向へ歩き出した。
振り返ることなく、二人は足早にその場から去って行った。
そんな二人を見ながら、西条は決まり悪そうに居住まいを正した。
そしてポケットから携帯を取り出すと、亮の後ろ姿に向けてカメラを向けた。
高校時代、天才と褒めそやされていた謂わばヒーローが、今やあの落ちぶれたナリだったのだ。
そんな河村亮の姿を見過ごすわけにはいかないと、西条はシャッターを切った。
ピロリン、という音と共に画像は保存された。
西条は自分の、Twitterアカウントを開く‥。
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<えぐられた傷(1)>でした。
西条和夫‥なんとなく横山と似た匂いを感じますね。
友達になれそうな二人‥。
二人共ニヤニヤ。
次回は<えぐられた傷(2)>です。
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アメリカが訴訟大国みたいによく聞くけど、韓国の事情はどーなんでしょ。ココで、殴られ(もしくは殴られそうになっ)たりすると、すぐ金金言うのは、みんな坊ちゃんたちだからかしら。
よくよく見ると、悲しいかな横山より西条の方がツラは良さそう。でもキャンキャン鳴くなら同じか。
遠藤さんも実はブサではない(華がないだけw)。
韓国も訴訟大国なんですかね~?日本だと学生同士でそういう話はほとんど聞かないですよね。
気になるところですね。
西条君の方がスタイリッシュな感じしますね。坊ちゃんでしょうし、乗ってるのも良い車っぽいし。
でも横山も農場の一人息子で結構裕福っぽいですね。どちらに軍配が上がるか‥!
あまり人気のない一本勝負という感じ(笑)
それに、今の韓国のような、過剰なまでの競争社会、勝ち組・負け組がはっきりする社会では、「落ちた犬」に対して同情する余裕はなくなっていきます。
そういう意味で韓国は、かなりしんどい社会になっていますね。
韓国と日本は似ている国、という印象もあったので、整形にしてもネット社会や自殺などにしても、度々驚かされてますし、
これは良い意味の方なんだけど、アイドルと呼ばれる人たちの質が日本とは雲泥の差なのにもタマゲます。
お気楽韓ドラばっかり見てると分からない、生き抜いてくのに大変な世界があるんですね。
徴兵もそうですし。。余談ですが、五人から二人でやっと再スタートした東方神起のユノ、今度は兵役が待ってるんですよね。エンターテナーとしてコレから!って時に何度も頓挫させられるのも韓国ならではなのでしょうか。
www.youtube.com/watch?v=kwNsCz5Yz6Y
ただ、過去には「兵役期間中に忘れられて人気がなくなること」を恐れての、芸能人による兵役逃れがしばしば問題となりましたけど、兵役を果たしてきた一般の人たちはそういう芸能人にめっぽう厳しいんですよね。
それで、今はむしろ、「積極的に兵役を果たして除隊したほうが、後々評価されて、芸能活動もやりやすくなる」と考える流れが主流になってきています。兵役後に俳優としての評価をさらに上げたウォンビンや、軍の中でも最もキツい海兵隊に志願して勤め上げたヒョンビンなどといったケースも出てきました。神話などは、メンバー全員兵役を終えて、今はフルメンバーで活躍していますし。
兵役についてむしろ問題になるのは、プロスポーツ選手のほうなんですよね…。サッカー選手などは特に全盛期はそんなに長くないですし、トップ級になると海外移籍も可能性があるわけで、兵役はそこに大きな足枷となっていますが、社会的にはそこに特例を認めることには否定的な声の方が多いと思います。
兵役、本当大変だと思います。
カップルなんかも兵役で別れる云々がついてまわるみたいですね。ボラもウンテクと付き合うのを躊躇ってる理由の一つが兵役中待ってられるだろうかという心配があるみたいですし‥。
確かにスポーツ選手、芸能人など最盛期に兵役が重なるのは色々な弊害が出てきますね。2年というのはそういう人達にとっては長い期間ですね。。日本では考えられないな。。
2pmのテギョンなんかはアメリカのグリーンカード持ってたのに韓国男子として兵役に就くため何年か前にグリーンカード放棄してます。青さんの仰るように今はサクッと兵役をこなしてしまった方があとあとの世間体は良いのでしょうね~。大変な世界です。
兵役は...大変ですよね。
軍に入るとほとんどの場合彼女に振られる。彼女が2年間待っていてくれたら、今度は男子のほうからいろいろ心境が変わってその彼女をふってしまう。→のが定番なくらいですし。
親友の一人が、彼氏が兵役を終えるまで待ち続け、その後も付き合い続けている、極希少な人ですが、私の周りにはこの子しかいませんね。兵役のせいで分かれていないカップルは。
さて、はたして河村さんは兵役は終えているだろうか。
現実逃避として入隊しちゃったり。
男子のなかでは現実逃避として兵役に行く人もいるそうです。横山が休学したとき、軍に入ったんだろうかと思っていました。ただの休学でしたけど。
行方を暗ましていた数年間、軍に言っていなかったらこれから行くんだろうし、大変そう(笑)
年とってからの入隊も大変だと聞きますし。
青さんの言うヒョンビン(シークレットガーデンの人?)の話は私も聞いたことがあって、通常なら芸能枠と言われる所で済ませるのを、あえて通常より厳しい所に志願して立派にやってきた、と。
そうなるとやっぱり評価が違いますよね。男があがるというか、人間性が高く見られる感じ?カッコいいのはスクリーンだけじゃないゾ、みたいな。
でも、そもそも自国の兵役に関しては、正直不満や反対の声はないのでしょうか。
コトが戦争や平和に関係するコトだけに、政治的な思想も関係してきそうですが。
青さんの仰るとおり、芸能人より、肉体的な意味でスポーツ選手にはかなりのダメージになるはず。
特例や、なんとか逃れる道を考える男子はどのくらいいるんだろう。。
るるるさんも、恋愛をする時には兵役のコトを考えるのでしょうか。
兵役が理由で別れるのも恋愛のうち、というのが韓国の若者の恋愛観だとしたら、似てると思っていた日本人女性の私たちとは大きく違う価値観を持っているように感じます。そんな障害など考えたコトないですもん。
河村さんもですが、佐藤先輩のコトも気になります。
イジメられそうで心配です。小太り君とかも。
横山、早く入隊しちゃいなよー。
あと、みんな兵役義務は嫌なんですけど、それを終えてきた人は、兵役制度の縮小や期間の短縮に一番反対する勢力になったりするんです。自分たちが経験したしんどい目を他人が逃れることは許せない、って心理は、ある意味部活のしごきの伝統が継承されるみたいなもので、人の心理としてはわからなくもありませんが、なんとも複雑な気持ちになります。
それを乗り越えてスポーツ選手が兵役免除を勝ち取るためには、オリンピックやワールドカップでメダル獲得かベスト4以上が必要です。それがかかった試合での韓国選手の気合いの入り方は、それはもう人生を賭けるくらいのものになります。
そういえば、インホの手の故障、もしかしたら兵役免除の理由になってたりしませんかね…?