やんまの気まぐれ・一句拝借!

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午後といふ不思議なときの白障子:鷹羽狩行

2021年12月08日 | 俳句
738
午後といふ不思議なときの白障子:鷹羽狩行
夜が明けて日が昇りそして沈んで夜が来る。
そんな一日の時の流れに身を任せいると、ふとぼんやりしている自分を発見する。
午後といふ不思議な時間に漂っている。
目に入るのは障子とそこに映し出される影ばかりである。
何かの葉が映り何鳥かの影が横切った。
ただそれだけの事が幻影として心に宿る。
いざさっと障子を開けて現の吾にもどるべし。
現に見る冬薔薇の紅が愛しい。
<鳥か葉か影流れゆき白障子:やの字>
角川合本歳時記:20190328日所載
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竹藪に住みつく風や冬ざるる:前九疑

2021年12月07日 | 俳句
737
竹藪に住みつく風や冬ざるる:前 九疑
冬の雑木林を歩いている。
すっかり葉を落とした木々の間から日光が射し込んで輝いている。
足許には名も知らぬ草がその木漏れ日を浴びている。
冬の散策をしていると蒲公英や蝶々が目に留まる。
彼らは年間存在しているのだ。旬を過ぎた草木も虫たちも懸命に命を紡いでいる。
ぶーーんと冬の蜜蜂の羽音が近付きそして遠のいた。命愛しや。
朝日新聞:朝日俳壇:20211205日所載<遅く起き早く寝る日々冬ざるる:やの字>
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木々の間に輝く日あり冬の草:山西雅子

2021年11月25日 | 俳句
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木々の間に輝く日あり冬の草:山西雅子
冬の雑木林を歩いている。すっかり葉を落とした木々の間から日光が射し込んで輝いている。足許には名も知らぬ草々がその木漏れ日を浴びている。冬の散策をしていると蒲公英や蝶々が目に留まる。彼らは年間存在しているのだ。旬を過ぎた草木も虫たちも懸命に命を紡いでいる。ぶーーんと冬の蜜蜂の羽音が近付きそして遠のいた。命愛しや。
角川・合本俳句歳時記:20190338日所載<指先の無き手袋で開封す:やの字>
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手袋に五指を分ちて意をけっす:桂信子

2021年11月24日 | 俳句
735
手袋に五指を分ちて意をけっす:桂信子
何かを躊躇している。外気の寒さに手袋を嵌めながら考えているがまとまらない。一指一指と嵌めて五本の指が収ったところで意を決した。たった一度の人生を出し惜しみするものか。前進あるのみと自分を鼓舞する。何かと消極的な性格ではあるが追い込まれれば決断をせざるを得ない。余談ではあるが小生も高齢となっての開腹手術をすると医師の告知である。気の小さな自分でも否応なしの受諾である。心が寒いが心の手袋は無い。:角川・合本俳句歳時記:20190338日所載<指先の無き手袋で封開ける:やの字>
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冬麗のたれにも逢はぬところまで:黒田杏子

2021年11月24日 | 俳句
734
冬麗のたれにも逢はぬところまで:黒田杏子
冬は空気も澄んで見晴らしが良い。行けども行けども先々の景色が美しく見えてくる。だんだん歩いているうちに人影もまばらになった。このまま人に逢わないところまで足を伸ばすそうか。健康に恵まれて健脚が自慢の今日この頃。歩ける内打ちに歩くべし。歩けや歩け。冬の雲雀が鳴いている。共に鼻唄とゆこうか。命楽しや。<冬麗の命愛しみつつ歩む:やの字>
角川・合本俳句歳時記:20190338日所載
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冬虹の一脚ふかく街に立て:ひであき

2021年11月23日 | 俳句
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冬虹の一脚ふかく街に立て:ひであき
雨上がりの都会の片隅に虹が出た。今は真冬の寒さの中にほのぼのと心が温まる。虹の片方の街中からもう片方は遙か山並みに掛けられている。この街を終の住み処と決めた今の幸せを噛みしめる。ふと先日目にした流れ星も偶然の出会いであったが、星の場合は何かを「祈ろう」と言う感覚であった。虹の場合は明日への「希望」をと言う気持ちになる。どうか明日も佳き日であらん事を。
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鳥声を聴き分けてゐる日向ぼこ:赤猫

2021年11月22日 | 俳句
732
鳥声を聴き分けてゐる日向ぼこ:赤猫
小春日和での日向ぼこ。気分爽やかな一時である。無心の中でも五感は健在である。肌には風、目には落ち行く枯葉の舞、耳には鳥の声が響いてくる。ツンツンと甲高いのは鵙であろうか。お馴染みのチュンチュンは雀、カアカアは鴉、判別出来ぬ声も交じる。日常の些事を離れてのリフレッシュ、さあ明日の命も満喫しようか。
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神のみが知る我が命蝉もまた:石川春子

2021年09月02日 | 俳句
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神のみが知る我が命蝉もまた:石川春子
医師に何と言われようが寿命の事は神のみが知るところである。外でうるさく鳴いている蝉だってそうだろう。蝉の季節を生き延びたら御の字と言うところである。昔ある人がピンピンコロリと苦しまずに死にたいと言ったが蝉たちが苦しんでいる様には全く見えない。小生も日常の忙しい些事に囲まれながらそんな時を迎えたい。それにしても命愛しやである。<法師蝉無常ジンジンジンと鳴く:やの字>:朝日新聞『朝日俳壇』(2021年8月29日)所載。
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・・・療養の為暫く連載を中止いたします。お付き合い戴きありがとうございました。

神のみが知る我が命蝉もまた:石川春子

2021年09月02日 | 俳句
731
神のみが知る我が命蝉もまた:石川春子
医師に何と言われようが寿命の事は神のみが知るところである。外でうるさく鳴いている蝉だってそうだろう。蝉の季節を生き延びたら御の字と言うところである。昔ある人がピンピンコロリと苦しまずに死にたいと言ったが蝉たちが苦しんでいる様には全く見えない。小生も日常の忙しい些事に囲まれながらそんな時を迎えたい。それにしても命愛しやである。<法師蝉無常ジンジンジンと鳴く:やの字>:朝日新聞『朝日俳壇』(2021年8月29日)所載。
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・・・療養の為暫く連載を中止いたします。ご静聴ありがとうございました。

接種終へ命惜しむや蝉しぐれ:細野八重子

2021年09月01日 | 俳句
730
接種終へ命惜しむや蝉しぐれ:細野八重子
新型コロナウイルスのワクチン接種もようよう終えた。折りしも命を惜しむかの様な蝉時雨。命を惜しむと言えば戦争以外で人類全体がこんなに混迷した記憶が無い。余談ではあるが小生も一病を得て命と向き合う事となってしまった。幸運にも復帰出来ましたら又お目に掛からせてください。いざさらば!<君たちも命惜しめや蝉時雨:やの字>:朝日新聞『朝日俳壇』(2021年8月29日)所載。
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八方に二百十日の湖荒るる:稲荷島人

2021年08月31日 | 俳句
729
八方に二百十日の湖荒るる:稲荷島人
湖水が四方八方に白波を立てている。二百十日前後は日本列島に台風が襲う季節である。一方で穏やかな日は行楽シーズンでもあり山の湖水に遊ぶ人も多々ある。そんな行楽客が釣りを諦め湖水の前に佇んでいる。舞い落ちる木の葉も深い落葉色を帯びている。深まる秋の気配に植物も鳥や獣も冬支度へ突入して行く。急ぐなよ、急ぐなよと誰かが呟いた。<自転車や二百十日の風強し:やの字>:角川書店『合本・俳句歳時記』(2021年3月28日)所載。
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岩塩のくれなゐを舐め古酒を舐め:日原傳

2021年08月30日 | 俳句
728
岩塩のくれなゐを舐め古酒を舐め:日原傳
酒飲みは酒にこだわって肴は気持ちだけあれば満足する。今日は紅ほのかな岩塩を少々での一盃となった。酒は一升瓶の古酒である。新酒も出回ったと聞くがそれはこれからぼちぼち攻める事にしている。小生の知己の中に塩ではなく焼き海苔で一盃と言う方がいらした。これはこれで酒の味を殺さずに粋なつまみだと思う。今夜は当り目で古酒を片付けることにしようか。<これきりの古酒で潰るる齢かな:やの字>:角川書店『合本・俳句歳時記』(2021年3月28日)所載。
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草刈りしあとの草の香朝の風:津田正義

2021年08月29日 | 俳句
727
草刈りしあとの草の香朝の風:津田正義
朝飯前に一仕事と草を刈った。朝風に乗って草の香がぷうんと漂う。何だか今日は良い事がありそうだ。この年齢になって仲間の元気度に差が出始めた。伏す者あれば旅に雀躍する者もあり。贅沢は言わないがこうして草刈りをする程度の健康を賜わりたい。更に加えれば一病息災いつまでも美酒にありつきたいものだ。<草刈ればあの虫この虫弾けゆく:やの字>:読売新聞『読売俳壇』(2021年8月23日)所載。
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そのときはそのときと決め髪洗ふ:深沢ふさ江

2021年08月28日 | 俳句
726
そのときはそのときと決め髪洗ふ:深沢ふさ江
悩みを抱えてしまった。どう考えても出口の無い悩みである。こちら立てればあちらが立たず。義理と人情と感情との板挟み。案ずるより産むが易しいざその時になれば何とかなるだろう。成り行き次第さと決めケセラセラである。冷水で髪洗ってさっぱりする。自分てかくも単純な存在なのである。<髪洗ふ心の垢を流すまで:やの字>:読売新聞『読売俳壇』(2021年8月23日)所載。
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銀河濃し娘と恋の話しなど:ほりもとちか

2021年08月27日 | 俳句
725
銀河濃し娘と恋の話しなど:ほりもとちか
夜空の月や星を愛でる季節となった。今日も天上には銀河が濃い。そんな夜長を下界の母と娘が恋の話しなどしている。母親の恋は一体どんな恋だったのか。娘は今どんな男性と付き合っているのか。外の虫時雨など耳に届いてはいない。<我がアリバイ何処に在りや銀河濃し:やの字>:朝日新聞『朝日俳壇』(2021年8月22日)所載。
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