子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「終の信託」:周防正行ならではの「軽やかさ」は一体何処へ?

2012年12月27日 22時48分33秒 | 映画(新作レヴュー)
草刈民代と大沢たかおが,机を挟んでこれでもかとばかりに目力対決を繰り広げる144分間。日本の裁判,中でも検察制度に鋭く切り込んだ周防正行の前作「それでもボクはやってない」にもあった,コメディ・リリーフに近いシークエンスは,本作においては全く見当たらない。「尊厳死」という重いテーマを,どんよりとした空(雨)模様を背景にして,主題の重量感に比例させたかのような重厚な演技と演出で描き出した作品を前にして . . . 本文を読む

映画「ふがいない僕は空を見た」:社会の歪みを引き受ける覚悟は滲み出ているのだが

2012年12月16日 16時16分48秒 | 映画(新作レヴュー)
第24回山本周五郎賞に輝いた窪美澄の同名小説を「百万円と苦虫女」のタナダユキのメガホンで映像化する。それだけ聞くと極めて順当な組み合わせのように思えるが,ポイントは「R18+」コードだったのかもしれない。 妊娠に関する義母の圧迫を,アニメのヒロインのコスプレをすることによって辛うじてやり過ごしている主婦が,長い間空想してきた理想の彼氏=卓巳を現実社会で獲得してセックスに耽る。幾つものプロットが輻輳 . . . 本文を読む

映画「恋のロンドン狂騒曲」:名人芸という一言で片付ける訳にはいかない文字通りの「至芸」

2012年12月09日 11時33分16秒 | 映画(新作レヴュー)
ウディ・アレンの新作を1年に2本観られるというだけでも望外の喜びなのに,新作は彼十八番の「身につまされ恋愛劇」の進化形,と来た日には,アレンのファンは欣喜雀躍してこのクリスマス・プレゼントを受け取るしかないだろう。 先週の1日に77歳の誕生日を迎えたウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」に続く(制作はこちらが先)ヨーロッパ・シリーズの新作は,ロンドンを舞台にした軽くて濃くて古くて新しい恋物語 . . . 本文を読む

映画「危険なメソッド」:裏通りの巨匠の姿はどこにもなく

2012年12月06日 22時16分45秒 | 映画(新作レヴュー)
カナダのシネアスト,デヴィッド・クローネンバーグの映画監督としてのピークをどこと考えるか。当然,人によって見方は異なると思われるが,私はまだインディペンデント・フィルムの香りが残る初期の「スキャナーズ(1981)」から「ヴィデオドローム(1982)」と大傑作「デッドゾーン(1983)」を経て,メジャーに躍り出た「ザ・フライ(1986)」を撮った頃が,まだ誰も足を踏み入れたことのない荒野を拓くパイオ . . . 本文を読む