やんまの気まぐれ・一句拝借!

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午後といふ不思議なときの白障子:鷹羽狩行

2021年12月08日 | 俳句
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午後といふ不思議なときの白障子:鷹羽狩行
夜が明けて日が昇りそして沈んで夜が来る。
そんな一日の時の流れに身を任せいると、ふとぼんやりしている自分を発見する。
午後といふ不思議な時間に漂っている。
目に入るのは障子とそこに映し出される影ばかりである。
何かの葉が映り何鳥かの影が横切った。
ただそれだけの事が幻影として心に宿る。
いざさっと障子を開けて現の吾にもどるべし。
現に見る冬薔薇の紅が愛しい。
<鳥か葉か影流れゆき白障子:やの字>
角川合本歳時記:20190328日所載
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竹藪に住みつく風や冬ざるる:前九疑

2021年12月07日 | 俳句
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竹藪に住みつく風や冬ざるる:前 九疑
冬の雑木林を歩いている。
すっかり葉を落とした木々の間から日光が射し込んで輝いている。
足許には名も知らぬ草がその木漏れ日を浴びている。
冬の散策をしていると蒲公英や蝶々が目に留まる。
彼らは年間存在しているのだ。旬を過ぎた草木も虫たちも懸命に命を紡いでいる。
ぶーーんと冬の蜜蜂の羽音が近付きそして遠のいた。命愛しや。
朝日新聞:朝日俳壇:20211205日所載<遅く起き早く寝る日々冬ざるる:やの字>
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