子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年TVドラマ秋シーズンレビューNO.2:「東京DOGS」

2009年10月28日 00時00分12秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
前シーズンの「ブザー・ビート」に対する世間の高評価は,私の想像を超える凄いものがあった。平均視聴率14.37%は,フルレングス(平均11回)のドラマの中では,黒木メイサの尋常ではない格好良さの助力もあって,見事に草剛の代表作となった「任侠ヘルパー」に次ぐ第2位を記録。内容についても,私が目にしただけで大手新聞紙2紙に「これぞ月9ドラマの本道」と感激した読者の声が載り,映画評論の老舗「キネマ旬報」 . . . 本文を読む

映画「パイレーツ・ロック」:憧憬のブリティッシュ・ロック勃興期

2009年10月25日 21時45分40秒 | 映画(新作レヴュー)
海賊放送を流してきた船が沈没することが明らかになった後,物語は突如としてジェームズ・キャメロンの「タイタニック」を1/100くらいにスケール・ダウンしたパニック映画の様相を呈する。2作品の違いは,(沈没船の規模以外では)こちらがフィリップ・シーモア=ホフマン扮するDJ「伯爵」がかける,プロコル・ハルムの「青い影」とビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」の見事なプロモーション・ヴィデオになっているとい . . . 本文を読む

2009年TVドラマ秋シーズンレビューNO.1:「リアル・クローズ」,「ギネ」

2009年10月21日 23時52分30秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
放映開始前からネットに「ドラマの本編を,洋服の通信販売のための宣伝扱いに貶めて良いのか?」という意見が飛び交っていたフジの「リアル・クローズ」は,日本のコミックを原作としながらも,予想通り「プラダを着た悪魔」の翻訳バージョン,という趣でスタートした。 若くて(撮影当時23歳)ヴォリューム感のあるアン・ハサウェイであればこそ成り立った「過酷な修行に立ち向かう若僧」キャラクターを,スレンダーで落ち着 . . . 本文を読む

映画「空気人形」:全力で息を吐き出した是枝裕和を,しっかりと受け容れたペ・ドゥナ

2009年10月18日 11時37分54秒 | 映画(新作レヴュー)
「家族」という形態を,リアリズムと作劇の絶妙な匙加減で描いた秀作「歩いても 歩いても」に続く是枝裕和の新作は,前作とは打って変わって,業田良家の短編漫画を原作にしたファンタジーだった。一見小さく見えるが,人間の情感が密度濃く縒り合わされた世界を描いて,多彩なニュアンスを発散させた前作の高い完成度を捨ててまで挑んだチャレンジは,ペ・ドゥナというこの世のものとは思われない肢体を持つミューズを得て,未開 . . . 本文を読む

キリンチャレンジカップ 日本代表対トーゴ代表【5:0】

2009年10月15日 00時06分17秒 | サッカーあれこれ
クロスの質は左右ともにステップを一つ上がり,岡崎はエースとしての貫禄を漂わせつつある。長谷部の運動量は着実にヨーロッパ基準に近付き,石川の突破力には彼が間違いなくチームの切り札になったと確信させるだけの切れ味があった。 決めるべきチャンスをほぼ点数に結びつけ,同じ宮城スタジアムで行われた日韓W杯の決勝トーナメント1回戦,日本代表がトルコに敗れたあの記憶を拭い去るような試合になった,と言いたいところ . . . 本文を読む

映画「buy a suit スーツを買う」:揺るがなかった世界を見つめる眼

2009年10月13日 20時40分34秒 | 映画(新作レヴュー)
「この世界は過酷で,生きていくことは大変な仕事だ」。 チラシには「市川準監督,最初で最後のプライベートフィルム」と書かれているが,この小さな作品に込められたそんな思いは「病院で死ぬということ」や「大阪物語」など,死を扱ってきた諸作に通底するものだった。街の喧噪に邪魔されて,おぼろげにしか聞こえてこない台詞に耳をそばだてているうちに,観客はいつの間にか小さな声だけが持つ真実の響きに共鳴していく。 . . . 本文を読む

キリンチャレンジカップ 日本代表対スコットランド代表【2:0】

2009年10月11日 00時52分51秒 | サッカーあれこれ
アジアカップ予選の香港戦から中1日の国際Aマッチ。香港戦に出た旧レギュラー組以外の選手の発奮する姿が観られるものと期待したが,勝負には勝ったものの,サッカーの質は決して高いものとは言えず,やや評価の難しい試合となった。 原因は主に二つ。 一つは,W杯予選から顔を合わせてきた常連組と,今年の夏以降に入ってきた新顔組との間の,連携不足の問題。 もう一つは,レギュラー陣が軒並み参加を取り止めたため「2 . . . 本文を読む

映画「あの日,欲望の大地で」:乾いた大地に染み込む涙

2009年10月10日 00時06分00秒 | 映画(新作レヴュー)
産んだあとすぐに別れた娘と12年振りに再会したシルヴィア(シャーリーズ・セロン)の,遂に娘に受け容れられた歓びを捉えたショットから,ゆっくりと暗転していくラストシーンが見事だ。母を失い,子供と恋人と別れてからの長い年月,感情を殺し,息を潜め,自分を苛むような生活を続けてきた女が,家族の温かい絆の一部となって,「燃え上がる平原(原題)」の呪縛から救われる瞬間。!フェリシダーデス! 「バベル」の脚本 . . . 本文を読む

映画「リミッツ・オブ・コントロール」:携帯電話を捨て「想像力」の旅へ出よう

2009年10月05日 22時29分33秒 | 映画(新作レヴュー)
ジム・ジャームッシュ4年振りの新作は,スペインのマドリッドから,列車や車を使って徐々にひなびた田舎へと流れていく,ストイックな殺し屋の旅を描いた115分のロード・ムーヴィーだ。確かに存在するようでいて,実は定かではない目的に向かって,次々に起こる全てのことを受け容れながら動き続ける主人公の姿は,一見対極のように見えるジャームッシュのデビュー作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の3人の姿と,深いと . . . 本文を読む

映画「重力ピエロ」:吉高由里子の持つ浮力が,重力という強敵に立ち向かったのだが…

2009年10月01日 23時16分59秒 | 映画(新作レヴュー)
ボブ・ディランの「風に吹かれて」が物語のモチーフとして使われていた「アヒルと鴨のコインロッカー」とは打って変わって,「重力ピエロ」において小日向文世と鈴木京香の出会いのシーンで重要な役割を果たすのは,何と前衛ジャズの良心にして,ネネ・チェリーの父,ローランド・カークだった。 果たして,カークが創り出す不協和音が物語の鍵を握っていくのかと思いきや,当然そんなことはあるはずもなく,連続放火事件のヒント . . . 本文を読む