子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「シリアスマン」:コーエン兄弟の集大成たる傑作。これが2年間もお蔵入りだったなんて…

2011年04月29日 14時51分40秒 | 映画(新作レヴュー)
昨年日本で公開された400本の映画のうち,10億円を超える興行収入を上げたのは,全部で29本。その全体から見るとたった7%の作品が,観客の70%を集めたらしい。ということは,残り93%の作品で,30%の観客を分け合わざるを得なかった訳で,これを1本当たりの平均的な興行収入で見ると,10億円以上の収入のあったヒット作とそれ以外の非ヒット作とでは,30倍以上の開きがあったことになる。 こうなると配給 . . . 本文を読む

映画「冷たい熱帯魚」:この世界とあの世界を隔てる壁の薄さに震える

2011年04月24日 20時37分53秒 | 映画(新作レヴュー)
村上春樹の昨年の大ベストセラー「1Q84 BOOK3」は,突き詰めて言うと,片思い同士の男女二人が,20年近い時を隔てて遂に再び手をつなぐことは出来るのか?という,ある意味「君の名は」状態で読者を引っ張る技が冴え渡った「恋愛スリラー」だったと思うのだが,主人公以上にキャラクターが立っていたのが,ヒロインの青豆を追う牛河と,ヒーロー天吾の父親と思われるNHKの集金人だった。 既に意識がない状態で病院 . . . 本文を読む

映画「英国王のスピーチ」:73歳で初のアカデミー賞受賞。次はデヴィッド・サンドラーの生涯を映画に。

2011年04月17日 21時14分57秒 | 映画(新作レヴュー)
今年の映画賞レースを制した「英国王のスピーチ」の走りを競馬に喩えるとしたなら,圧倒的なスプリントで先行したデヴィッド・フィンチャーの傑作「ソーシャル・ネットワーク」から一度は10馬身くらい離されながら,最終コーナーを回ったところでぐいぐいと追い込んで,最後は逆に3馬身離しての圧勝,といったところか。アカデミー賞を筆頭に,数多くの映画賞を獲得したトム・フーパー監督「英国王のスピーチ」が備えていた磐石 . . . 本文を読む

映画「闇の列車,光の旅」:中米の国境を越える列車という装置が惹起する映画的な眩暈

2011年04月11日 23時01分32秒 | 映画(新作レヴュー)
優れた映画は往々にして,模倣でも,明らかなオマージュでないにも拘わらず,先達が残した優れた作品を想起させることがある。日系の監督キャリー・ジョージ=フクナガが撮り上げた「闇の列車,光の旅」も,本作と同様に困窮からの脱出という夢をアメリカに託した「そして,ひと粒のひかり」やブラジルのストリート・ギャングの実態を生々しく描いた「シティ・オブ・ゴッド」,そしてテレンス・マリックの奇跡のような初期作「地獄 . . . 本文を読む

映画「トゥルー・グリット」:「大草原の小さな家」のローラかと思った

2011年04月09日 11時12分51秒 | 映画(新作レヴュー)
東北地方太平洋沖地震から4週間。津波の被害という言葉から想像出来る事態を遙かに超える惨状に呆然とする一方で,復旧に向けて命を繋ぐ作業に励む多くの人々に逆に勇気付けられる日々を過ぎ,非被災地における日常の営みを回復することが何らかの形で復興につながることを信じて拙稿を再開したい。 犠牲となられた方々のご冥福を祈り,併せてご不明の方々の消息の一刻も早い判明と,復興に力を尽くされている方々のご健勝をご祈 . . . 本文を読む