子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

TVドラマ「サンクチュアリ -聖域-」:極悪主人公版リアル「巨人の星」

2023年07月02日 17時57分40秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
20年くらい前,仕事でドイツに出張した時にホテルでテレビのザッピングをしていたら,いきなり「バカノサト」というアナウンサーの言葉と共に相撲取りの映像が映った。ドイツ人の発音で「バカノサト」と呼ばれた力士は,関脇に上がったばかりの「若の里」だった。まさかヨーロッパで,日本でもスポーツとしてはメジャーと言えるかどうか微妙な立ち位置と言わざるを得ない大相撲が,有線チャンネルとは言え,本場所の取組が延々と . . . 本文を読む

2022夏シーズンドラマレヴューNO.3「あなたのブツが,ここに」「ちむどんどん」

2022年10月22日 21時40分45秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「あなたのブツが,ここに」 TVドラマ界においても,3年近く続いているCOVID-19禍の社会を俯瞰的に捉えたものが,ぽつぽつと出始めている。キャバクラをクビになったシングルマザーの女性が,生活の糧を求めて宅配ドライバーとして走り出す姿を描いたNHKの夜ドラである本作は,そんな時代の波を捉えつつ働くことの意味を問うた秀作だ。 COVID-19禍でキャバクラの職を失ったシングルマザー役の仁村紗和は, . . . 本文を読む

2022夏シーズンドラマレヴューN0.2:「魔法のリノベ」「僕の姉ちゃん」

2022年10月16日 20時34分44秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「魔法のリノベ」 ほぼどのシーズンにも,と言っても過言ではないくらい多く見かける「漫画」が原作の当作。SDGsという追い風もあって,言葉自体も一般化しつつあるリノベーションという仕事を中央に据え,昨今退潮傾向にあるTVドラマ界にあって比較的高打率を保っている波瑠を,脚本の上田誠をはじめとするヨーロッパ企画勢が盛り立てるというフレームは,時宜にかなった良い選択だった。舞台となる「まるふく工務店」のア . . . 本文を読む

2022夏シーズンドラマレヴューN0.1:「石子と羽男」「初恋の悪魔」

2022年10月10日 19時07分06秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「石子と羽男-そんなことで訴えます?-」 プロデューサー新井順子&演出塚原あゆ子(プラス山本剛義)という,野木亜紀子脚本の傑作群を生み出してきた「テレビドラマ界のスライ&ロビー」と私が勝手に呼んでいる鉄板コンビが手掛けた弁護士ドラマは,期待を裏切らない出来だった。有村架純という脂の乗った芸達者が中村倫也を引っ張り,雑然としたマチベン事務所に「私,失敗するかもしれませんので。というか,もう何度も司法 . . . 本文を読む

TVドラマ「カムカムエブリバディ」:稀に見るメディア・ミックスの成功例

2022年04月16日 17時35分41秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
三代に亘るヒロインを3人の女優が演じるということで話題を呼び,先週無事に大団円を迎えた朝ドラ「カムカムエブリバディ」だが,視聴率以上に展開の新鮮さと終盤の伏線回収の手際に関して,賞賛の声を数多く目にした。「成長」が主要なテーマとなってきた朝ドラにあって,確かに3世代共に努力を重ね,一定の成果を得るというメインプロットはしっかりと抑えてあるものの,成長のゴールとして存在する「成功」が,決して大々的に . . . 本文を読む

TVドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」:華麗なコードチェンジに彩られた新たな「カルテット」

2021年06月27日 20時41分09秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
次週が来るのが待ち遠しいドラマって,本当に久しぶりだった。しかもそれが大ヒットしながらも,当方には「パンデミックに揺さぶられる2021年の今,堂々と『いちご白書をもう一度』をやられてもなぁ」という印象しか持てなかった「花束みたいな恋をした」を書いた坂元裕二作品とは。何なんだ,この振れ幅は,という驚きに戸惑いながらも楽しませて貰った3ヶ月。「大豆田とわ子」という類い希なる人物の魅力とは一体何だったの . . . 本文を読む

TVドラマ「おちょやん」:「浪花千栄子」という選択なのか,杉咲花の演技力の問題なのか

2021年05月22日 15時07分09秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
NHK朝ドラ「おちょやん」が終わった。途中は「いつまでこんな暗いトーンが続くのか」と思った時期もあったが,千代(杉咲花)がラジオドラマに出演するようになってからの最終盤は,生瀬勝久と塚地武雅のサポートもあって,若干盛り返して大団円を迎えた。視聴率が一度も20%に届かない,千代の父親役トータス松本が「朝ドラ史上最悪の父だ」と話題になるなど,どちらかというとネガティヴなネタに事欠かなかったという印象の . . . 本文を読む

TVドラマ「スカーレット」:半年の長丁場を乗り切ることの難しさ

2020年03月28日 15時32分08秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
朝ドラの特徴とも言える「登場人物全員集合」としなかった最終回は,実に良かった。終盤の軸となったプロット,ヒロイン喜美子(戸田恵梨香)の息子武史(伊藤健太郎)の闘病から死に至るプロセスを,ナレーションだけで表現した潔さも評価できる。哀しみを乗り越えて信楽焼に没頭する喜美子のアップをラストショットとしたことも,物語の幕切れに相応しい判断だったと言える。だが,全体を通した評価となると厳しいものにならざる . . . 本文を読む

ドラマ「全裸監督」:バブルと共に生きる覚悟がまとう熱

2019年09月08日 21時35分30秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
1980年代初頭,ヴィデオが家庭に普及し始めた頃に,その普及速度を速めた一つの要素が「AV」の存在だ,という趣旨の台詞が出てくる。当時,ヴィデオデッキを買った世代のど真ん中にいた私は,本作のハイライトである黒木香の作品こそ観たことはなかったものの,世の中が彼女とその生みの親とも言える本作の主人公村西とおるの「エロこそ人間の根源」的な言動に喝采を送った空気感はいまもはっきりと覚えている。 地上波では . . . 本文を読む

2017冬シーズンTVドラマ「べっぴんさん」(その2):マジか?のつるべ打ち

2017年04月06日 22時50分58秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
本来の「TVドラマ」とはまったく「別の品」という意味では,本当に「べっぴんさん」だった。 半年を費やして,一人のヒロイン,ひとつの家族,ひとつの企業等々の盛衰を,数多くの登場人物に幾つものエピソードを語らせながら綴っていく。そういう朝ドラのフレームワークを,完全に無視することから生まれたドラマは,信じられないほど貧弱で,ドラマの抜け殻と言うしかないものになっていた。 そもそも「キアリス」の一企業 . . . 本文を読む