子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2011年TVドラマ冬シーズン・レビューNO.4:「ダークエイジ・ロマン 大聖堂」

2011年02月25日 23時24分48秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
1989年に発表されたケン・フォレットの原作は,2005年にソフトバンク文庫から復刻されてから読んだので,相当遅れてきた読者だったのだが,歴史物にアレルギー反応が出てしまう体質にも拘わらず,ものの見事にはまってしまった。
歴史物といっても膨大な登場人物のうち実在した人物は僅かで,しかも物語の枠組みとして背景に控える役柄を与えられるのみ。波瀾万丈を絵に描いたような物語を動かす登場人物のほとんどがフォレットの想像上の人物ということもあり,色とりどりの老若男女が善悪入り乱れ,権力闘争に戦争に商売にセックスにと,ダイナミックに躍動する全3巻は,正に徹夜本の元祖という感じだった。

あのエネルギー溢れる中世の大河ロマンが,リドリー&トニー・スコット兄弟をエグゼクティブ・プロデューサーに迎えて,40億円の制作費を注ぎ込んだ8時間弱のTVドラマとして日本の茶の間に舞い降りることとなった。幾らで買ってきたのかは知らないが,NHK(村上春樹「1Q84 BOOK3」流の標記をすれば「エネーチケー」)も,やる時はやるという感じだ。

スコット兄弟は8時間という放映時間に魅力を感じて,映画ではなく連続TVドラマというフォーマットを選んだようだが,第3回までを見る限り,それでもかなり端折って走っている,という印象は免れない。あの大部の原作の面白さを再現するためには,エピソードのバランスこそが重要という認識は正しいが,政治と宗教が複雑に絡み合う一方で,庶民の社会には猥雑な生命力が満ちていたと思しき中世(12世紀前半~中盤)独自の空気を嗅げるのではないかと期待した視聴者にとっては,(今のところは)ミスフィットだという判断を下されても致し方ないような作りになっている。

それでもCGに慣れた目にこの物量感は新鮮だ。シャーリングに蠢く庶民の喧噪,第2話におけるキングズブリッジ修道院大聖堂の炎上,そして第3話の石切場の決闘。フォレットの文章から想像していた幾つものパノラマが,ハイヴィジョンの細やかな陰影を伴って再現されるのを味わうという経験は実に新鮮で,思った以上の高揚感を楽しめている。
戦闘場面における暴力描写や原作では重要な要素となっている性描写も,NHKの放送コードを考えれば健闘していると言えるかもしれない(そうでもないという人がいても異論は唱えないが)。
ちょっとトム・ハンクス似のぽっちゃりさんが演じているフィリップ院長が,唯一イメージとはかなり違うのだが,あとはなるほどと肯けるキャスティングも良い線を行っている。権謀術数渦巻く後半の展開にも十分期待が持てる。

今クールは日本のドラマに関していえば歴史に残る不作期なのだが,本作と,再放送を初めて観て毎週卒倒しそうな程感動している「ザ・ホワイトハウス」を観ながら,4月の「Glee」を待つ2月。


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