子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」:サム・クックで踊る

2017年05月30日 00時06分15秒 | 映画(新作レヴュー)
可愛らしさと無邪気な暴力性は無理なく同居する。それはおそらく生物がこの世に誕生して以来の倣いなのかもしれないが,まさに人間の赤ちゃんに象徴されるその特徴が,小さな木製生物「ベビー・グルート」に集約されている。予告編を観たときから木,じゃなかった,気になっていたグルートの造形が,とても良い出来映えだ。精密かつ巨大なオブジェを具体化する方向に進化していたコンピューター・グラフィックスの,もう一つの可能 . . . 本文を読む

映画「カフェ・ソサエティ」:ヴィットリオ・ストラーロを迎えて撮ったハリウッド絵巻

2017年05月27日 12時29分04秒 | 映画(新作レヴュー)
ほぼ毎年新作に接する歓びを味わえるヴェテラン・アーティストと言うと,私の場合はジェフリー・ディーヴァー,ウィルコ,KIRINJI,コーエン兄弟,といった名前が即座に挙がるが,中でもその創作ペースが最も安定しているのは,存外一番お年を召している本作の監督,ウディ・アレンかもしれない。毎回旬の女優を迎えて,冴えない主人公を「さあ,どうする?」的な状況に追い込んでは,カメラの横でほくそ笑んでいる姿を想像 . . . 本文を読む

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」:壊れた心を癒す海風

2017年05月20日 11時17分57秒 | 映画(新作レヴュー)
映画を観る際にはスクリーンに映像が映し出されるまで,監督や主演俳優等々,主要な情報以外は極力耳にしないでおくようにしている。そのせいで実際に作品を目の当たりにして驚いてしまうことがしょっちゅうある。本作も冒頭で主人公のリー(ケイシー・アフレック)が,兄が倒れたという報せを受けて病院に向けて車を走らせるシーンを観て,「えっ?右側通行?マンチェスターってイギリスじゃなく,アメリカ東海岸の町?」と初めて . . . 本文を読む

2017年J1リーグ第11節 札幌 VS G大阪【0:2】

2017年05月14日 22時28分07秒 | 映画(新作レヴュー)
寒風吹きすさぶ北国へと遠路はるばる飛んできたガンバのサポーターは,日曜夜19時キックオフという,どうやっても今日のうちには帰阪できない過酷な日程も,今となっては余裕で「仕方ないね」と許す気になっているかもしれない。藤本の芸術的なループも見られたし,ACLへの再チャレンジに向けた良いスタートと言っても良い試合だった,といった会話が,今頃すすきのの何処かの居酒屋で青いユニフォームを誇らしげに纏ったサポ . . . 本文を読む

映画「人生タクシー」:女性が切り拓くイランの未来

2017年05月07日 18時23分54秒 | 映画(新作レヴュー)
冒頭,正面を向いているカメラが捉えるテヘランの交通事情がまず恐ろしい。信号が赤に変わっているはずなのに,歩行者も車もお構いなしに交差点になだれ込んでくる。狭い路地では右側通行の原則も何のその。優先通行権は早い者勝ちが共通認識のようだ。その交通法規無用の道路を突き進む主人公のタクシー・ドライバーもまた,一時停止をほとんど無視する上に,どうやら道にも詳しくないようだ。しかも既に乗客を載せている状況でも . . . 本文を読む

2017年J1リーグ第10節 札幌 VS 大宮【1:0】

2017年05月06日 17時45分00秒 | サッカーあれこれ
前節で宿敵浦和を撃破して,とうとう長いトンネルを抜け出した大宮が,当面の残留争いの相手となった札幌と相まみえる。大宮にとってはモチベーションを高く保った状態で乗り込んできた札幌の一戦は,ここまでホーム無敗を誇る札幌のサポーターの声援に押された金園のヘッドと宮澤の素速い反応が生んだ得点によって,札幌が残り2/3強の試合に光を与える結果となった。 大宮は前線のチェイシングは的確なものの,最終ラインは . . . 本文を読む

映画「キングコング:髑髏島の巨神」:この時代に真っ正面から「怪獣映画」を問う勇気

2017年05月05日 20時02分07秒 | 映画(新作レヴュー)
ピーター・ジャクソンの「キングコング」は,「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズに続く,ビッグバジェットのオリジナル・リブートという雰囲気を持った大作だった。その大作感が堂々としていた一方で,「怪獣映画」に必要な「笑えるほどの馬鹿馬鹿しさ」といった点では,オリジナルへのリスペクトに端を発したと思われる行儀の良さの方が勝っていたような印象が強い。 それに比べるとジョーダン・ボート=ロバーツというまった . . . 本文を読む

映画「わたしは,ダニエル・ブレイク」:尊厳を持って生きることの尊さと難しさ

2017年05月04日 10時22分04秒 | 映画(新作レヴュー)
先日,上司から突然「こないだ時間があったので『わたしは,ダニエル・ブレイク』を観てきた」という話をされた。普段,その方とは映画の話などしたことがなかったので,そんなミニ・シアター系の作品の名前がその口から出るとは思わなかったのでたじろいでいると,続けて「制作者は分かってないな」という感想を漏らされた。何のことかと思って訊くと,主人公が心臓発作を起こして倒れるラストの展開についてのご不満だった。「イ . . . 本文を読む