ヴェネチアで最優秀新人俳優賞を受賞した主役二人,染谷将太と二階堂ふみの演技がとにかく凄い。
染谷は常軌を逸した状態に踏み込んだ後の演技における理知的なコントロールに,そして二階堂は染谷からキスを受けた後の,言葉では表現できない歓喜と絶望が入り交じった,艶かしくも危険な微笑みに,ともに底知れない凄みを感じた。
正視に耐えない殴打場面,それも腕力に勝る非人間的な大人が,前向きに生きようとするか弱い子供 . . . 本文を読む
葬儀屋の跡継ぎという設定,更に出演者の一人が山崎努だと聞いて,真っ先に思い浮かべたのは当然「おくりびと」だった。
だが,アカデミー外国語映画賞に輝いた話題作の人気にあやかるにしても,あれからずいぶんと時間は経ってしまったし,その後も「アントキノイノチ」のような多少テイストが違うとは言え,テーマの一部が被る作品も作られた後に今さらTV版もないだろうと思って観たら,「おくりびと」というよりも,検死官を . . . 本文を読む
「八日目の蝉」で,アカデミー賞よりも歴史の古いキネマ旬報主演女優賞を獲得した永作博美が次に挑んだのは,シングルマザーのやり手刑事役だった。
日本テレビの新作ドラマ「ダーティー・ママ!」は,どうしてもフジの竹内結子主演「ストロベリーナイト」と比較されるであろうことを前提に,昨今の警察ものには欠かせないはずの「リアルさ」を完全に放棄してまで,「異色の」という形容詞に拘った刑事ドラマを目指したようだが, . . . 本文を読む
主人公(ジェシー・アイゼンバーグ)が電話で注文を受けてから30分以内にピザを届けるため(原題は「30:minutes or less」),交通法規を無視して車を飛ばす巻頭のシーンは,明らかにルーベン・フライシャーの前作「ゾンビランド」のイントロを想起させる。
このリズムに乗れなかった人は,おそらくは「ゾンビランド」の時と同様に,「この上なく,くだらない」という評価を下す可能性が高いだろう。
一方で . . . 本文を読む
「ニュー・イヤーズ・イブ」に続いて,今年早くも「行事オムニバス・シリーズ」の第2弾となるノルウェー作品。
「ホルテンさんのはじめての冒険」で,定年退職する列車運転手の現役最後の1日をモチーフに,女子ジャンプ選手に温かいエールを送るという離れ業を見せたベント・ハーメルは,いくつも(複数の話が絡まり合うため厳密なカウントは困難)のエピソードを,85分という短い尺を逆手に取って,コンパクトかつ余韻を生か . . . 本文を読む
TVだけでやめておけば良かったものを,「R15+」でも「R-18」でもなく,傲慢にもTVと同様に「G」カテゴリーのままで映画化に挑み,案の定木っ端みじんに砕け散ってしまった映画版「セカンド・バージン」の傷は果たして癒えたのかどうかが気になる鈴木京香だが,この冬のドラマ復帰作は,青春ものの「巨匠」野島伸司の手になる母子ものだ。
昔のドラマは殆ど観ていないため,彼にコメディ的な資質があるのかどうか軽 . . . 本文を読む
「チェイサー」で韓国アクション映画の歴史に新たな一歩を刻んだナ・ホンジン監督の最新作。
同作で圧倒的な存在感を見せたハ・ジョンウ,キム・ユンソクという主演二人を再登板させて作り上げた暴力のジャングルは,深みのある画調と相俟って,凄まじい迫力を湛えている。
K-POP以上に世界市場を見据え,こうして次から次へと生み出されてくる鮮血まみれのアクション作品を観るにつけ,韓国映画界が持つ創作エンジンの力強 . . . 本文を読む
大勢のスターを使って,クリスマス・イブに繰り広げられる複数の恋愛模様を綴った「ラブ・アクチュアリー」は観た。そのヒットに味をしめたような続編的作品で,今度は臆面もなく祝祭日そのものを題名に付け,イギリスからアメリカに舞台を移した「バレンタインデー」は未見だった。
なら順番からいって今回は観なければいけない,という強迫観念があった訳ではないのだが,私が勝手に名付けた「祝祭日シリーズ」第3弾を,少々タ . . . 本文を読む
過去の栄光を引きずる負け犬のリヴェンジに,父と息子の絆。最初は反対していたのに,いつの間にか応援している親戚に,命を賭けた闘いをそっと見守る恋人。
予告編を見る限りでは,「傷だらけの栄光」に「ロッキー」に「チャンプ」と,これまで数多く作られてきたボクシング映画のクライマックスを,ロボット・アクションで継ぎ接ぎしたような作品としか思えなかった。だがドリームワークス制作の「リアル・スティール」は,こう . . . 本文を読む
拙コラムをご覧いただいている皆さま,あけましておめでとうございます。
相変わらず変わり映えのしないサイトではありますが,何とぞ本年もご愛顧の程,よろしくお願いいたします。
過去にチャンスはあったらしいのだが,タイミングが悪く実現しなかったという,CGアニメ界の巨匠ブラッド・バードの実写映画への進出は,人気スパイ・アクション「M:I」シリーズ第4作というビッグ・バジェットの作品となった。
これまで . . . 本文を読む