Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

直面(1)ー知りたいー

2014-09-23 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)
もう去年のことを見て見ぬふりはしない、過去のことをただ埋めておくことは出来ないー‥。

先ほど雪はそう口にした。そして雪はゆっくりと、彼の方へと視線を流す。






淳はその場で身動ぎ一つしなかった。何も喋らない。

雪は構わず、彼に向かって言葉を紡ぐ。

「だからずっと聞き続けたんです。先輩は本当に、」



「”横山があんな奴だって分からなかった”んですか?」



それはもはや質問ではなかった。真実を知っている彼女の、誘導尋問だ。

淳はその中に隠された真意を嗅ぎ取り、じっと雪の瞳を見つめる。



雪もまた、じっと淳のその瞳を見ていた。

目を逸らさずに、ただ真っ直ぐに。



彼の瞳の中に灯っていた光が、徐々にその輝きを失って行く。

そしてその代わりに暗く不安定なものが、その中にゆらゆらと立ち上るのが見えた。



淳の瞳が完全に光を失っても、尚もそれは雪の瞳を見つめ続けていた。

彼女が視線を逸らすのを、まるで恐れているかのような目つきで。



空間は暗く歪み、その中で雪と淳は真っ直ぐに相対していた。

雪から以前向けられたあの怯えたような視線が、淳の脳裏を掠めるー‥。








その沈黙を破ったのは、淳の突然の行動だった。

彼は勢い良く雪の手首を掴むと、瞬きもせず彼女に詰め寄る。

「どんな答えを聞きたい?」



そして淳はあの高圧的な眼差しをしながら、再度彼女にこう告げた。

「この前も言ったじゃないか。

過ぎたことを一つ一つ問い質して、何をどうするつもりなんだ」




その淳の眼差しは、幼い頃から彼が向けられて来た父親からのそれに似ていた。

それ以上立ち入ることを許さない、それ以上の反抗を許さない、その言葉なき命令にー‥。



けれど雪は怯まなかった。

真っ直ぐに淳の目を見ながら、声を荒げて言い返す。

「過ぎたことに目を逸し続けたせいで、私は今回また同じ目に合いました!」



雪は続けた。

今までずっと耳にして来た、問題の原点をはぐらかすその言葉を。

「”俺には分からなかった” ”そこまでするとは思わなかった” ”そこまでは意図してなかった”」 



今まで彼が口にして来たそれらを、次々と雪は並べた。

そして彼女は淳に向かって、ハッキリとこう言ったのだ。

「私が先輩に望んでる答えは、そういう類のものじゃありません」



するとそれまで口を噤んでいた淳が、ふと言葉を発する。

「それじゃ何だよ‥?」



そして淳は俯きながら声を上げた。

まるで追い詰められた時の、子供のように。

「それじゃ何て言えばいいんだよっ?!」



突然のその大声に、雪はビクッと身を竦めた。

初めて目にする彼の一面を前にして、雪は目を見開く‥。







彼の声の余韻が、しんとした部屋を微かに震わせている。

淳は雪の手首を握ったまま、浅い呼吸を繰り返している。



俯いた淳のその瞳は、何も映っていないかのように真っ暗だった。

ゆらゆらと揺れる視線の中に、隠された彼の一面がチラリと覗く。



体温を感じられない程冷たい手は、ガタガタと震えていた。

雪はその手を見つめながら、彼の中に居るその存在を確かに感じる。

 

しかし程なくして、手は体温が徐々に戻り、その震えも治まった。

淳は気持ちを落ち着けるように、一つ深呼吸をする。

 

そして淳は握っていた手を離した。彼女から顔を逸らしながら。

「雪ちゃん、こんなの違うよ。

俺は横山なんかのせいで、雪ちゃんとこんな風になりたくない‥」




彼はまた目を背けようとしていた。

ようやく僅かに開いた心の扉が、再び閉まろうとしているのだ。



雪は心のままに、淳に向かって手を伸ばした。

力加減なんてする余裕は無かった。そのまま両手で淳の胸ぐらを掴み、ぐっと自分の方に引き寄せる。

「”お前のことが嫌いで、わざと横山にそう話した”」



雪は射るような目つきで、淳の目を真っ直ぐに見据えた。

その瞳は決して逸れない。燃えるように紅い決意の炎が見える。



雪は向き合い続けた。

生臭くて、残酷で、目を背けたくなるようなその真実と。

「"ただ忙しくて連絡出来なかったんじゃない" ”亮のせいで腹が立って連絡しなかった”」



「これが、私の望む答えです」




淳は逃げることが出来なかった。

剥き出しの彼を知りたい、その強い決意が込められた彼女の瞳が、全力で淳を引き留めるー‥。



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<直面(1)ー知りたいー>でした。

鬼気迫るような雪ちゃんが、全力で淳を引き出そうとしている‥!

淳は動揺していますね。そりゃそうです。今までこんな風に人とぶつかったこと無かったんですもの‥。

物語は急展開!先が楽しみですね~~^^


というところで水を差すようですが‥。

本日9月23日は、平井和美女史の誕生日です~



今頃留学先で楽しくやってるんでしょうか‥。

とにかくおめでとうございます!


次回は<直面(2)ー伝えたいー>です。


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対面(3)ー昨夜の話ー

2014-09-22 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)


雪は心の綻びから、ポロポロと気持ちが零れ出るのを感じていた。

我慢出来ずに、先ほどから抱えていた不満を口に出す。

「先輩、昨日私が録音した物を受け取ってたんですってね?

あの中に私の悲鳴や怒声が全部録音されてたでしょ?

それを聞いておいて、どうしてメールの一通も打たないで居られるんですか?!」




雪は両の拳を握り締めながら、心の奥にこびりついているその感情を吐露した。

彼のこういった一面に触れる度、心の一部が零れ出る。

「正直、寂しいです‥すごく‥。

先輩がもしそんな状態だったら、私ならすぐに電話しますよ?!」


 

幾分激しい雪のその追及を、淳は目を丸くして聞いていた。

そして彼女の言葉が切れると同時に、冷静なトーンで話し出す。

「それは‥録音は事が起こった後で福井が送って来たし、それを聞いた時はすでに時間も遅かった。

雪ちゃんもケガは無かったっていうから、敢えて連絡する必要を感じられなかったんだよ。

ただでさえ俺ら微妙な雰囲気だったし、近い内会いに行くつもりだったし‥」




淡々と続ける淳の言葉を、雪は顔を青くして聞いていた。

あんぐりと開けた口から漏れる声は、まるで言葉にならない。



するとふと、彼に対して同じ様な感情を感じた時の記憶が蘇った。

あれは夏休み後半、一人暮らしをしていた時の隣人、秀紀が警察に捕まった時のことだ。

あの時彼は、電話でこう言った。

「現場で下着が出てきたんじゃしょうがないよ」

「兄さんが無実ならすぐに釈放されるだろうから心配ない」

「秀紀兄さんのことは俺らがこうして話し合ったところで解決することじゃない。まずは待ってみよう」




あの時雪はこう思ったはずだ。

”幼馴染みって言ってなかったっけ‥?”と。



あまりにも冷静な彼の返答に覚えた違和感。

そして雪は今また、その違和感を彼に対して感じている。

そうだった‥この人、本来こういう人なんだ‥



彼の方をチラリと見ると、キョトンとした顔で青ざめる雪をじっと見ていた。

その瞳の中に嘘や後ろめたさは窺えない。



ということは、やはり彼は元来そういった性分なのだということだ。

けれどそれに「はいそうですか」と納得する雪ではなかった。そういった性分だろうが何だろうが関係ない。

今日はとことん彼と向き合うつもりでここまで来たのだ。



胸にムカムカと込み上げる怒りにも、素直になろうと思った。

雪はバッと顔を上げ、彼に食って掛かる勢いで口を開く。

「太一と連絡を取る時間はあっても、私と連絡を取る時間は無かったってことですかっ?!」



雪の皮肉を込めたその言葉と勢いに、幾分淳は目を丸くした。雪の主張は止まらない。

二人の言い合いが始まった。

「先輩の家の前で待ってる時もずっと”忙しい”の一言メールだったのに、

太一とメールをやり取りする時間はあったってことですよね?!」


「本当に忙しかったんだよ。

福井から写真を受信した時も、俺は一方的に受けただけで、一つ一つに返事をする時間もなかった」


「それじゃあ昨日は?昨日も太一と話をしたんですよね?!」



それまで冷静に言葉を返して来た淳だったが、雪の勢いに押されて幾分感情が波立った。

二人の声のトーンが、徐々にシンクロして荒くなって行く。

「それじゃ自分はどうなんだよ?」



「自分こそ友達に報告する時間はあっても俺に説明する時間はなかったのか?

なぜ俺に話をしなかった?!横山からストーキングを受けてるって!」




「雪が話さないから、俺も陰で助けることしか出来なかっ‥」

「全部埋めてしまおうって言ったじゃないっ!!」



バンッと雪が机を叩いた拍子に、カップが傾いでコーヒーが零れた。

雪はキャッと声を上げ、淳はそんな雪を心配する‥。



コーヒーは既に冷めてしまっていた為、雪は火傷せずに済んだ。

液体は、ただ雪の袖を冷たく濡らす。



そして二人の間の空気も、冷めてしまったかのようだった。

俯く雪のことを淳はじっと見つめるが、二人の間に言葉は無い。



暫くして、淳が雪の名を呼びかけた。

しかし雪は彼のそれには応えず、小さな声で口を開く。

「先輩と会えなかった間‥ずっと‥先輩のことを考えてました」

 

雪は彼の方を向かないまま、言葉を続けた。濡れた袖が肌に冷たい‥。

「先輩があんな風に怒って立ち去って、また互いに冷戦状態で。そうしてる間に誤解が積もって、

また私は先輩にこんな風に問い質して‥。尋ねてみても、先輩は常に先輩なりの理由があるから、そこで終わってしまう。

一体どうして私たちは、いつもこうなってしまうのか‥」




淳も俯いたまま、その話を聞いていた。そんな彼に、雪は問い掛ける。

「先輩も分かっているでしょう?」



答えない淳に向かって、尚も雪は言葉を続ける。

「去年私が体験したことには、全部先輩が関わっていました。

知らないはずがありません」




「今回の件も私一人で解決したと思ってたら、最終的には陰に先輩が居た‥」



雪は膝に置いた手をゆるりと握っていた。徐々に話の舵をそこへ向かって切って行く。

「遠藤さんのことについても同じです」



「レポートを捨ててまで私に奨学金を譲歩した先輩に対してありがたく思うべきか、

遠藤さんを利用したその方法がおかしいと怒るべきか、ものすごく困惑しました」




あの時去り際に雪は言った。”どうしてもありがとうとは言えそうにないです”と。

それは今でも変わっていない。雪は心の中でもう一つの問題について考える。

平井和美の件についても複雑に絡んでたような気がするけど‥、

もうそれはさらに掘り下げようとは思わない‥




雪は平井和美の問題もまた”同じこと”だと思ってはいたが、それを口には出さなかった。

雪は頭を抱えながら、両極にあるその感情の狭間で揺れている。

「今回のことも、私を助ける為に証拠を整理してくれた先輩に対してありがたく思うべきか、

太一がスレを上げることをそのまま傍観した先輩に対して怒るべきか、分からないんですよ‥!」




雪は途方に暮れながら、力無く言葉を続けた。だんだんと話は、真相に近付いて行く。

「どうして‥」



「一体どうして、

相反する気持ちを持ち続けなければいけないのかって、苦しくて‥」




淳は真っ直ぐに雪を見つめていた。

しかし雪は彼の方を見ること無く、遠いその場所を眺めながら言葉を紡いでいる。

ずっと二人の間に横たわっている、元凶とも言えるその場所を。

「ずっと考えて考えて‥それで、わかったんです」



そして雪は遂にそこに辿り着いた。

二人が今、向き合わなければならないそこに。

「去年のことをただ埋めるなんてことは、出来ないってことを」





雪は今まで避けてきたその領域に、とうとう足を踏み入れるー‥。





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<対面(3)ー昨夜の話ー>でした。

秀紀さんの件の時は、言ってみれば他人事なわけで、淳に対するその違和感を飲み込んだ雪ちゃんですが、

今回はやはり自分のことなので見過ごせなかったようで‥。

佳境に入って参りましたね‥!


さて次回から<直面>で記事を綴って行きたいと思います。(本家と題名合わせてます^^!)


次回<直面(1)ー知りたいー>です。


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対面(2)ー静香の話ー

2014-09-21 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)


雪が画面に映したその写真は、淳と静香が腕を組んでいるところを写したそれだった。

雪は淳の顔を直視しないまま、彼に真実を追及する。

「単なる”悪縁の知り合い”や”幼馴染み”という説明じゃなく、

本当のところを聞きたいんです。

彼女宣言されて、わざわざ学校にまで現れて先輩と腕組んで‥。見過ごせって方が無理です」




淳は何も言わず、その場に視線を落としていた。

雪はやはりそんな彼の方を向けないまま、ずっと気になっていたことを続けて口にする。

「その上去年は‥仲良さそうに‥電話してましたよね‥。

覚えてるんです‥あの時出くわしたから‥」




雪はどんよりした雰囲気でそう言った。

それを聞いた淳は、覚悟を決めたように一つ息を吐く。



淳は顔を上げると、雪に向かって話し始めた。

かつての幼馴染みであり、今は悪縁の仲のその人の話を。

「聞いて。雪ちゃん、君には俺と静香の関係は理解し難いかもしれないけど‥。

俺には兄弟もいなかったし、静香とは性格も話をするのも、意外に一度もぶつかることが無くて、良い関係だったんだ。

それで俺にとって静香は、友達の姉以上の存在だった。少なくとも、高校の時までは‥」




「けど結局、胸の内は違った」と淳は続けた。その答えに雪が問う。

「どういうことですか?」



淳の脳裏に、静香の姿が浮かんだ。

高級ブランドを身に纏い口元に笑みを湛える、獰猛で美しいその獣の姿が。

「静香にとって俺はただの金づるで、俺にとって静香は、金目当てで周りをウロチョロする奴らと大して変わらない。

いつだって自分が困ったときは何でもしようとするけど、余裕が出来ればすぐに手の平を返して、俺の揚げ足を取って父にチクる」




淳は沈んだ色を帯びた瞳をしながら、冷めた口調でこう言った。

「今までずっとそんな感じ」



淳は淡々と話を続ける。

「無闇に拒否しようとすれば、すぐに父に告げ口するから‥。

正直、静香が何かをやらかしたとしても、俺に拒絶権は無いんだ。

そうなると俺も、静香が確実に助けになる時は断る理由がないだろう。断ったら被害を被るし」




自分が静香を丁重に扱う理由を、淳は雪に説明した。

去年雪が目にした電話をしている場面も、そういった理由の元でだったのだと‥。



黙って聞く雪に、淳は続けてあの写真のことを説明する。

「その写真も、その時の状況とタイミングで撮られたんだろう。誤解しないで。

どうせ状況を撹乱する為に悪意の元に撮られた写真ってだけさ。それに静香は、他の理由で学校に出入りしてるし」




そして淳は口を噤んだ。

雪は話し終えた淳を真っ直ぐに見つめながら、小さく頷く。

「はい‥」



雪の返事を聞いた淳は黙り込み、彼の前で雪もまた沈黙した。

しんとした空気が、二人の間に張り詰める。



テーブルに置かれたマグカップに目を落としながら、

雪は心の中が徐々に騒ぎ出すのを感じた。

本当に‥?



瞼の裏に、以前静香と共にテーブルを共にした時のことが浮かんで来る。

直接的な言葉こそ無かったが、あの時感じた彼女から自分へ発せられるあの嫌悪感‥。

あの人にとって先輩は、本当に金づるってだけだろうか‥?私にはどうしてもー‥



雪は疑心のこもった視線を上に上げ、チラリと彼の方を見た。

すると彼もまた、雪のことをじっと見つめている。



雪はピンを刺された虫のように、その場に動けなくなった。

目を見開いたまま、ただ沈黙する。



淳の視線はまるで針のように鋭く、雪の視線を捕らえて離さない。

長い前髪の合間から、深く蒼がかったその瞳が見える。



雪はやはり視線を外せない。

彼は瞬きもしないで、彼女のことを凝視するー‥。

 

その緊迫した空気に耐えられなくなり、遂に雪は彼の瞳から視線を外した。

俯きながら、鼓動をズクズクと早めながら。



「あ‥それと‥」と、雪がもう一度口を開きかけた時だった。

彼の大きな手が、その長い指が、彼女の耳元の髪に掛かる。



突然彼から触れられて、雪は赤面しながらその場で固まった。

しかし淳はそんな雪のリアクションなど気に留めず、続けて雪にこう問う。

「それより大丈夫だった?」



そして彼の質問の核心部分に触れた時、雪の表情が固まった。

「福井から聞いたよ。昨日横山が酷かったって」



見ないふりをしていた心の傷に、不意に彼が手を触れて来た。

雪はピクリとそれに反応する。



しかし淳は彼女の異変に気づかず、その話題を続ける。

「特に何も無かったって言うから良かったけど」



そして雪は小さくこう口にした。

「それなら、連絡くれるべきでしょう‥?」と。



その雪の言葉に、淳は目を丸くした。

雪を見ると、彼女は不満気な表情で俯いている‥。



心に満ちたその気持ちが、ほつれたその場所から零れ出ていた。

雪は感情のうねりにまかせて、彼に向かって口を開く‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<対面(2)ー静香の話ー>でした。

昨日に引き続きまた雪ちゃんに厳し目ですいませんが‥。

静香のことですが、雪ちゃんは結局先輩の口からどういった言葉が出れば納得するんでしょうかね‥。

「本当のこと」が聞きたいというのは分かりますが‥う~ん‥といった感じです。

まぁ~それでも淳も雪に対しての秘密が多すぎますわね‥。結局静香との取引のことはおくびにも出さずでしたし。

前回と今回の二人の<対面>は、まだ心の表面をなぞっているだけですね。。


次回は<対面(3)ー昨夜の話ー>です。


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対面(1)ー亮の話ー

2014-09-20 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)
暫し玄関先で顔を突き合わせていた雪と淳だが、

やがて淳は雪の為にスリッパを用意してやった。彼女を室内へと促す。

「上がって」 「はい‥」



雪はおずおずと廊下を進んだ。

淳はそんな彼女のことを凝視している。



「どうして‥」と口にする淳に対し、雪は下のオートロックを、他の人が通る時に一緒に入って来たと答えたが、

そういう意味での「どうして」では無かったかと思い直し、俯きながらこう答える。

「じっとしていられなくて‥大学からその足で飛んで来たんです。

ずっと待ってたから‥」




その言葉に秘められた彼女の思いを感じ、淳は沈黙した。

じっと彼女のことを見つめる。



やがて淳は、決まり悪そうに頭を掻きながら口を開いた。

「いや‥本当に忙しかったんだ。

この前一回会社を抜け出して大学に行ったことで仕事が倍になって‥。

父親からも灸を据えられて‥」




彼の言葉を受けて、雪の脳裏に先日の光景が浮かぶ。

それじゃああの日来たのは‥



あの日大学に来た彼は、「インターン先には許可を貰ってるから大丈夫」と言ったのだが、実際は違ったようで‥。

「自分からさぼったなんて言い出せなくってさ。

なんかちょっと恥ずかしくて‥」




淳はそう言いながら、決まり悪そうに頭を掻いた。

雪はそんな彼の言葉を聞いて、どこか意外な気持ちがした。先輩が会社をサボったなんて‥。



暫し何も言えない雪だったが、不意に淳がくるりと振り向いてこう口にした。雪はおずおずと答える。

「楽にして座って。何か飲む?雪ちゃん、甘いもの好きだったよね?」

「はい‥あ、でもお構いなく‥」



来ることを知っていたら何か買っておいたのに、と淳は口にしてキッチンへと向かった。

お茶の用意をする彼の後ろ姿を、雪はソファに座って眺めている‥。

 






やがて淳は温かいコーヒーとパイを皿に載せ、雪の前に置いてやった。

雪はコーヒーに口をつけながら、沈黙を保っている。






そして暫く経った頃、雪は口を開いた。

「話をしに‥来たんです」



雪の言葉に対し、淳は一言「何を?」と尋ねた。

雪は俯きながら、来宅の理由を続けて口にする。

「それは‥色々です。

メールに書いたように、先輩に聞きたいことや答えて欲しいことが、沢山あります」




そして雪は顔を上げ、淳に向かってこう質問した。

「あの日‥先輩は怒ってましたよね?

私と河村氏が仲良くなったから‥」




そう言った雪の顔を、淳はじっと見つめていた。

彼は何も答えない。



雪は覚悟を決めるように、一つ息を吐いた。

河村亮に対する自分の思いを、言葉に出す為に。



そして雪は再び俯き、額の辺りに手を当てながら、自分の気持ちを話し出した。

「‥そうです。かなり親しくなりました。

沢山助けてもらったし、それで私もその分だけ助けてあげたいって思って‥。

正直言うと‥河村氏に高卒認定試験も受けて欲しいし、ピアノももう一度弾いて欲しい。

そして自分なりの人生を探して欲しいと思っています」




淳は黙ってそれを聞いていた。幾分目を丸くしながら。

雪は依然として俯いている。



雪は続けた。

テーブルを眺めながら、幾分強い口調で本心を口に出す。

「そして‥先輩と河村氏、互いが持っているわだかまりが、少しでも解ければ良いと思いました」



それを聞いた淳は、目を丸くした。

強い口調で語られる彼女の本音。彼女は、淳と亮の和解を望んでいる‥。



強く言い切る形で自分の意見を口にした雪だったが、口にした後で少しそれに対して揺らぎを見せた。

気まずさを隠すように、髪の毛を触りながら言葉を濁す。

「いやだから‥絶対そうしろってわけじゃなくて‥」



「先輩と河村氏が、お互いをものすごく嫌って恨み合ってるのが見て取れるから‥。

詳しい事情も知らずに、深く口出しすることも出来ないですけど‥。

とにかく‥周りの人達が上手くいってる方がやっぱり良いですから!」




「二人の間に立つ人間」の立場として、雪は先程の発言の根拠をそう述べた。

淳は彼女に向かって「雪ちゃん」とその名を呼ぶが、



雪はその続きを待たずに話を締め括った。「河村氏に関する話は以上です」と。

とにかく自分が話すべきことを、まずは全て口にする必要があった。

雪は鞄から携帯を取り出しながら、彼に向かってこう続ける。

「謝罪はあの時沢山したし、説明することもこれ以上ありません。

あとはもう、先輩に聞きたいことだけです」




淳は続きを待ちながら、「何を?」と口にして先を促した。

すると雪は言葉の代わりに、あの画像を表示してその意味を示す。



それを目にした淳の眉が、ピクリと動いた。

雪は彼の顔が直視出来ず、気まずい思いを抱えて目を逸らす。



そして話の内容は、静香のことへとその舵を切って進んで行く‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<対面(1)ー亮の話ー>でした。

あの日、先輩が会社をサボって大学に来ていたことが発覚‥。



せっかく若作りまでして雪に会いに来たのに、雪と亮の絆を見せつけられ、

こんなんなっちゃって‥↓



あ、ちがいましたね‥。こんなんなっちゃって‥↓



挙句そのサボったツケで仕事に追われる日々‥。

なんか哀れで泣けてきます‥なんとなく人間臭くて少し微笑ましくもありますが。。


さて雪と淳の対面、まずは亮の話から始まりました。意見の分かれる所だとは思いますが、

私の意見は、少し雪ちゃんに厳し目ですかね~‥。穿った見方をすれば、「私が気まずいから二人仲直りして」という、

自分本位な主張なのかな~と少々思ったり。。さすがに偏見ですかね‥^^;

でももし自分が雪ちゃんだったら、そう思うのかもしれません。。人というのはワガママな生き物だ~^^;


さて次回も対面続きます。


次回<対面(2)ー静香の話ー>です。


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