やんまの気まぐれ・一句拝借!

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春暁の夢のつづきはなかりけり 堀江善江

2018年03月22日 | 俳句
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堀江善江
春暁の夢のつづきはなかりけり
春眠暁を覚えずと言う季節。とろとろと不思議な夢にやっと覚めた。でどうだと言っても夢はシャボン玉の様に弾けてもう続きは無い。夢の余韻に取り残されたまま暫し茫然と床の上に座す。厨には朝餉の仕度か日常の音が響いている。命短き人生のどのくらいの時間を夢で過ごすのだろうか。その夢は出来れば悪夢ではなく薔薇色の夢であって欲しい。:俳誌『春燈』(2017年6月号)所載。

姉さんが欲しいと泣く子春の雨 滝本かよ

2018年03月22日 | 俳句
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滝本かよ
姉さんが欲しいと泣く子春の雨

春の雨が降っている。細やかで少し明るいがやや冷え込む雨である。泣いている子がいる。泣く子は男の子だろうか親は母親だろうかそんな詩情が読み取れる。お姉さんが欲しいよ~と泣いている事から推し量れば一人っ子なのかも知れぬ。私は幼くして妹を失っている。以来一人っ子の独りには慣れている。両親の愛情を独占し世間の苦労を知らずに育ってしまった。成長してからこれが祟ってまったく世渡り下手で随分と苦渋をなめさせられた。思えば妹は七つ下ながら私よりずっと賢かったと覚えている。別れるには早すぎた。:つぶやく堂ネット喫茶店(2018年3月20日)所載。