はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

平野卿子著『女ことばってなんなのかしら?「性別の美学」の日本語』

2024年09月06日 | 
2024/09/06


著者の平野響子さんはドイツ語翻訳者。

ご自身のドイツ留学経験や翻訳作業の中で感じた
日本特有の女ことばを考察しています。


本の紹介文には
〈日本語の「女ことば」。それは日本人に根付く「性別の美学」の申し子である。翻訳家としてドイツ語・英語に長年接してきた著者が、女ことばの歴史や役割を考察し、性差の呪縛を解き放つ。 〉
と、あります。

 
女ことばは日本語にしかない、とは
よくききます。

外国語には女ことばはありませんが
「女らしい言い方」はあるようです。

これは後述しますね。


ふつうなら本の題名を
『女言葉とは何か』にでもしそうなのに
『女ことばってなんなのかしら?』
と、女ことばを使ってますね。

こうすると
女のつぶやきっぽく感じて
内容もエッセー本かなと思ってしまう。

でもこれも意図してつけた題名に違いありません。

「女ことば」は公式発言には使われず
女同士で会話でもしているような
雰囲気を醸し出すなあと
本の題名から改めて感じたのです。




〈「少年/少女」という言葉は対語でない。〉
というのを読んだときに
ああ、そうだった、と気づきました。

「少年/少女」は、〈男の子/女の子〉の意味だから
対になると思っていたのです。

でも、漢字が対になるなら「少男/少女」です。

「少男」という言葉はついぞ見たことないですね。

「男」というのがデフォルト(基本形)で
年が少ないというのが少年なんですね。

気がつかなかったけれど
おもしろいですね。

「女」はデフォルトでないので
「女」という字はよくくっつけられる。
女医とか、女優(今は使われないが)とか。



女ことばは古くからありそうに思いますが
実はそうでもないようです。

・・・・引用・・・・・

〈いま、私たちが「女言葉」と認識している
「だわ」「のよ」といった言葉づかいの起源は、
明治時代の女学生の話し言葉です。
ただ、当時は正しい日本語とは扱われず
「良妻賢母には似合わない」「下品で乱れた言葉」
だと、さんざん批難されていたのです。

女言葉が正当な日本語に位置づけられたのは、
朝鮮半島や台湾などの植民地でとられた
同化政策の中でのことです。
「女と男で異なる言葉づかいをする」のが
日本語のすばらしさであるとされ、
多様な言葉づかいの一部だけを「女言葉として語る」
ことで、概念が生み出されました。
 (言語学者・中村桃子『朝日新聞』 2021年1月13日)

戦後、日本のプライドを取り戻すため、
女学生のはやり言葉だったはずが、
起源を捏造され、
「山の手の中流以上の良家のお嬢様の言葉だった」
と喧伝されるようになります。
日本女性は丁寧で控えめで、上品だという
「女らしさ」と結びつけられ、
「女ならば女言葉を使うはずだ」という
意識も生まれました。
世間で女ことばだとされているものが、
日本の伝統ではないどころか、
為政者の都合によって推奨され、
広まったものだということがわかります。〉(p.19)

・・・・・・・・・・・・・

なるほど。

近代の家父長制社会の成立とともに
女らしさが求められるようになり
それが言葉にも表れたものだったんですね。


〈江戸時代までは女と男の言葉づかいは
あまり変わらなかったと言われている。
日本で女性が社会的に差別されるようになったのも
明治時代以降であることも、無関係ではない。〉
と書かれています。


このへんで次回にしますが
日本の特徴や西洋語の話も興味深いです。



コメント (2)
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