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番匠博雄
駅前の居酒屋消ゆる花の冷
駅前から居酒屋が一つ消えた。勤め帰りにふらりと良く行ったものだった。仕事の緊張と家庭のくつろぎの狭間をアナログに程よく結んだ店だった。今日はこの店の熱燗で温まる事もなく通り過ぎる。梅から桜へと花の便りがちらほらと届く。さはさりながら肌には寒い花の冷えである。わが街に消えた居酒屋「京助」には竹下夢二の美人画を思わせる女将がいた。往時茫々。:俳誌「はるもにあ」(2017年5月号)所載。
番匠博雄
駅前の居酒屋消ゆる花の冷
駅前から居酒屋が一つ消えた。勤め帰りにふらりと良く行ったものだった。仕事の緊張と家庭のくつろぎの狭間をアナログに程よく結んだ店だった。今日はこの店の熱燗で温まる事もなく通り過ぎる。梅から桜へと花の便りがちらほらと届く。さはさりながら肌には寒い花の冷えである。わが街に消えた居酒屋「京助」には竹下夢二の美人画を思わせる女将がいた。往時茫々。:俳誌「はるもにあ」(2017年5月号)所載。