アニメーション作品が年間を通じてシネコンのスクリーンを独占した一方で,グレタ・ガーウィクの「バービー」が圧倒的な高評価と裏腹に興行的には大苦戦をした2023年。同作とほぼ同時期にアメリカで旋風を巻き起こした「オッペンハイマー」が,日本では公開に至らないという事態を憂う中,とうとうケリー・ライカート作品がロードショー公開されることを寿いだ年末。鑑賞本数は減った割に,数え挙げると10本に絞る作業は困難 . . . 本文を読む
画面をゆっくりと横切っていく馬車群を捉えた「ミークス・カットオフ」のショットを想起させる,川面を運搬船が滑るファーストカットから,もうライカートの術中にはまってしまう。
悠揚迫らぬペースでショットを積み重ね,人間が愚かな何事かを「しでかす」様を炙り出すライカート作品の魅力は,西部開拓においてこんなこともあったかもしれない出来事を描いた「ファースト・カウ」でも健在だ。
現代から始まるエピソードは,完 . . . 本文を読む
デビュー作の「デュエリスト/決闘者」でカンヌの新人監督賞を獲って映画の世界に躍り出たリドリー・スコットは,H.R.ギーガーの優れた造形デザインのサポートも得て,CMディレクターならではのアイデアとビジュアルセンスの合体という未踏のルートからSF映画の新たな頂きを征服してみせた「エイリアン」の若きクリエイター,というイメージが強かった。そのイメージは「ブレードランナー」によって更に強化されたものの, . . . 本文を読む
ケレン味たっぷりの派手な銃撃戦でハリウッドの扉をぶち抜いてきたロバート・ロドリゲスの新作「ドミノ」は,原題「HYPNOTIC」が示す通り,催眠術が物語を動かすエンジンとなって観客をドライブする優れたスリラーだ。一見チープに見えながらも遊び心に溢れた映像で数々のヒット作を生み出してきた俊英は,何度も急旋回をするようなストーリーテリングに軸足を移動させ,映像も洗練の度合いを深めつつも,初心を忘れること . . . 本文を読む