子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.3:「ナサケの女」「黄金の豚」

2010年10月30日 21時14分35秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
ダブル「涼子」の対決と騒がれた「調査官もの」同士の激突は,17.6%と15.3%という非常に高いレヴェルでの僅差の争いながら,初回は「米倉涼子」に軍配が上がった。 共に税金に関する調査官であり,男勝りで,組織に属しながら組織を信じない一匹狼というキャラクター,という被り具合もなんのその,年齢もほぼ同じ(篠原37歳,米倉35歳)二人の涼子の勢いは,まるで今期のドラマ群のスタートダッシュにおける,近年 . . . 本文を読む

映画「僕のエリ 200歳の少女」:脆く儚い感情の揺れを掬い取った奇跡のようなフィルム

2010年10月27日 23時28分50秒 | 映画(新作レヴュー)
スクリーンのサイズを巧く使った引きのロング・ショットが作品のベースを作り,ワンショットの中でフォーカスを変えることによって,動かない被写体に静かな動きを与える。カメラの生理を知り尽くしたようなトーマス・アルフレッドソンの演出によって,それまでぼんやりと捉えられていたエリ(リーナ・レアンデション)の顔が初めて観客の前に映し出されるという,一見何の変哲もないひとつのショットが,とてつもないスペクタクル . . . 本文を読む

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.2:「流れ星」「フリーター,家を買う。」

2010年10月25日 22時03分41秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
主演が上戸彩と竹野内豊。松本潤を起用しながら不完全燃焼に終わった前クールから,是非とも巻き返しを図りたいであろう2010年秋の月9のメインキャストとしては,かなり地味ではないか。そんな印象を持ったのだが,やはり「流れ星」初回の数字は13.6%という,月9としては低い水準に留まってしまった。 しかし人格破綻者の兄に苦しめられる女と,肝臓移植が必要な妹を持つ男という,不幸てんこ盛りのカップルの出会いを . . . 本文を読む

映画「ミレニアム2 火と戯れる女」:「北欧産のミステリー」という妙味は何処へ?

2010年10月20日 20時13分48秒 | 映画(新作レヴュー)
著者の死後に世界的なベストセラーになった原作を,スウェーデンの冷たい空気をそのまま閉じこめたような映像で映画化した第1作は,わざわざハリウッドで,しかもあのデヴィッド・フィンチャーを起用してまでリメイクすることはないんじゃないの?というくらい良くできたスリラーだった。 3部作の幕開けは,ハイテクを駆使するパンクなハッカー,リスベット・サランデル(ノオミ・パラス)と編集者ミカエル(ミカエル・ニクヴィ . . . 本文を読む

映画「ミックマック」:「アメリ」風味のゆるーい「オーシャンズ7」

2010年10月17日 22時24分17秒 | 映画(新作レヴュー)
ジャン=ピエール・ジュネの映画に出てくる人物は皆,美醜やバランスという観点での評価を越えたところで,自分の顔に自信を持っているように見える。アップに対して決して怯むことなどなく,個性的な顔を潔くさらけ出し,その「顔力」によって画面に深みを与えているのだ。 新作「ミックマック」で主人公をもり立てるチーム・バジルも,「デリカテッセン」以来ジュネの盟友となってきたドミニク・ピノンを筆頭に,それぞれのキャ . . . 本文を読む

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.1:「SPEC」「ギルティ 悪魔と契約した女」

2010年10月14日 23時31分41秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
コミックの映画化が続いていた堤幸彦が,11年前に同枠で放送され人気を博した「ケイゾク」の続編としてアナウンスされていた警察もの「SPEC」で,連続ドラマの世界に帰ってきた。 8月にキャストが発表された時点では,タイトルの頭に「ケイゾク2」が付いていたような気がするのだが,それが正式なタイトルには冠せられなかったことに何か意味があるのかどうかは分からない。ただ,8月の時点で「何故オリジナル・キャスト . . . 本文を読む

国際Aマッチ 日本代表VS韓国代表【0:0】祝!本田,復活!

2010年10月12日 23時06分26秒 | サッカーあれこれ
キ・ソンヨンの投入からペースを取り戻した後半の韓国に対して,個人の力で何度も局面を打開してみせたのは,本田圭のタフネスと技術と気力だった。 前半に放った2本の惜しいミドル・シュートによって,「攻め」の感覚を取り戻したように見えたが,後半,相手のポゼッションが続く中でボールを追い回し,最後まであきらめずに身体を寄せ,足を伸ばして奪ったボールを持ち込むドリブルには,正にザック・ジャパンの象徴とも言える . . . 本文を読む

湯浅健二 後藤健生「日本代表はなぜ世界で勝てたのか?」:選手は「監督を男にしたい」と思っていたのか?

2010年10月11日 12時05分11秒 | Weblog
南アフリカW杯について,サッカー界においては有名な著者2人が現地と日本で行った対談をまとめた新書。初版の発行は8月10日になっているので,大会の終了から発売まで敢行されたと思しき突貫作業は,代表が与えてくれたエネルギーに与るところが大きかったのではないだろうか。 内容は書名通り,主に日本代表の快進撃について,サッカーコーチとサッカージャーナリストという立場から分析を加えた章に,この大会で明らかにな . . . 本文を読む

キリンチャレンジカップ 日本代表VSアルゼンチン代表【1:0】祝,ザック,GOOD LUCK!

2010年10月08日 22時40分36秒 | サッカーあれこれ
TVで観ている間中ずっと,日本が初めて出場したフランスW杯大会におけるアルゼンチン戦を思い出していた。自陣ゴール前に人の壁を築き,次から次に飛んでくるシュートを川口が必死に弾いて守り続けたあの90分間から12年。後半は,世界一のスペインを圧倒したばかりの絢爛豪華な攻撃に押されたとは言え,アルゼンチンを相手に日本が90分を通してここまでしっかりとゲームを作ることが出来るようになるとは思わなかった。 . . . 本文を読む

映画「シングルマン」:不定冠詞に込められた監督のヘヴィーな思い

2010年10月06日 23時50分28秒 | 映画(新作レヴュー)
静かな映画だ。過去と現在がフラッシュバックで描かれ,主人公の感情は時に激しくうねるのだが,常に画面に漂っている静謐な冷気は,主人公が住むモダンな家のガラスを通して観客席にまで伝わってくる。けれども,一見静かで冷たい中に,時に登場人物の身体の奥から寡黙な情熱が滲み出す瞬間がある。画面の情報量は最小限に抑えられ,登場人物は皆自分の存在を持て余しているように見え,まるで所在なげにあたりをうろつくことで生 . . . 本文を読む