やんまの気まぐれ・一句拝借!

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太陽より大きく描かれチューリップ 金子敦​

2020年02月29日 | 俳句
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太陽より大きく描かれチューリップ 金子敦
チューリップが太陽より大きく描かれている。わあ!すごい。「春」がこんな風にどかんと描かれていよいよ春の本番である。太陽はたっぷりと紫外線を放射し草木も動物達も活き活きと生育してゆく。一生を通して輝かしい青春の時間が与えられる季節。余談ではあるが小生が入学して初めてノートに描いたのがチューリップであった。それが国語ノートの1センチ位のマス目に描いた小さなチューリップであった。小人たる素養はこの頃から発露していた訳である。<つまらない記憶遺産やチューリップ:やの字>。:金子敦句集「音符(2017年5月5日版)所載。
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​二羽三羽堅き花芽にさへづれり 緒方博一

2020年02月27日 | 俳句
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二羽三羽堅き花芽にさへづれり 緒方博一​
五感に春を感じる気候となった。耳に届く春は囀りである。ウグイス、メジロ、シジュウカラと身近な鳥たちが耳を癒やしてくれる。目には今にも弾けそうな花芽が入ってくる。日々の散策で桜の蕾を観察するのだがまだまだ堅そうだ。しかし予報では気温の高い早春らしいのでこれも爆発するように膨らむのであろう。と、そんな花芽にジョウビタキの雄がやって来た。チチチと鳴いて直ぐに飛び去った。忙しない彼らの春である。<女学生囀るやうに飛んでゆき:やの字>。:俳誌「はるもにあ(2019年5月号)所載。
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たれかれの彼の世って何処シクラメン 池田澄子​

2020年02月27日 | 俳句
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たれかれの彼の世って何処シクラメン 池田澄子
たれかれの面影が浮かんでそうだ彼の世に旅立ったんだと気が付く。その彼の世って一体何処なのだろう。天国とも言われ草葉の陰とも聞いた。ふと足元を見やればシクラメン。篝火草とも言われている。きっと篝火で足元を照らし照らし初めての道を行ったに違いない。何時か行く我が世の不明が気に掛かる。<いざやいざ篝火焚いてあの世まで:やの字>。:俳誌「角川・俳句(2020年2月号)所載。
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翅かたく合わせ凍蝶葉のごとし 望月喜久代

2020年02月26日 | 俳句
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翅かたく合わせ凍蝶葉のごとし 望月喜久代​​
翅(はね)をかたく合わせ凍蝶(いてちょう)が葉っぱに止っている。その様は葉に同化して葉のごとしである。人間でも達磨さん始め修行僧は座して動かないと聞く。動物たる人間が動かないと言うは不自然と感じる。この蝶も本来は花から花へ遊び回りたかろうに今日のこの寒さである。しかしながら三寒四温を重ねて春は必ずやってくる。日々老いてなを春が待たれる。<動かざる終日言葉交さざり:やの字>。:朝日新聞「朝日俳壇(2020年2月23日)所載。
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連れ鳴きの声こぼしをる四十雀 上村占魚​

2020年02月25日 | 俳句
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連れ鳴きの声こぼしをる四十雀 上村占魚​
この時期庭に来る野鳥は番(つが)いが多い。枝先に四十雀が見え呼応して番いが鳴いている。こんな鳴き声に心癒やされるのも待ちかねた春到来の喜びである。他にも庭のお客さんあり、メジロ、ホオジロ、ジョウビタキ、ウグイス、珍客のコゲラ等々。やはり野に置いてこその野鳥。籠に飼う時代は過ぎた。庭に水場を造り餌台を据え果物を枝に刺して置けば自宅の庭も野鳥で姦しくなる。ただしカラス君のご来訪はご勘弁願いたい。<通学の少女ら囀る如く行き:やの字>。:創元社「俳句の鳥(2010年6月30日版)所載。
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老いの身の地獄耳かも亀鳴けり 村山慶

2020年02月24日 | 俳句
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老いの身の地獄耳かも亀鳴けり 村山慶

老いて耳が遠くなったと言う自覚あり。ただ長年の経験で「この場合この人はこう言っているのだ」と大抵は察してしまう。だから相手の声が多少低くても距離が遠くても関係ない。曰く地獄耳なるものである。そんな訳で誰も居ないのに何かが鳴いた気がした。辺りには誰も居らず、「ああこれが亀の鳴く声か」と一人得心するのであった。<尻重く口軽くなる晩年は:やの字>。:雄山閣「新版・俳句歳時記(20112年6月30日版)所載。
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駅前の花壇春色溢れをり 鈴木淳子​

2020年02月23日 | 俳句
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駅前の花壇春色溢れをり 鈴木淳子
駅前に市民が管理する花壇が在る。今日通れば春の花々が溢れんばかりに輝いている。通勤客も目を細めて眺めて行く。ああ春本番!という軽ろやかな感動が沸き起こる。花は気持ちを明るく和ませてくれる。我が町では地元高校の生徒が四季の花を飾ってくれる。姦しいぴちぴちんの若さが今日はどんな花を咲かせて呉れるのだろう。<晩年は薔薇を飾って猫撫でて:やの字>。:俳誌「春燈(2019年5月号)所載。
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​はるかぜのゆれるささやきイヤリング かよ

2020年02月22日 | 俳句
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はるかぜのゆれるささやきイヤリング かよ​
耳を飾ったイヤリングを心地良い風が撫で行く。春の風の囁きをイヤリングが受け止めて今日の外出の心をときめかせる。閉じ込められた冬の感覚からぱっと外へ開けた春の開放感が広がってゆく。漢字をやめたひらがなとカタカナの表記が蝶が舞い蕾が膨らむ気配を象徴している。さてこのイヤリングどなたに逢ひに向かうのか浮き浮きしておりますなあ。<先生の乙女心の浮き浮きと:やの字>。:ネット掲示板「つぶやく堂・俳句喫茶店(2020年2月18日)所載。
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​飛び石のゆらぐ一歩や蕗の薹 齋藤眞一郎​

2020年02月21日 | 俳句
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飛び石のゆらぐ一歩や蕗の薹 齋藤眞一郎
飛び石を伝って歩いていると石が揺らいで危うく一歩を踏みとどまった。その止った大地に蕗の薹を発見。ラッキー!と思わず心が叫ぶ。別にそれをどうこうする訳ではないが春の前触れに出遭ったと思う喜びである。これから野蒜蒲公英菫草、野鳥の眼白鶺鴒鶫などが周囲を飾る始める。一病息災恙無く暮らす身にとても嬉しい事なのだ。豪華客船の旅行も良いが<時もまた旅人なり>と一期の季節を楽しもう。:俳誌「百鳥(2019年5月号)所載。
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​普段着で普段の心桃の花 細見綾子​

2020年02月20日 | 俳句
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普段着で普段の心桃の花 細見綾子
大抵の集会は常に普段着でと決めている。何時の頃からかそう言う習慣がついている。今日は桃が咲いたとの知らせあり桃見に同行する事になった。気心知れた仲間でもあり普段通り普段着で出かける。花の盛りは正に桃源郷の様を呈している。自分が自分らしく感動している。いよいよ春爛漫の花の季節へ突入する。今日はどこでどんな花が咲くのだろう。余談ではあるが冠婚葬祭常にジーンズで通せたらいいなあと思うこの頃である。<貧乏は暇もなければ服もなし:やの字>:角川「合本・俳句歳時記(2019年3月28日版)所載。
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チューリップむく犬ふかふかに洗ふ 高橋とも子

2020年02月19日 | 俳句
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​​チューリップむく犬ふかふかに洗ふ 高橋とも子
春は花の季節である。庭のチューリップが開いて一気に心が明るくなった。気分の良いところで我がむく犬を洗ってやる事にした。タライのぬるま湯でシャンプー掛けである。ふっかふかの毛触りが手に馴染んで快感である。愛犬ムク(仮称)も安心しきって身を任せている。終いにさっとホースの水を掛けてシャンプーを洗い流す。おっとムクよここでブルブルッ!は無いだろう。<分身の如き愛犬チューリップ やの字>:句集「鱗」:高橋とも子(2001年7月10日版)所載。
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春寒し禿のかぶるニット帽 おにっこ​

2020年02月18日 | 俳句
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春寒し禿のかぶるニット帽 おにっこ
寒い日暖かい日がくりかえされている。今日はまた一段と寒い一日であった。外出には愛用のニット帽のお世話になる。若くして禿頭となった小生なので帽子は腐るほど持っている。中でも愚妻の手編みのニット帽を愛用している。気温の寒さも心の温もりには勝てまい。<君たちも禿げればわかるこの寒さ やの字>:俳誌:「はるもにあ」(2019年5月号)所載。
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​綿虫を掬ひ生命線長し 横井遙

2020年02月17日 | 俳句
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綿虫を掬ひ生命線長し 横井遙
眼前の綿虫を払おうとする。手の平に掬った綿虫の存在感の希薄なことよ。と偶然我が手の平の生命線が目に入る。おお、手首の方へ長々と伸びている。人生百歳時代これ嘘でもなさそうだ。しかしながらご同輩、日頃の不摂生をお忘れじゃあございませんか?。:俳誌:「角川・俳句」(2020年2月月号)所載。
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​日脚伸ぶ歩数も伸びてゐたりけり 森加名惠​

2020年02月16日 | 俳句
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日脚伸ぶ歩数も伸びてゐたりけり 森加名惠
ここのところ日脚が伸びてきた。春は名のみの寒さではあるが日脚は確かに伸びている。そこで日課の散歩にも精が出る。カレンダーに日々の歩数を記録しているが確かに先週の歩数を超えている。五千歩が六千歩となっている。目標は桜咲く頃に万歩達成である。今年はオリンピックの年である。自己新記録が狙えるのも健康であるが故のこと。今日も感謝の日が暮れる。:朝日新聞:「朝日俳壇」(2020年2月9日版)所載。
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鶯に終日遠し畑の人 蕪与謝村​

2020年02月14日 | 俳句
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鶯に終日遠し畑の人 蕪与謝村​
春耕で農家は忙しい。広い畑地を囲む藪では鶯が鳴いている。傍観する旅人は一幅の絵画を感じている。まだまだ寒い風ではあるが労働する者には汗ばむ陽気である。血のように赤い夕陽が辺りを照らし一日の帳が降りる。旅人も今夜の宿へと急ぎ向かうのであった。法・法華経~♪とは野鳥の声の聞きなしである。晩鐘に感謝あるのみ。:創元社:「俳句の鳥記」(2010年6月10日版)所載。
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