映画とライフデザイン

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映画「人生劇場 飛車角」 鶴田浩二

2014-04-06 10:29:43 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「人生劇場 飛車角」は尾崎士郎の「人生劇場 残侠編」に出てくる飛車角をクローズアップした1963年の東映映画だ。
主演は東映に移籍間もない鶴田浩二、脇を高倉健が固める。
映画の構想はのちの東映社長岡田茂で、この映画を起点として、すでに行き詰っていた「時代劇の東映」から大きく路線変更していくのである。チャンバラ映画が任侠道の殺陣に代わる。

なんせ始まりが村田英雄の名曲「人生劇場」で始まるのである。これが超渋い。
「や~ると思えば、どこま~でやるさ~」思わず心臓がドキドキしてしまう。村田英雄は自ら出演している。当然鶴田浩二の男っぷりが映画の見どころなんだけど、佐久間良子の哀愁に満ちた姿も美しいし、高倉健の若々しさも好感が持てる。何よりドキッとさせるのが月形龍之介である。東映では「水戸黄門」の黄門さまといった印象が強いが、黒澤明の初期作品「姿三四郎」でも見せる凄味ある表情が円熟味を見せる。彼がこの映画の一番の見どころではないだろうか。

横浜の遊女だったおとよ(佐久間良子)と逃げのびて来た飛車角こと小山角太郎(鶴田浩二)は、小金親分の計らいで深川の裏町に住むことになった。そんなある日、小金一家と文徳組は喧嘩になった。一宿一飯の義理を持つ飛車角は、宮川健(高倉健)と熊吉を連れて文徳一家に殴りこんだ。そこで飛車角は文徳を刺し殺し、吉良常(月形龍之介)と名のる老人に救われた。吉良常は一目みて飛車角に惚れこんだ。
小金の弟分奈良平(水島道太郎)の計らいでおとよと逢った飛車角は、警察に自首、五年の刑で前橋刑務所に服することになった。飛車角の帰りを待つおとよを、奈良平は深川不動の夏祭に誘った。その二人の目の前で小金親分(加藤嘉)が何者かに殺された。奈良平の冷たい笑いにおとよは総てを察した。おとよは逃げた。そのおとよを宮川が救った。そこで二人は同じような身の上であることを知って自然に結ばれた。だが、宮川はおとよが飛車角の女と知って愕然とした。そして悩んだ。
そんな頃、恩赦で飛車角が刑務所を出た。吉良常一人が出迎えに出ていて、おとよと宮川のことを飛車角につげた。飛車角は男らしくおとよをあきらめ、吉良常の勧めるまま吉良へ足を運んだ。吉良で青成瓢吉(梅宮辰夫)と知り会った飛車角は、吉良で骨を埋めようと決心するのだった。吉良常が娘のように可愛がっている料理屋よしだやの娘お千代(本間千代子)も、そうした飛車角を慕うようになった。そうした飛車角のところに宮川とおとよが詫びを入れに来た。飛車角はどうするのか。。。

佐久間良子は何度も「行かないで!自分と一緒に逃げよう」というが、男は復讐のための決闘に向かう。義理と人情の世界である。果たしてこの映画から51年たって、こんな男っているだろうか?終戦から18年たったこのころは、まだ女よりも義理という世界が重んじられていたのであろうか?一方この時代は、左翼思想に基づく裏切りに次ぐ裏切りの世界もある。政治の世界なんかは寝業師だらけだ。義理と人情っていうのはすばらしいなあと思う人物もいたのか?自分はもう生まれていたが、このあたりはわからない。
でもヒットしたのは事実だ。これがヒットしなければ、鶴田浩二、高倉健の任侠物や「仁義なき戦い」シリーズは生まれていなかったかもしれない。

佐久間良子が日経新聞に「私の履歴書」を連載している時に、鶴田浩二との秘密の恋を告白していた。有馬稲子も名前こそださねど市川監督との関係を告白したのと同じである。なかなかの話であった。公然の秘密であったのかもしれないが、現代日本の知識層が誰もが読む連載の中ではドキドキさせるものであった。まさに付き合っている時の2人の絡みなんで、妙に真実に迫るものがある。
しかも、暴漢から守ってくれた高倉健と関係を持ってしまうが、高倉が自分の情夫の元の盟友と知り困惑する場面もなかなかリアルである。このあたりの佐久間良子の若き日の女っぷりもいい感じに映る。

飛車角を支える吉良常を演じる月形龍之介の存在感が凄い。代表作「水戸黄門」シリーズはすでに撮り終えている。黄門さんのパフォーマンスでなんとも言えない貫禄、落ち着きを得た月形龍之介が重厚感ある風格を見せる。極道の道でも一目を置かれる男ってこんな感じなのではないか?軽くなく、逆に黒澤明「姿三四郎」で見せる荒くれ者的な表情のように残虐的イメージもない。映画をしっかり引き締めている。

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