子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2013年TVドラマ冬シーズン・レビューNO.2:「まほろ駅前多田番外地」「最高の離婚」

2013年03月08日 00時10分06秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
映画版の「まほろ駅前多田便利軒」は,瑛太(多田役)と松田龍平(行天役)という今を時めく二人の若手役者が紡ぎ出す「緩い哀しみ」と呼びたいような空気感が絶妙で,思いのほか楽しんだのだが,それがまさか連続ドラマになるとはびっくり行天,じゃなかった仰天した。
その結果はと言うと,同じテレビ東京の連続ドラマ「鈴木先生」の映画版が,ドラマ版のペースを基盤の部分で踏襲して成功したのと同じように,ドラマ版の「まほろ駅前番外地」もまた映画版の「ずるずる」という感じのビートを,そのままドラマに持ち込んだのが功を奏して,軽トラ二人旅は快調に鈍足走行を続けている。

くわえタバコにカップラーメンという70年代っぽい小道具が「フリーター」という職業名よりも,「ヒッピー」という,最早完全に死語と化した人種名を思い出させるのが,ドラマが成功していることの何よりの証拠だ。
三浦しをんの原作名の通り,「便利軒」という一般の社会からは半歩退いたところで生きている人々の暮らしに寄り添う職業が,回を重ねる毎に魅力的に見えてくるのは,紫煙の奥に隠した鋭敏で,時に温かい視線を覗かせる瑛太の演技に負うところが大きい。一昨日の朝日新聞には逆廻しで撮影したタイトルロールに関する記事が載っていたが,深夜枠ならではの「大人の描写」も挟んでくるサービス精神にも拍手。

そんな「夜の瑛太」だけでは物足りないという人のために,今季の瑛太は「ゴールデンタイム」も働いている。
秀作を連発している坂元裕二の新作「最高の離婚」では,細かいところが気になる「きっちり男子」気質故に,震災時に運命の出会いをしたおおざっぱな妻(尾野真千子)と別れ,近所に越してきた元カノ(真木よう子)にすり寄っていくという,切れ者の便利屋とは正反対の役を嬉々として演じている。

瑛太は,尾野との絡みで,長台詞を駆使して相手を罵倒しようとする姿があまりにも楽しそうなので,ひょっとするとこっちが地なのではと思わせるくらいノッている。
どんな役をも自分に引き寄せる柔らかな腕力の持ち主である尾野と,どんな役をやっても生硬さが出るのが売りになりつつある真木よう子の間で,貫き通すべき自分の所在を見失いつつもとりあえず笑いは取っておく,という姿は,今時の男の子にとっては,まさに生きる手本に見えるかもしれない。

残る一人,ナルシストの大学教員役の綾野剛については,何が魅力的なのかさっぱり判らないという告白をしなければならないのが残念ではあるが,「それでも,生きてゆく」の重さとバランスを取るかのようなこのライトな味わいは悪くない。願わくば,これ以上真木よう子の暗い過去のせいで,ドラマの重量が増したりしませんように。


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