子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

TVドラマ「スカーレット」:半年の長丁場を乗り切ることの難しさ

2020年03月28日 15時32分08秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
朝ドラの特徴とも言える「登場人物全員集合」としなかった最終回は,実に良かった。終盤の軸となったプロット,ヒロイン喜美子(戸田恵梨香)の息子武史(伊藤健太郎)の闘病から死に至るプロセスを,ナレーションだけで表現した潔さも評価できる。哀しみを乗り越えて信楽焼に没頭する喜美子のアップをラストショットとしたことも,物語の幕切れに相応しい判断だったと言える。だが,全体を通した評価となると厳しいものにならざる . . . 本文を読む

映画「マリッジ・ストーリー」:「言葉に出来ない」感情を表現する果敢な試みは,配信作品だけになってしまうのだろうか

2020年03月22日 11時55分09秒 | 映画(新作レヴュー)
フランソワ・トリュフォー作品に欠かせなかったジョルジュ・ドルリューの軽快なメロディで幕を開けた「フランシス・ハ」で,繊細な「イカとクジラ」時代に別れを告げ,軽やかに柔らかく変身を遂げたように見えたノア・バームバックは,NETFLIXで撮った「マリッジ・ストーリー」でまたもや鋭い転調を見せる。スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーという,当代きっての売れっ子俳優二人とのコラボレーションで,夫婦 . . . 本文を読む

映画「Red」:大人の恋愛映画として期待したのだが…

2020年03月14日 12時08分40秒 | 映画(新作レヴュー)
雪道を走る車に結わえられた紅い布,深い雪に埋もれた公衆電話ボックス,フロントガラスに吹き付ける雪。ミステリアスな雰囲気で幕を開ける三島有紀子の新作「Red」は,過去を引き摺る二人(妻夫木聡と夏帆)の目的地の見えない疾走を描いた,近年では珍しいストレートな大人の恋愛映画だ。観る前は,どうしても鮮烈なデビュー作である「天然コケッコー」の印象が抜けない夏帆が,ついに「R15+」という鑑賞制限指定を受けた . . . 本文を読む

映画「スキャンダル」:決して団結しない「チーム」の強靱さ

2020年03月07日 13時33分31秒 | 映画(新作レヴュー)
昨日発表された「日本アカデミー賞」では,東京新聞の望月衣塑子記者の著書にインスパイアされた「新聞記者」が作品賞に加え,主演男女優賞などの主要賞を総なめにした。これまでに数多くの受賞歴がある作品とは言え,セレモニーの放送権が,現政権に近いと言われている読売新聞系の日本テレビだったことを考えると,なかなかのサプライズだったという印象を受ける。だが,日本映画としてはかなりのチャレンジだったこの作品でさえ . . . 本文を読む

映画「ミッドサマー」:北欧で花咲いた「イマヘイ」の奇想

2020年03月01日 11時29分06秒 | 映画(新作レヴュー)
斬新なホラー映画として話題を呼んだ「ヘレディタリー/継承」の若き監督アリ・アスターの新作は,前作と同様に不穏な空気を漂わせる真夜中のシークエンスから,真夏のスウェーデンの開放的な草原へとジャンプする冒頭の展開によって,一気に観客の心を鷲掴みにする。陽光降り注ぐ草原や絵に描いたようなフォークロアな白い衣装,原色を使ったタペストリー,そして主人公たちを迎える人々の微笑み。およそ暗闇に棲息する恐怖とは縁 . . . 本文を読む