「リトル・ミス・サンシャイン」の制作チームが再集結,という謳い文句が功を奏したのか,札幌における唯一の上映館となった日曜朝のスガイ6番スクリーンは,補助席が用意されるほどの大入りだった。もっともこの6番館は,ススキノにほど近い場所にある独立系シネコンの中でも,一番収容能力(席数)の低いハコなので,どれだけ儲けが出るのかは分からないが,前作がそれだけ多くの映画ファンに愛されたことの証左であることは間 . . . 本文を読む
バスケットボールにおいて,試合終了を告げるブザーが鳴る寸前に放たれ,試合を決めるシュートを指す言葉として,井上雄彦の漫画のタイトルにもなっている「ブザー・ビーター」という単語はよく耳にしていたが,「ブザー・ビート」という使い方は今回のフジのドラマで初めて聞いた。だからという訳でもないのだが,売れっ子脚本家大森美香の脚本による新作は,バスケットボールの扱いに対して,どうにも違和感が拭えない作品になっ . . . 本文を読む
製作スティーヴン・スピルバーグ,監督マイケル・ベイという,何とも不可思議なコンビによる,日本原産の変形ロボットの映画化シリーズの第2作。本国アメリカでは,第1作を遙かに上回る3億5千万ドルオーバー(先週まで)という大ヒットを記録し,既に歴代興行収入ランキングの第15位というところまで上がって来たらしい。
シリーズ第1作は,深刻ぶらない展開と軽やかなテンポ,更に驚いたことには,適度な湿気を帯びたユー . . . 本文を読む
パソコンのハード・ディスクとiPodに「スリラー」が入ってはいるが,持っているCDは「BAD」だけ。ライヴに行ったこともなければ,ムーンウォークの真似をしたこともない(どうせ出来ないだろうし)という,マイケル・ジャクソン教「非信者」の私だが,マイケル逝去の報にはやはり衝撃を受けた。
初めて「スリラー」のヴィデオを観た時,「狼男アメリカン」を撮ったジョン・ランディスを起用した必然性は何処に?となか . . . 本文を読む
腰を下ろして休む浅野忠信と香川照之のバストショットの遠景に映る,陽光を反射して赤く染まった雲海。険しく細い稜線,正にその直上を山のような測量用の器材を担いで歩く登山隊を,遙か上方から捉えたロングショット。
にわかには実写とは信じられないような映像が,連続してスクリーンに映し出される。「映画」というメディアが持ち得る訴求力の限界に挑んだようなフィルム,と言うより他に言葉を見つけられないもどかしさが, . . . 本文を読む
職業シリーズを書き続ける人気脚本家中園ミホの新作が始まった。
私はかつて,中園のヒット作「ハケンの品格」で篠原涼子が演じた,数多の職務に対して最上のスキルを備えながらも,自由を求めて派遣職員を続ける主人公,という設定に拒絶反応を示した。それは,まだ「派遣切り」といった事態は起こっていなかった当時,そんな主人公のキャラクターが,派遣社員が増え続けていた現実の理由と乖離しているのではないか,スキルの獲 . . . 本文を読む
ベルンハルト・シュリンクの原作「朗読者」は,全世界で500万部が売れた大ベストセラーだ。それが当時どのくらい話題になったのかというと,日本で出版された当時(2000年春)には既に文庫か新書しか買えなくなっていた私が,「年上の女性との激しい恋」という惹句に負け,大枚叩いて新潮クレスト・ブックスの単行本を買ってしまったくらいに,センセーショナルな出来事だったのだ。
そんな原作は,発刊当時から映画化が . . . 本文を読む
視聴率競争でいよいよ崖っぷちに追い込まれたTBSが,何周年記念とやらで大騒ぎした一昨年の「華麗なる一族」に続いて,大昔のベストセラーのドラマ化に挑んだ「官僚たちの夏」が始まった。ひたすら派手で,壮麗さを誇っていたような前作(何の繋がりもないのだが,以下勝手に「華麗なる一族」=前作と略)に負けじと,誰彼構わず引っ張り込んではタイトルロールを派手に飾り立てるのかと思いきや,中盤の守備とパスワークを重視 . . . 本文を読む
「脳内妄想派」というイメージが強かったダーレン・アロノフスキーが,こんな「普通のフォーマット」に則った,しかも「身体」に根ざした映画を撮るとは思わなかった。身体の大きさだけでなく,顔のつくりまで変わってしまったように見えるミッキー・ロークが,衒いのないストレートな演技で生み出した捨て身の必殺技「ラム・ジャム」は実に強力で,私はいとも簡単にフォールされてしまったのだった。
前半は,TBSの密着取材 . . . 本文を読む