子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2013年TVドラマ冬シーズン・レビューNO.1:「泣くな,はらちゃん」

2013年03月04日 23時30分27秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「最後から二番目の恋」に続く岡田惠和の連続ドラマは,ヒロイン(麻生久美子)が描くマンガの世界と実世界を往き来する主人公はらちゃん(長瀬智也)のドタバタをテーマとした,「SF」とも受け取れる意欲的な作品だ。
「最後から~」が壮年にさしかかった男女の本音トークを,地に足の着いた身につまされ感,といったものを前面に出したアプローチで描いていたことと比較すると,180度作風を変えて挑んできた本作は,はらちゃんたちが住む酒場の造形に代表されるアバンギャルドさが,週末のゴールデンタイムでどこまで許容されるかという一種の実験とも言える内容になっている。

とりあえず作品の核は「マイ★ボス マイ★ヒーロー」で確立した長瀬の「社会とはズレまくっているのにひたすら純粋でパワフル」というキャラクターだ。前回との大きな違いは,「マイ★ボス~」における主人公のミッションが「高校卒業」で,ヒロイン役の新垣結衣への恋心はサブプロットに留まっていたことに対して,今回は麻生久美子に対するストレートな求愛が物語の主軸に据えられている点だろう。
自分が描いたマンガの主人公による熱いアプローチに戸惑いつつも,徐々に人生に対する身体の向きを変えていこうとするヒロインの姿が,はらちゃんの派手なアクションを背景に浮き彫りになっていくという展開も斬新だ。
脇を固める丸山隆平の堅実な「いい人」振りは「助演」の鑑と言ってもよいし,「川の底からこんにちは」に続く出演でもはや水産加工業女優と化したかのような,かまぼこ工場のボス役の稲川実代子が実にうまくはまっている。

だがこうした幾つもの熱い意欲や配役が,連続ドラマに必要な求心力たり得ているかと問われれば,答はかなり厳しいものになる。
一番気になるのは,はらちゃんがヒロインが描くマンガの世界と現実世界を往き来するという物語の肝の部分が,話が進むに従ってかなり窮屈に感じられるようになってきたことだ。演劇でも映画でも,俳優の「出入り」というのは物語のリズムを作る上でも重要な部分を占めているのだが,本来黒子の役割を果たすべきアクションが,観客に強く意識されてしまうというのは,作劇上のウィークポイントと言わざるを得ないだろう。
加えて,タイムワープものに必須の細かい約束事はない替わりに,マンガの世界しか知らないという主人公のバックグラウンドから来る制約が,ほんの少しの笑いと引き換えに物語の幅を狭める方向に作用しているのも気になる。
ヒロインにライバル心を燃やす忽那汐里が,ほとんど使い捨て状態なのも残念だし。

残り3回(多分),ヒロインの師匠たる薬師丸ひろ子は,ドラマを救うことが出来るのだろうか。仮に救えなかったとしても,泣くな,はらちゃん。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。