阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

今後のレバノン情勢-国連の努力と限界

2006年08月14日 23時03分51秒 | 政治
 レバノン政府は8月12日の閣議で、ヒズボラとイスラエルに停戦を求めた国連安保理の決議を全会一致で受諾することを決定しました。この結果、14日(日本時間午後2時)には停戦が実行されることになります。

 しかし、これが恒久的な平和に繋がっていくかどうかは、別問題だと思います。Christianaさんも、きっと、一時的撤退に値する、イスラエルにとって有利な何らかの取り引きが行われたと考えているようです。この地域の将来を楽観できるものでは決してありません。

 彼女が送ってきたこの絵は、イスラエルが、停戦の直前まで、そして南ベイルートにあるビルを最後のひとつまで破壊しようとしていることを表しているそうです。彼女によるとイスラエルはヒズボラの指導者ナスララ師を殺害するため、GHANDOURというレバノンで一番人気のあるお菓子の工場も破壊したそうです。ナスララ師がビスケットの中にでも隠れていると思ったのかしら?と憤慨していました。

 さて、私が国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の一員として活動していた1992~1993年、当初、カンボジアの人々は国連を「平和の使者」のように迎えました。しかし、実際には紛争を止める実質的な力はないこと、また、国連の存在によって多くのドルが入り込み、人々の生活や価値観さえもが大きな、多くはマイナスの影響を受け、失望感が広がっていくのを目の当たりにしました。

 国連が万能であるはずはないけれど、国連しか果たせない役割を、少しでも、マイナスの影響を小さくして果たしていくことはできるはず。そんな意識を持って1994年に参加した国連モザンビーク活動(ONUMOZ)では、ポル・ポト派の離脱によって、戦争状態の中でのPKOの実施になったカンボジアの教訓がかなり生かされていました。紛争各派が平和プロセスから離脱しないことが和平に向けた協議の段階から最優先事項になっていました。また、「何が何でもまずは選挙を実施する」しかなかったUNTACが多くの犠牲者を生んだ反省から、安全と信頼を確保するために、選挙を実施する前に徹底した武装解除を行っています。 

 しかし、国連自身が努力しても、軍事面も資金調達も、また、その政治的影響力も、常任理事国、とりわけ米国の意向に反しては何もできません。また、長年の内戦に疲れ果て、冷戦構造の崩壊によって内戦継続の意志も能力も枯渇しつつあった国と、本質的な原因が何も解決されないまま、憎悪の火が燃え盛る中で「停戦」になった今回のケースは明らかに異なると思います。

 このブログでも、レバノン情勢は今後も注視していきます。


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