子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「トイ・ストーリー4」:Yes! We Canada!

2019年07月19日 21時50分43秒 | 映画(新作レヴュー)
フルCGアニメーションの先駆けとなった第1作以降,過去に制作された3作すべてがいずれ劣らぬ秀作だったが,それらで描かれた数多くのエピソ−ドを踏まえて作られた新作「トイ・ストーリー4」は,期待を遥かに上回る大傑作だ。字幕版のためか時折場内に響いた子供たちが質問する声や歓声もBGMにして,ウッディとボーの冒険はスカンクの暴走トレーラーに乗って,100分間フルスロットルで駆け抜ける。この作品が内包する楽しさと深さを真に味わえるのは,子供にせがまれてポップコーンを買う行列に並んだ親の方であることは間違いない。

3作目までで描かれてきた,おもちゃとしての生きがいや,やがて来る持ち主との別れ,友情などの題材に加え,本作では持ち主,ひいては社会との絆を持つことを拒否された孤独や,愛することの重み,他者の尊重,そして愛と信条を貫くことにより不可避となる別れ等々,この尺にどれだけ詰め込むのか,というくらいにテーマがてんこ盛りだ。しかしそのどれもが,ウッディの運命の人となるボーの「とにかく行動あるのみ」というポリシーに引っ張られて,スピード感豊かにドライブされる。古くはバスター・キートンのスラップスティック作品のギャグを彷彿とさせるような追跡劇から,1作目のラストを思い起こさせるカブーンのジャンプまで,笑いと疾走感とが一体となったアクションのエネルギーは「素晴らしい」の一言に尽きる。先日朝ドラの「なつぞら」で,演出家と原画担当が短編映画の筋を巡って,ディスカッションしながらアクションを膨らませていくプロットが放送されていたが,監督のジョシュ・クーリーを中心にアンドリュー・スタントンやリー・アンクリッチなど,本作に関わりの深い名うてのクリエイターたちが侃々諤々,熱くなって議論している場面が浮かんでくるようだ。

本作のクライマックスはフライヤーにある通り「ウッディが選んだ驚くべき決断」であることは間違いないが,1作目から飛躍的に向上した画面の精度や質感に加えて,凝ったディテールに何度も唸らされた。中でも「シックス・センス」から近作の「ア・ゴースト・ストーリー」,更には正真正銘のホラー「死霊館」シリーズに至るまで,絶え間なく作られているゴシック・ホラーのテイストを活かした腹話術人形ベンソンとギャビー・ギャビーのコンビが漂わせる,不気味なアンティーク風味は最高だ。孤独な「キャプテン・カナダ」カブーンの声に哀愁のキアヌー・リーヴス,バニーに「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールをあてるセンスも秀逸。どこを取っても大人向けのエンターテインメント。「遙か彼方へ!」のかけ声と共に,全力で推薦したい。
★★★★★
(★★★★★が最高)


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