祥泉暦

日常の出来事の記録

義母のぬくもり (故トシエ陶器個展)

2021-04-22 08:07:52 | 我が家の器たち
我が家でよく使う器の中に
義母の手作りのものが結構ある。

うちの娘が初孫で、
初孫誕生をきっかけに陶芸をはじめたらしい。
義母はとても手先が器用で、
特に洋裁和裁どちらもできたので、
内職としていた。
娘の洋服は勿論、リカちゃんの洋服を
その場で作ってくれて、娘はとても嬉しそうだった。
それから七五三の着物、小学校の入学式の洋服、
お風呂上がりに着るサンリオ柄のナイトガウンなどなど。
嫁の私にもスーツやコートを作ってくれました。

陶芸をはじめた事を知り、
私はホールケーキがちょうど入る大皿と
取り皿セットをお願いしました。



大きさといい、雰囲気といいすごく好きです。
シンプルな色使いなのでどんなケーキにも合います!
大皿は、お刺身の盛り合わせや、ローストビーフなど
にもよく使っています。

それから陶芸展に出品したというこの花器は、
うちの玄関に合うと思って焼いたと言って、
以前の家の玄関にずうっと居ました。




久しぶりにお庭の姫ウツギと
お花が終わってしまった山吹を生けてみました。






義母は残念ながら娘が10歳の時に
病のために急逝しました。 
私たちにとって衝撃的な出来事で、
それから暫くいろんな意味で暗黙の時期でした。
が、今思うと本当の意味で私達が自立した家庭を築く
きっかけだったと思います。

今時々食卓に登場する器たちを
集めてみました。




梅や椿の絵柄も可愛くて、
雪国の人の春を待ちわびる風情が、
梅や椿なのですね。




シンプルな平皿は、ここに網を乗せて、
揚げ物にすごく便利です。







これはちょっと変わった色で、
濃いグレーです。
可愛い小花が内側と外側についていて、
アクセントになっています。


暗い色ですが、筑前煮の色あざやかなものにも
よくあいます。
義母作としては、とても珍しい色使いです。

それからこれ!!
大きさと開口部が広いので、
中のものがよく見えて使い勝手がとても良い!
最近は夫と2人なので、出番が少なくなりましたが、
生野菜サラダなどには重宝します。
サラダボールより開口部が広いので好きです!
中がうすーーいグレーなので、食材が映えます。

外側の柄がまた可愛い。
色と柄がよく合ってて、大人可愛い感じです。





これは、ケーキの取り皿よりやや小ぶりで
和菓子によくあいます。




ケーキ皿としては勿論
様々な取り皿に本当に便利です。


 


次の器は少し小ぶりながら、
汁物の取り皿に最適です。
頻繁に食卓に登場します。
中模様のマーブル柄は当然全て違います。




製作者からしてみたら「それはちょっと」と思う器もあると思いますが、
私が勝手に使いやしぃものを選んでいます。
「私の宝物」です。

ある男 平野啓一郎著

2021-04-12 21:17:00 | 書籍

これまで「過去は変えられないけれど、未来は自分の努力でどうにでもなる」と言われて来た。ものごとをポジティブにとらえるべき指針として。

しかし変えられない過去に影響されて、なかなか思い通りに行かないのなら、過去にとらわれない環境の中で生きようとするのは自然の行為ではないだろうか。


作者の作品を読んだのは今回で3作目で「私とは何か」は当然ながら最初に読んだ「マチネの終わりに」にも、「過去を変えたら未来が変わる」観が随所にある。


実際私も、幼い頃からの性格と向き合う成長過程において、自分を変えたいと痛切に思った。


先天性の心疾患のために当時としては大手術をしたので、その後何十年も「あなたがあの大手術をした人なのね?!」と言われる事がよくあって、私の事を誰も知らないところで生きたいと思った。

幸い私は健康となり、普通に社会人となり2人の母親にもなれたので、この本に出会うまではすっかり忘れていた過去の思い出である。


この本の主人公となる女性は、本当に気の毒な過去を背負いながらも出会った最愛の人が戸籍を変えていて、その人を亡くしてからそれが発覚する。「愛したはずの夫はまったくの別人だった」幸せになるべき主人公のなんともやるせない事実。


小説は、その女性の弁護士がもう1人の主人公であるが、随所で内なる自分との葛藤の場面では、前回読んだ「私とは何か」と重なる。


最後の数ページは、涙で文字が見えなくて困りました。

心美しい息子との会話に号泣しました。

しばらくこの作者の作品に浸ります。