はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

人はなぜ陰謀論にはまるのか

2024年01月21日 | 
2024/01/21


人はなぜ陰謀論に惑わされてしまうので
しょうか。

毎日新聞編集委員の大治朋子さんが書いた
『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか 』

 
「ナラティブ」という言葉が
キーワードとして語られています。

「ナラティブ」という英語は
日本語では「物語」「語り」「ストーリー」「言説」
などと訳されることが多いのです。

英語圏では日常的に
使われている言葉だそうです。

この本では、ナラティブを
「様々な経験や事象を過去や現在、
未来といった時間軸で並べ、意味づけをしたり、
他者とのかかわりの中で
社会性を含んだりする表現」(p.19)
と定義しています。


歴史的な出来事は
時間軸で並べただけでは意味を持たないが
物語としてのナラティブの形式にしていくと
人の頭で受け取りやすくなるのです。

人は偶然の出来事の羅列でも
そこに物語性を見いだしてしまう習性を
持っています。

〈好きな人のやることにはプラスの係数をかけて
嫌いな人のやることにはなにかと
マイナスの係数で過小評価してしまう。〉

〈同じことを見たり聞いたりしても
人によって反応が異なるのは、
入ってきた情報にその人なりの「重みづけ」が
なされているからだ。〉


養老孟司さんに話を訊いたときには
養老さんは無意識の果たす役割の大きさに
ついて言及しています。

日常の大半を動かしているのは
意識ではなく、無意識です。

車の運転に喩えれば
運転席にいるのが無意識
意識は助手席に座っているのに近い。

無意識が下した決断を
意識が合理化するのです。


≪陰謀論とナラティブの関係について≫は
〈自分の中で疑いがある時に、
自分の中で整理できない時、
架空の敵を作れば、
非常によく話がつながる。
それは脳のクセですね。
脳はできるだけエネルギーを使わない方向に行く。
話がつながってストーリーになるほうが
脳の省エネになりますから。〉

〈陰謀論は、現象にそれらしい因果関係をつけて
首尾一貫したストーリーにして魅了する。
根拠がないから反論も反証もできない。
陰謀論は最強のナラティブといえる〉

ナラティブは不安や怒りを煽り
社会を分断する「情報兵器」といわれているそうです。


例えばトランプ支持者。
トランプ支持者の多くは被害者意識を抱えた白人。
トランプ支持者の中には
中央政治に見放されたと感じている人々が
少なくない。

社会システムは一部の人の有利になるように
操作されていると考えている人々。
その社会で、自分は被害者だと考える人々なのです。
  トランプの演説は常に「被害者物語」だ。
支持者はそこに自分自身を重ねて魅せられる、という。


 文化人類学者ガッサン・ハージの
「パラノイア・ナショナリズム」という言葉が
紹介されています。
 
〈パラノイア・ナショナリズムとは、
病的にナショナリズムにこだわる風潮。
あらたな分配システムからはじきだされた、
希望の持てない人々が、
もともと差別されてきた先住民族や移民、
シングルマザーや生活保護者という
社会的弱者を嫉妬、敵視する。
彼らは国家を食いつぶす外敵と考えて国を憂う。

国家との心理的一体感を一方的に見いだし、
生きる希望に代える。
強迫的に不安材料を見いだしては
国家を憂慮することにより自尊心や自己愛を維持する。〉
(P.55)


ここまで読んだとき
私は日頃、ネットで目にする
あるアスリートの過激なファンを
思い浮かべたのでした。

その人たちの言動が
まったくもって理解できなかったのですが
この「パラノイア・ナショナリズム」と
同じだと思ったのでした。

彼との心理的一体感を一方的に見いだし、
生きる希望に代えている。
強迫的に不安材料を見いだしては
(SNSやマスメディアに迫害されているという)
彼を憂慮することにより
自尊心や自己愛を維持しているのだと。

迫害されている彼を守るのは
私の責務であるという誤った自尊心の
ナラティブ、思い込みが
一部のファンたちの過激な発信を
支えていると思ったのです。





・・・・・・・・

この本には安倍晋三元首相銃撃事件と
小田急・京王線襲撃事件
伊藤詩織さん、五ノ井里奈さん の
ことについても書かれていて
その解説も興味深いのです。



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