65歳にして,若き日(と言っても計算すると40代か?)の活躍の結果として,血を分けた子供がいたことを知ってしまった考古学者が,家族一丸となってナスカの地上絵の謎に挑んだ冒険譚。と書いてしまうと,全くもって身も蓋もないお話になってしまうのだが,そんなお伽噺をこれまでは血湧き肉躍る活劇に仕立て上げてきたルーカス=スピルバーグの「活動屋」としての足腰は,どうやら本格的なリハビリが必要な状態に陥っているよ . . . 本文を読む
(承前)
まだ全体像がはっきりしないのはテレビ朝日の「四つの嘘」。初回の冒頭で,主役の一人と思われる羽田美智子が死んでしまい,そのナレーションでドラマが進んでいく。他の3人は皆40代前半(41歳か?)で,若い男に入れ込む女,キャリアウーマン(医者)に,専業主婦…。
えっ?これって,米国ABC制作の人気ドラマ「デスパレートな妻たち」そのまんまではないか。ヴェテランの大石静の原作・脚本ということだが . . . 本文を読む
いつ果てるともなく続いた演説が功を奏したのかどうかは分からないが,結局今クールの最高視聴率を叩き出した「CHANGE」が最終回を迎えたことを以て,ようやくTVドラマ界は完全に夏シーズンへと切り替わった。
そのレビューを行う前に,その「CHANGE」について一言触れておきたい。
視聴率的にはV字型で尻上がりに支持を広げていったようだが,始まった段階で一度書いた印象は,残念ながら最終回まで行っても好 . . . 本文を読む
冒頭の「2001年宇宙の旅」で船長が経験するトリップのような色で彩られたワーナー・ブラザーズのマークから,スーザン・サランドンの絶叫で締め括られるラストに到るまで,ウォシャウスキー兄弟が最新のCGを使って現出させようとしたヴィジョンは揺らぐことがない。評論家筋の不評も,日米に共通した不入りも,なんのその。画面から伝わる「私はこれがやりたかったのだ」という意思表明は明確であり,そのラジカルな姿勢はあ . . . 本文を読む
2006年にブリット・アウォーズの功労賞を受賞し,今年の5月にはとうとう50代に突入した(元)怒れる若者のポール・ウェラーが発表した新作は,音を創り出す歓びに溢れた21曲全てが瑞々しい輝きを放っている傑作だ。引退を口走っているという噂もある大御所だが,これは本当に,思いもかけない収穫だった。
ポール・ウェラーと言えば,モッズとパンクの間に橋を架け,ザ・ジャムからザ・スタイル・カウンシル,そしてソ . . . 本文を読む
夫婦という,人間関係の中ではミニマムな単位を,「会話」と「会話をしないこと」と「絵」を使って描いた,橋口亮輔監督の新作は,生きることの意味と支え合うことの素晴らしさを描いて,一頭地を抜いている。
俳優同士の間で交わされた微かな息づかいが,適切に選択された映画技法によって見事にスクリーンに再現され,切なさという言葉では表現しきれない感情が,観るものの胸にこみ上げてくるはずだ。
リリー・フランキーと . . . 本文を読む
話題になった「運命じゃない人」から3年。主役の中村靖日を筆頭に,当時は「一体誰?」って俳優ばかりだったキャストが,本作では大泉洋,佐々木蔵之介,堺雅人に常盤貴子という,今を時めく豪華な顔ぶれに変わったことを除けば,作品の基本構造と面白さは変わらない。人間や人生の深さを登場人物の苦悩に求める人には薦められないが,ものの見方ひとつで現実の認識なんて簡単に変わる,という考えに与する人には,堪えられない面 . . . 本文を読む
いやー,参りました。ライ・クーダーに続いて,米国大衆音楽の礎石とも言える大ヴェテランが発表した新作は,脳天直撃,ついでに腰も痛打の傑作。永年所属していたハイ・レコードからジャズの名門ブルー・ノートに移籍して,これが第3弾となるが,プロデューサー陣に加わったザ・ルーツのドラマーであるクエストラブの貢献に最大級の拍手を送りたい。
最近のアル・グリーンについては,70年代初頭,独特のファルセットを活か . . . 本文を読む