今年の7月の休日の朝,ふと思い立って,もう何回目になるか分からなくくらい観たジョアン・ジルベルトの東京ライヴを収めたBlu-rayを再見していた。もの凄く立派なパッケージに入った「限定版」で,値段もまた「立派」なものだったが,そこに記録されたパフォーマンスはそんなことも気にならなくなるくらい素晴らしいものだ。その時も東京国際フォーラムで一度だけ経験したライヴを思い起こして,ディランやストーンズ,ウ . . . 本文を読む
まさかの超大ヒットとなった前作の公開は2年前。アンディ・ムスキエティという,当時はほぼ無名といっても良いアルゼンチン人の監督が作り上げた第1章の出来映えについて,自作の映画化作品に手厳しい批評で知られるスティーヴン・キングも,興行的な成功以上にその内容に満足したようだ。その証拠に予算も増えて出演者にスターを揃えた本作では,台詞付きの役を実に楽しそうに演じている。その意味でムスキエティは「シャイニン . . . 本文を読む
思春期の入り口に立った田舎の中学生の,感性の危なっかしいうつろいを描いた「天然コッケコー」は,故Rei harakamiが作り出した,小川の清流を打楽器で表現したようなデジタル音と共に,いまだに山下敦弘の最高傑作として輝きを放っている。箱田優子の「ブルーアワーにぶっ飛ばす」はまるで,夏帆がそこで演じた中学生が東京に出てきて,様々なしがらみという名の泥にまみれ,くたびれ果てた演出家の生活から逃げ出す . . . 本文を読む
恩田陸の原作は「夜のピクニック」からの飛躍的な成長を証明する,見事な音楽小説だった。主要な登場人物の描き分けと関係性のバランス,そして何よりも,月並みな表現だがまるで譜面を一旦文字に翻訳した上で,更にそれを読者の視覚から鼓膜の振動へと移し替える技術に,心から拍手を送ったものだった。
ただこれを映画化するとなると,小説の分量自体が大部である上,4人のパーソナリティと音楽性の関連を含めて,丁寧にやれば . . . 本文を読む