今日は陽春の光の下で紙上ヨット体験を一緒にしませんか?
初心者向きに一枚の主帆だけでブラリと走ってみます。まずエンジンをかけて、港の外の広いところに出ます。下の左端の写真の中央に丸いウインチの車軸が見えますね。その右下に接して太い綱があります。これを引っ張ると、主帆が少しずつあがります。2枚目の写真は帆が半分上がった状態です。かなり疲れるので、ここで一休みして、ゆっくり上げるのがコツです。3枚目の写真は風を左前方から受けて走り出したときの帆の上半分です。(この走り方をクローズホールドと言います)。4枚目の写真はこのクロ-ズホールドで走っているときの主帆の下半分の様子です。
ここからクドイ話になりますが、是非丁寧にお読み下さい。すると本当のヨット紙上体験になります。
2枚目の写真の、マストの天辺を注意深くご覧下さい。帆走で一番重要な指針になる風見がついています。上に風の方向を矢印で示す、クルクル回る風見が着いています。風見の後側は少し細い三角形になっています。
その下に約50度の角度で開いた2本の棒があります。そして2本の棒の先には小さな四角形の金属板が着いています。
この2本の棒はマストに固定してあり、動きません。
3枚目の写真のように、クローズホールドで走るときは風見の後ろの細い3角形が、下の小さな四角形の板のすぐ外側になるように、舵で船の方向を調整しながら帆走します。風上に対して登りすぎれば帆に裏風が入って船が止まります。風下側へ向け過ぎると風上へ登らなくなります。
風見の使い方を説明すると、全く初めてのお客さんでもクローズホールドで走ることが出来るものです。上手下手はありますが例外なく、すぐに舵の調整ができます。主帆が上がったら、お客さんへ風見を説明してすぐに舵を任せます。これがお客さんを喜ばせるコツです。
兎に角、何時もマスト天辺の風見を見上げながら船の方向を風上45度に調整して走ると次第にスピードが出てきて、5枚目の写真が示すように、右舷に波が砕けザワザワという心地良い音がたちます。
速度計を見ると4ノット(時速7.2km)くらい出ています。暖かい春風が頬をなでて行きます。
船の進む方向は東南で、南の方向の湖面の小さな風波が一面にキラキラ輝いています。
時速こそ7.2kmと遅いですが、船が傾き、向かい風なので速いスピードで快走している気分になります。風が強くなる。船の傾きが大きくなる。スピードが上がる。それで怖くなる。キャビンの中で机や椅子がガタンガタンと倒れる音がする。怖さが一層大きくなる。
でも怖さを辛抱して走る。また風が少し弱くなる。まあ、そんな繰り返しで70分、港から6kmくらい沖に出た。
この5枚の写真は、向かい風の帆走と波ゆれで疲れた体を癒すためのものです。沖に碇を下ろして、ボートの後甲板に若者が3人車座になりカンビールで昼食を食べていました。挨拶すると楽しそうに手を振っていました。3、4、5枚の写真は、それぞれ大きな排気塔(右端)、白い大型ポンブ棟建物、8階建てのビルです。ここで何時も迷います。引き返そうか?もっと沖へ行くか迷います。今日は早めに引き返えすことにしましょう。
左端の写真は船頭を港の方向へ返したときの帆の上半分で、風見の矢先が2枚の四角板の少し外側になっています。内側へいれると裏風がはいり帆が凄い勢いで回転しますので危険この上有りません。表紙の大きな写真もランニング中の帆の上半分です。
ランニングに入ると、急に追い風が強く吹き出して、船体が怖いくらいに揺れ、走り出す。
速度計が6ノット(10.8km)近くになっている。風の音がビュービューいい出し、後から来る波の波頭がザーザーと大きな音をたてて崩れる。波の荒い運河を水流に乗って流れ下っているような感じになる。
追い風で走るランニングのときは神経を使い裏風を入れないようにします。ランニングの時はカンの悪い初めてのお客さんへは舵を完全に任せないで、手を添えています。
3枚目の写真は、港近くで出てきたモーターボートの写真です。
港内に船が居ない時は帆を降ろさないで、そのまま岸壁の前を帆走します。帆船の風景が休んでいる人々の癒しになるようです。人々の表情でそんな気するだけですが。親子連れや、若いアベックが手を振ります。こちらも振ります。
港内で主帆をゆっくり降ろし、畳んで、青いカバーを掛けて、春の陽光の下でのセイリングを終わりにします。お疲れ様でした。出港が午前12時で帰港が午後2時30分の2時間30分のセイリングです。
最後の写真は岸にゆったりと係留されているヨットの様子です。沖で右へ左と船体を傾け、大きな縦揺もしたことを忘れて静かに眠っているようです。(続く)