やんまの気まぐれ・一句拝借!

俳句喫茶店<つぶやく堂>へご来店ください。

小鳥来るピアノのリズム早まれり 高重玲子

2018年08月31日 | 俳句
740
高重玲子
小鳥来るピアノのリズム早まれり
大きなガラス窓の横にピアノがおいてありカーテンが開け放されている。ちらりと走る影は一瞬にして小鳥だと判別できる。ピアノのリズムが早まって心の喜びが音になって弾じける。鵙、懸巣、鶺鴒、尉鶲、鶸、鶫、連雀、啄木鳥、、、。秋に渡って来る小鳥は肉眼でも色彩が鮮やかに見え色鳥と言う秋の季語となる。これらを双眼鏡で捉えれば感動は絶頂となる。:俳誌『百鳥』(2017年11月号)所載。
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鳴きはじめたる法師蝉も熱の中 野見山朱鳥

2018年08月30日 | 俳句
739
野見山朱鳥
鳴きはじめたる法師蝉も熱の中
つくづく惜しむ、つくづく惜しむと法師蝉が鳴きはじめた。しかしこの残暑。身を焙られる様な熱気である。年々気候が荒くなって夏の暑さが強烈に感じる。確か立秋は8月7日だったがまだまだ夏の気候である。9月1日には210日を迎えるが台風もあと幾つかやって来そうだ。荒い気候寄る年波。さはさりながら実りの秋の先には黄金の季節、何か良い事があると期待しよう。:角川「新版・俳句歳時記」(1990年12月15日版)所載。
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ひらひらと釣られて淋し今年鯊 高浜虚子

2018年08月29日 | 俳句
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高浜虚子
ひらひらと釣られて淋し今年鯊
昔は鯊をよく釣った。思い出も多々ある。東京湾を中心に房総の木更津や羽田沖へは乗り合いの船を使ったりした。陸からは行徳や千葉港、東京湾のお台場などでもやった。行徳ではボートを借りて釣った。一度江戸前の鯊釣りの名門会の面々と同船した事がある。私が15匹ほどのところ会長が700匹人間国宝の竿師が500匹と桁外れの釣果であった。そんな中でひらひらと釣られて来る鯊やその場の雰囲気にはどこか哀れを感じ淋しくなってくる。往時茫々。:山本健吉「鑑賞俳句歳時記」(1997年4月10日)所載。
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夏深し鴉おのれの声に倦み あべあつこ

2018年08月28日 | 俳句
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あべあつこ
夏深し鴉おのれの声に倦み
夏も深まったころ鴉が気怠そうに鳴いている。来る日も来る日も早朝から出かけ夕方には自分の巣へ戻って来る。ワンパターンの日常生活に飽きが来たのは何も鴉だけではない。長い夏をやりきれない気持ちで過ごしている人間様も同様である。あ~あ嫌になっちゃうなと何度も呟き溜息を吐く。そんなふと漏らす自分の声に気が付き自嘲したりする。鴉だっていつもカアカアばかり鳴いていれば飽きもするだろう。そんな時非日常の世界に出かけたくなる。私なら海へ行きたくなる。:俳誌「ににん」(2018年夏号)所載。
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台風の目の中にゐる長湯かな 徳田惠里子

2018年08月27日 | 俳句
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徳田惠里子
台風の目の中にゐる長湯かな
時にこうゆう事がままある。テレビの台風状況で進路も刻々と承知していたが入浴はこの時間と決めているので今日もそうした。風呂に入れば浮世の苦労も水に流せようと言うもの。しばし忘我の心地である。窓を打つ風の音がふっと止み静寂が訪れる。これって台風の目に入ったからであろうか。また目をつむる。少し長湯をしたようだ。今年は9月1日が二百十日だと言う。:俳誌「角川・俳句」(2018年9月号)所載。
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今日は雑談です。

2018年08月26日 | 俳句
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やんま
金庫には詩集がひとつ夜鷹鳴く
ここで言う詩集は清水哲男著「夕陽に赤い帆」である。私がインターネットに興味を持ち出したころ新聞の読書欄に氏がインターネット上で「俳句歳時記」の主宰をされていると紹介されていた。さっそく飛び付いた私は感動のあまり毎日メールで感想文を氏に送った。これが腐れ縁で最後は増殖する俳句歳時記の執筆まで依頼されることとなった。お稲荷さんの路地にある真砂女の「卯浪」でも何回か呑んだ。この句は私が最初に新聞に載った句で清水哲男さんがコラムの随筆で取り上げて下さったものである。でも自分が新聞に出るなんて夢の様な話でただただ感涙するばかりであった。現ネット喫茶店「つぶやく堂」のデザインを氏と共同で設計した事が懐かしい。往時茫々。:日本経済新聞コラム「旬の一句」欄(2002年6月29日)所載。
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日陰から径は日向へゐのこづち 大島英昭

2018年08月25日 | 俳句
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大島英昭
日陰から径は日向へゐのこづち

歩いた道は細い小径であった。都市化が進んだ都市近郊ではあるが里山の雰囲気も少し残している。日陰あり日向あり今日もよく歩いた。ちょっぴり汗ばんだ上着を脱げば裾にゐのこづちが張り付いている。何か勲章でも貰ったかの様に得をしたような気分になる。こんな小さな事がたまらなく嬉しい日がある。健康で歩ける今が幸せである。:大島英昭・句集「ゐのこづち」(2008年12月15日)所載。
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干草の香りまとうてかくれんぼ 丹羽香久

2018年08月24日 | 俳句
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丹羽香久
干草の香りまとうてかくれんぼ
干草の束は隠れんぼに丁度良い。広い田畑のあちらこちらに置いてある。だるまさんがころんだと十数える間に仲間は隠れてしまう。兄は幼い妹が隠れた場所を知っているがわざと他の悪童たちを先に見つけ出す。みんな夫々に干草の香りを纏っている。子供が子供らしく外で遊んだ時代であった。そう言えば祖父母も父母も妹も僕を鬼にしたまま消えてしまった。妹が隠れた水神社はまだあそこに有るだろうか。:俳誌『春燈』(2017年10月号)所載。
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白帆には別な風吹き処暑の海 勝又木風雨

2018年08月23日 | 俳句
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勝又木風雨
白帆には別な風吹き処暑の海
沖ゆく白帆が自在に波を滑って行く。眺めている身にはまだまだ汗ばむ暑さだ。暦では今日は「処暑」。これで暑さが収まった訳ではない。暑さ寒さも彼岸まで、来月の秋分を境にぐっと変わってくるだろう。自分の加齢と言う事もあろうが年々気候が荒くなっている気がする。こんな愚痴をさておいて沖の白帆の涼しげな様は何だろう。この岸とあの海には全く別の風が吹いているようだ。:雄山閣「新版・俳句歳時記」(2012年6月30日版)所載。
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あの頃へ行こう蜻蛉が水叩く 坪内捻典

2018年08月22日 | 俳句
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坪内捻典
あの頃へ行こう蜻蛉が水叩く
都市近郊では蜻蛉がなかなか見られなくなった。子供の頃は安物の捕虫網を担いで走り回ったものだ。人口の減少も伴って山村は過疎化し人々は都市へ集中するようになった。都市の利便性にどっぷりと浸かて何不自由なく暮らしてみると蜻蛉なんぞを見かけることはめったに無い。それでも偶に見かけると嬉しくなる。一緒に駆け回ったあの悪童どもは今どうしているのだろう。あの頃へ帰りたい、帰れない。:「水のかたまり」(2009年)所載。
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青田道詐欺に注意の報流れ 金原洋子

2018年08月21日 | 俳句
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金原洋子
青田道詐欺に注意の報流れ
青田を吹く風が心地よい。と頭上から「詐欺に注意いたしましょう。」と拡声器の声。農協の広報が広々とした青田に流れてゆく。近頃の詐欺は巧妙になっているそうだから私なら直ぐに騙されてしまうだろう。ただ幸いにも取られ様な財産は一切無い(キッパリ!)。ご参考までに、わが地域柏市では防災行政無線で夕方に流れる「夕焼け小焼け」の音楽のことを「パンザマスト」と呼んでいる。これは防災行政無線として設置された柱のことなのですが、外で遊んでいた子供たちはこれを合図に帰宅する事になっている。カラスが鳴いただけでは帰らない。:俳誌『百鳥』(2017年10月号)所載。
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此秋は何で年よる雲に鳥 芭蕉

2018年08月20日 | 俳句
729
松尾芭蕉
此秋は何で年よる雲に鳥
生まれてこの方毎年年を重ねて来た訳だが何故か今年は「年をとった」実感がある。歩き続けて健康には自信があったがここのところ膝がぎくしゃくしてきた。空を渡る鳥なんぞを詠嘆している自分を見ていると一層そう感じる。昔は如何に物を思はざりけりだったか。秋憂いとはこの事か。いやいやまだ人生は永そうだ。気を取り直そう。今日も元気で!:山本健吉「鑑賞俳句歳時記」(1997年4月10日)所載。
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富士山の湧水静か法師蝉 白馬

2018年08月19日 | 俳句
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白馬
富士山の湧水静か法師蝉

秋の空気が澄んで富士霊峰がくっきりと見えている。周囲東西南北には数多の滝や湧水が散在している。里山の秋は早く法師蝉の声が澄み渡って聞こえる。法師蝉の泣き声はオーシンツクツクオーシンツクツクでつくづく惜しいと聞きなせる。たった一回の命だがいつか果てると知りつつも確かに惜しみても余りある。湧水が静かに湧き続ける。:つぶやく堂ネット喫茶店(2018年8月10日)所載。
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踊り子になりて出かける敬老会 及川希子

2018年08月18日 | 俳句
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及川希子
踊り子になりて出かける敬老会
今年も敬老会のイベントが色々と企画された。自分には踊り子の役が割り振られた。近隣には公民館付きの体育館がある。主催側は天候を考えてこうした屋内での実施を企画する。立派に会員資格のある私は写真に俳句を添えて出展する。注目はされないが自己満足の為にやる。自分の居場所は自分で作るしかない。老人よ孤独に閉じ籠るな。寿会もあるグランドゴルフだってある。まずは外に出でよ扉を叩け。:俳誌「ににん」(2018年冬号)所載。
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初秋の歩こう会に利根運河 水見壽男

2018年08月17日 | 俳句
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水見壽男
初秋の歩こう会に利根運河
秋晴れの気持ちが良い日となった。心まで晴れ晴れと予定していた歩こう会に出かける。利根運河は千葉県の北部にあり利根川と江戸川を結ぶ運河である。この両岸は素晴らしい散歩コースとなっている。農村部分もあるが野趣溢れた自然が豊かに残っている。私もここでミミズクとカラスの死闘を見たり青大将の長々とした蛇の衣を拾ったりした。昔は釣りもした事があるが今は大利根側は荒れ過ぎてしまった。江戸川川河口には赤いちゃんちゃんこの地蔵が並ぶ。健康で歩けると言う幸せを噛みしめながらさあ歩くぞ!。:俳誌「角川・俳句」(2018年8月号)所載。
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