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炭 太祇
下萌や土の裂目の物の色
時は春。生命がみずみずしい色を増して来た。土の裂け目にも物の色が見えている。下萌の目に沁みる鮮やかな色である。土手へ出れば菫、蒲公英、土筆や蓮華。空では雲雀がピーチクパーチク。人々の服装も明るい春色となって来た。かくも世間が喜々とした背景にあるのに小生はこの頃に何時も病む。花粉症に非ず春愁だと固く信じている。:山本健吉「鑑賞俳句歳時記」(1997年1月15日)所載。
炭 太祇
下萌や土の裂目の物の色
時は春。生命がみずみずしい色を増して来た。土の裂け目にも物の色が見えている。下萌の目に沁みる鮮やかな色である。土手へ出れば菫、蒲公英、土筆や蓮華。空では雲雀がピーチクパーチク。人々の服装も明るい春色となって来た。かくも世間が喜々とした背景にあるのに小生はこの頃に何時も病む。花粉症に非ず春愁だと固く信じている。:山本健吉「鑑賞俳句歳時記」(1997年1月15日)所載。