祥泉暦

日常の出来事の記録

私とは何か 「個人」から「分人」へ 平野啓一郎著

2021-03-16 10:47:00 | 書籍
先日読んだ「マチネの終わりに」が面白くて、
平野啓一郎の他の作品を読んでみようと思っていた。

そんな時に、以前から応援してる若手のジャズピアニスト桑原あいの
Twitterで、
今度出る初ソロアルバムに作家の平野啓一郎が
数曲選定してくれた 事を知りました。
最近知った作家と大好きなジャズピアニストが繋がった嬉しさ。
確かに「マチネの終わりに」では、クラシックだけでなく
他のジャンルの音楽のことにも精通しているのが感じられたので、
さすが!とは思いましたが、桑原あいに繋がるとは!

そんな訳で、そのアルバムが発売されるのを楽しみに
平野啓一郎のほかの小説を読んでみようとみてみた。

「私とは何か」
以前は惹かれるタイトルだったが、多分この年齢のせいだと思うが、
最近はあまり考えなくなった。笑
しかし先日読んだ「マチネの終わりに」の登場人物の内面描写の所々に
平野哲学なるものがあり、興味があった。
ほかの小説と共にこの本もポチった。

先にこちらの本が届いてしまったので読み始めたが、
ほかのいくつかの小説を読んでからの方が
さらに理解できるのではと思う。
「小説と格闘する中で生まれたまったく新しい人間観!」
なるほど小説家とは、登場人物それぞれの人間観の設定が必要で
それを突き詰めると作家独自の人間観が生まれるのでしょう。
この手のタイトル本は、哲学的思想観的要素が主流なので、
難解過ぎて最後まで読めないことしばしば。
それがこの本は、作家本人の悩みを語りかけながら
読者と一緒に考えてみようという姿勢から
とてもわかりやすい。

最初に作者は、
人間の基本単位を「個人」から「分人」へと考え直す必要があると提案していて、
この考え方こそが、「私」個人を考える時によく理解できるし、
他人に対しても寛容になれる、ひいては
本の帯にも記載している通り
「生きるのが楽になる」
「人間関係に悩むすべての人へ」という事になる。

私は、たぶん他の人より人間関係に悩まない方だと思う。
自分では意識していなかったのですが、
よく周りの人から悩みとして相談されることが多い。
その時に思うことは、
たいていの人は考え方を少し変えてみる冷静さがない、
人からどう思われるかを気にしすぎ
話しことば次第で誤解は解ける
などなど。

そして人間関係は生まれてから死ぬまで避けれないこととして
腹をくくる事と思う。
そんな時この「分人」という考え方はとても救われると思う。

事実、私もすでにこういう考え方をしていたと気づいた!!
「分人」という言葉は思いつかなかったけれど、
「もう1人の自分」とか「向こうからみている自分」と思い、
常に数人の自分を意識している。というか意識させられる。
そしてこの数人の自分が1番手強いw
それは1番自分に厳しいから。

そして常に相手(他人)にも、数人の相手がいる訳だし、
相手だって「厳しいもう1人の自分」を抱えているはず。
そうして相手だって、自分と同じく悩める相手なのではないかと思うと
人に優しくなれる。

そして行きついた自分流の考え方は、
「自分に厳しくあれば、他人(ひとに)優しくなれる」
です。
余談ですが、ある仕事の採用面接で「ご自分はどういう人ですか」という
質問に前述の言葉を言ったら伝わらなかった経験があるので、
言わなくなりましたww

本書は、とにかく作者の他の小説を読んでから再読します。

ひとつだけ特筆というか備忘録として書いておきます。
作者が大好きな森鷗外のこと。
「仕事」を「為事(しごと)と書く。
「仕える事」ではなく「為(す)る事」と書く。
職業というのは、何であれ、その色々な「為る事」の
一つに過ぎない。
とは言え人生で何十年も関わる事であるから、自分の本性と
マッチしなければ耐えられないはずだ。


さて平野小説を読みましょう!




「マチネの終わりに」映画を観た

2021-03-07 13:58:00 | 書籍
先日読んだ「マチネの終わりに」の映画を観た。

映画化されたものは、先に小説を読んでから映画を観るのが好き。
当然映画は限られた時間なので、小説より縮小版になるのは仕方ない。
どこをどうカットするのかも興味津々だし、
文字のみを媒体として得られるものと
視覚聴覚的から得られるものとの違いとかを
感じる事が面白いと思う。

今回もやっぱりそうだった。
映像と音楽が加わることによって
本では得られなかった理解や感動がある。
本での描写をカットした場面では、
残念な思いもする。

それから登場人物を演じる俳優達の醸し出す演技が
本より何倍も華やかで楽しいと思わせる。

それにクラシックギターの調べは、この映画の背景の軸なので、
この部分こそ映画の楽しみとなった。


本ばかり読んでいられない状況に
少しの隙間に読みかけの本があると
後ろ髪を引かれる思いで
いそいそページをめくる。。。

読みたい本を積見上げて置かないと
〇〇ロス状態です。

「マチネの終わりに」平野啓一郎著

2021-03-03 15:18:00 | 書籍
以前からの娘のオススメで、やっと読みました!
面白かったというには平凡すぎですが、
映画になっているので「是非映画も」には納得しました。
ギタリストとジャーナリストの大人の恋物語なのですが、
背景に流れるギターの調べは、きっと物語を一層引き立てるはずです。


以前読んだ恩田陸著の「蜂蜜と遠雷」を読んだ時も
全く同じ感想だったけれど、
こちらは使われた音楽をCDにして同時発売だったので
購入した。そういえば最近聴いていないなぁ。。。
2019年に映画になっているけれど、そういえば見ていない。


マチネとは、フランス語で朝、午前中のことで、
舞台やオーケストラ公演の昼公演のことです。
主人公はギターリストなので、主にクラシックが
背景にあります。
クラシックギター、普段私はあまり聴くことがないジャンルなので
作中の曲を選りすぐって聴いてみても良いのだが
取り敢えず映画が良さそう。

芸術や音楽を追求する事の壮絶な人生と
世界的な社会情勢や天変地異による
男女の想いや人間の喜怒哀楽の絡みなど
とても盛りだくさんです。
舞台も日本、パリ、ニューヨーク、
それに背景がクラシックギターの調べ。

やっぱり オススメ です。