「母を作って欲しい」急逝した最愛の母をAIで蘇らせる事から始まるこの小説は、
私に取っては異次元の物語である。
確かに最愛の人を失った悲しみから、もう一度だけ会いたいと思う事はあります。
それでもバーチャルフィギュアを望む事はありません。
更に主人公の職業である「リアルアバター」というのも、この小説で初めて知った。
高齢者や障害者だけでなく、時短や労力の削減などの意味から、使い方によってはとても便利である。が、犯罪に利用されてしまう例も小説内にありましたが、確かに危険性が孕んでいそう。
しかしながら、人への想いや人間愛の根本的な部分は不変であり永遠である。それらもコントロールされる様では絶望的であり、ドラマは生まれないでしょう。
そしてタイトルの「本心」、
最愛の母が「自由死」を望んでいた事を知ったことで、
主人公はショックを受け、その「本心」を探る為に様々な方面から
亡き母を悼みます。
「自由死」に巡っては、私は肯定する部分は大いにあります。
しかし世を回避したいという事ではなくて、自分の幕引きを自分で行いたいという思いからです。先日古稀を迎え、10年間はこのまま維持したいという目標を立てました。
それにはある程度の努力が必要です。
その後は、充実感と達成感が得られ、良い意味で先を見据える事ができたら
自分で終わりを決めたいと思います。
それには家族に理解を得る必要があります。それこそその努力が必須です。
「社会環境をずうっと先に進めての小説でありながら、人間ドラマは今とそんなに変わらない」
というところが、この長編小説をかなり時間を割いても読み切れた所以なのでしょうか。
日常生活に読書の時間を作る事が難しい時期にこの本を読み始め、外出中に持ち歩きながらも読めた事が意外であり、著者の素晴らしい技量に感謝したい。
11月に映画公開が決まったと聞いているので楽しみです!!