曜日,時間帯に関係なく,どこのテレビ局でも見かけるグルメ番組。これをおじさん二人組の「外国おしゃべり紀行」に絡めて,1本の映画にしてしまう。考えようによっては,「果敢な実験」と言えなくもない試みなのだが,これがまんまと当たった。108分間の上映時間のほとんどを,腹を抱えて笑いっぱなしだった私は,おそらくは実際に行くことはないであろうイタリアの美しい海岸の夕日に,人生の黄昏時に佇む中年男性の悲哀を重 . . . 本文を読む
前作「そこのみにて光輝く」で国内の映画賞を総なめにした上,モントリオール世界映画祭では「最優秀監督賞」にも輝いた呉美保監督の新作。
キネマ旬報ベストテンでも堂々の「第1位」に輝き,まさに絶賛,という評価が相応しい前作だったが,私にとっては社会の底辺を視点を下げてリアルに見つめようとすればするほど,実際の姿とは乖離していくような感触が強くなり,言ってみれば「70年代のATG作品をノスタルジーを込めて . . . 本文を読む
ありとあらゆるジャンルの映画を精力的に撮り続ける堤幸彦のフィルモグラフィーの中で,「完成度」という指標で作品を選ぶとすれば,私は「明日の記憶」を選ぶ。冒頭,広告代理店の優秀な管理職である主人公が「タイタニック」の主演俳優の名前を思い出せなくて煩悶するシーンは,渡辺謙の緻密な演技によって忘れがたい余韻を生み出していた。
ALSと闘病中だったリチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランドが若 . . . 本文を読む
この作品にもワンシーンだけ登場するマルコムxの人生が,スパイク・リーによって先に映画化されてから早23年。ようやくキング牧師の人生も映画化された。
しかし3時間を超える尺で,その人生をまるごと描こうとした「マルコムX」とは異なり,女性の視点でキング牧師(デヴィッド・オイェロウォ)を捉えた「グローリー 明日への行進」は,1965年にアラバマ州セルマから州都のモンゴメリーまでの80km間で行われた平和 . . . 本文を読む