祥泉暦

日常の出来事の記録

「ひとつむぎの手」 知念実希人著

2021-08-27 16:07:00 | 書籍
手持ち無沙汰で何気にTwitterをみる習慣、
コロナウイルスの情報ばかりで気が滅入る中
小説家で医師である知念実希人を知った。
医師としてのTwitterでのつぶやきからの著書への興味。
決め手は「本屋大賞ノミネート作」

久しぶりの文庫本となった。
積ん読タイプではないので、
次に手にするまでに時間が経ってしまう。反省。
しかし、読みたい本とやらねばならない事との葛藤が無い方が
ストレスがない。
どっちもどっち、やっぱり少しは積んでおこう。

さて、本題。
心臓外科の医局での医師達と研修医達のヒューマンドラマです。
心臓外科は、もう50年前にリアルにお世話になったのですが、
あまりにも遠い昔となってしまったので、
他人事になっている自分がいます。
ある少女の心疾患患者と両親が出てくる場面は、
過去を思い出させるシーンでもらい泣きしてしまった。
もう治る見込みがとても薄いと分かった時に
積極的な治療よりも苦しむ事なく余生を過ごす選択をしようとする両親に対して、
熱い想いを抱いた研修医が積極的な方法にどうして賭けないのかと
詰め寄る場面。ベテラン主治医の主人公は、研修医をたしなめる。
両親は「苦しんでいる娘の姿を見たくないという親のエゴではないのか」と
葛藤するが、容態が急変し残念なことになる。

私の場合は、小学1年生の時に先天性心疾患とわかり、
「心臓の手術をしなければ20歳までしか生きられない」と宣告された。
多分今と違い余りにも情報がなさすぎるし、実際医療技術や医学の進歩も全くわからずに
「心臓の手術」は、怖いから絶対に嫌で、「20歳までしか生きられない」事は
7歳の子供にはまだまだ先の事だからわからなかったのでしょう。
当時は私があまりにも手術を拒否していて、それを無理やり手術をさせる事が
憚られ、相当両親を苦しめたのでした。両親の心臓手術に対しての恐怖は、
私以上だったに違いありません。「ここで無理矢理手術をして万が一命を落とすよりは、
そっとしてやりたい」と思う反面
「親としてのエゴではないのか」と。。。
実際に本人が嫌がっているので、少し時間が欲しいと担当医師に言った時は、
相当怒られたらしい。医師と患者の関係は、当時はそんなものでしたから。
それからのことは、本題ではないので省略です。笑

主人公の医師は、ベテランでありながらちゃんと人間性も備わっていて、
結局は医局のエリートコースを外れてしまうが、
家族と一緒に沖縄に引っ越し、地方の医療に携わることになります。

「医師は聖職なり」きっと医師になる人はみんなそういう志を持っていることでしょう。
現にコロナ対応している医療従事者の懸命な様子を
私達が目にする機会が多くあります。
政府関係のわからんちんと患者を助けたいという狭間で、
頑張っていただいている事に対し頭が下がります。

著者は最初にも言った通り、現役の医師です。
激務の中でどうやって小説を書くのでしょう。
もう少し他の作品を読みたいと思います。


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