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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「愛に乱暴」江口のりこ

2024-08-30 21:27:14 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「愛に乱暴」を映画館で観てきました。


映画「愛に乱暴」吉田修一の同名原作を江口のりこ主演で映画化したヒューマンドラマである。原作は未読。江口のりこのファンで最近では「あまろっく」「ブルーピリオド」「お母さんが一緒」と毎回出演作は欠かさず観ている。予告編から江口のりこが不穏な何かに巻き込まれている様子が伺える。とりあえず、映画館に向かう。

夫の母親(風吹ジュン)が住む母屋の離れに夫(小泉孝太郎)と住む桃子(江口のりこ)は前向きな専業主婦で子どもはいない。石鹸教室の講師もしている。ただ、近所で不審火が続いたり、かわいがっている猫がいなくなったりといやなことが続く。夫に対して懸命に愛を注いでいるのに、あまり相手にしてくれない。どうも夫は浮気をしているようだ。浮気相手のXを探り出していた。夫から彼女と一緒に会ってもらえないかと告白されて動揺する。


大好きな江口のりこの演技は上々でも、映画としては期待ハズレだ。
子どものいない夫婦の夫が浮気して、彼女に赤ちゃんができて別れてくれと言われ妻が奇怪な行動をとるという話だ。吉田修一の小説なので、何かしら凝ったストーリーなのかと予測したけれども、最終的には「もう終わっちゃうの?」という感じであっけなく終わってしまう。残念ながら物足りなかった。


主人公桃子(江口のりこ)は時おりイヤミっぽい言い方をする夫の母親(風吹ジュン)がいても、何とか今の家庭を大事にしようと懸命に頑張る女性だ。リフォームをしようと言ったり、凝った食事を出そうとしたり、寝ている時に夜の営みに誘おうとしても夫はそっけない。そして今度は香港に出張だという。夫が浮気しているのはつかんでいた。相手の女性がXをやっていて、ご丁寧に毎日のように浮気の進行状況をつぶやいていて桃子は見ていた。それでもなんとかできると頑張っていた。でもいよいよご対面だ。

子どもができたことを謝りたいと3人で会うなんてことあるかしらと思うけど、対面のシーンがある。絶対別れませんと言っても、相手は妊娠5ヶ月で母子手帳もある。それから精神的におかしくなり、奇怪な行動をとるようになるのだ。


部屋の畳の下にある構造用合板を電気ノコギリで切っていく。床下の土が露わになるのだ。しかも、そこで寝そべる。声をかけようとすると、私を変人扱いしないでくれと怒る。ただ、江口のりこの奇怪な行動は一つの見どころで、シャワーシーンでは鏡越しに江口のりこの乳輪が見えてしまう。やる気満々なのは実感するけど、これだけのストーリーでは残念としかいいようにない。
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映画「ラストマイル」 満島ひかり&岡田将生

2024-08-25 16:18:54 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ラストマイル」を映画館で観てきました。


映画「ラストマイル」は通販サイトの物流倉庫から出荷された荷物の爆発事件を描く満島ひかりと岡田将生主演の作品。TV中心で活躍する演出家の塚原あゆ子が監督を務める。人気脚本家の野木亜紀子とのコンビでTBSでTVドラマを製作している。コンビのTV番組は見ていない。全面的にTBSが製作に関わっているのが強調されている。「ラストマイル」とは「顧客に荷物を届ける最後の区間」を示す。

11月米国資本の大手通販サイト「デイリーファースト」の西武蔵野にある物流倉庫のセンター長に就いたばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と一緒に仕事をすることになった。サイト最大のイベント「ブラックフライデー」の準備をしている。ところが、この物流倉庫から配送された段ボール箱に入ったデイリーフォンが爆発して受取人が死亡する事件が発生する。

すぐさま警察から連絡が来て、倉庫内を調べようとするが、エレナは売り上げに影響するのでラインは止められない。厳重なセキュリティで倉庫に入室していると拒否して、配送会社の羊急便に責任を押し付ける。羊急便の売上には「デイリーファースト」のウェイトが高かった。配送センター責任者(阿部サダヲ)は慌てると同時に下請けの零細配送業者も当惑する。
その後も爆発事件が続き、犯人を探るために倉庫の探索が避けられない状況になる。


想像以上におもしろかった。
単なるパニック映画なのかと一瞬思い、観るのを迷ったが観て正解通販サイトや物流問題とまさに我々の生活に直結するアップデートな問題を取り扱っている。経済小説を読むような肌合いだ。

セリフを聞いて「うーんなるほど」と相槌を打つ場面が多い。爆弾を仕掛けた犯人も最初から絞らせないミステリー的要素もあり名脚本家野木亜紀子女史の腕前に思わずうなる。満島ひかりと岡田将生のコンビのセリフはいかにも現代若手社員らしさがにじみ出ている。2人ともうまい。通販サイトの幹部ディーンフジオカも服装も含めて最近の若手エリートの雰囲気をにじみ出す。

加えて、脇役にまわった俳優陣に主演級が揃いあまりに豪華なので驚く。綾野剛、星野源、石原さとみ、井浦新、松重豊、麻生久美子そして薬師丸ひろ子と続くといったいどうしたの?と思う。自分は見ていないが、『アンナチュラル』(2018)と『MIU404』(2020)の出演者たちだと映画を見終わった後わかる。通販サイト、物流に関係ない2つのドラマを映画ストーリーに組み合わせた巧みさもお見事だ。


⒈登場人物のキャラクター
登場人物が多いのにそんなに混乱しない。TVドラマ出演組の主演級俳優たちも最低限のセリフにとどめている。一方でメインキャストのキャラクターには深入りする。

満島ひかり演じる舟渡エリカは米国に本社がある大手通販サイトの物流倉庫のセンター長だ。異動で着任してきたばかりなのに、早速仕切っている。自分をエリカと呼べという。現代風女性上司ってこんな感じなのかという発言が多い。カスタマーセントリックと言いながら自社利益確保のため配送業者など下請けへの締め付けも強い。

米国本社の株価への影響をまず第一に考えて、ここで物流ラインが止まったらまずいと警察の捜査を妨げる。なかなか家に帰らない。昭和の男性企業戦士と変わらない。いやなやつだと思わせるが、映画の最後までそうだったわけではない。「川の底からこんにちは」から満島ひかりを追いかけるが、今回は良かった。

岡田将生は満島ひかりが来る前からこの物流センターに勤務するマネジャーだ。満島ひかりから仕事のディテールの教えを請う。中途採用組で満島ひかりほどドライではない。もともとハッカーだった過去を持ち、IT系の知識を持つ。この物流センターには正社員は9名しかおらず、数百人の派遣社員に作業させている。正社員は特権階級と言えよう。外資系だけでなく、社労費負担の軽減のために利益を大きく出している会社には多いパターンである。


⒉外資系通販サイトとロケ地
この映画はロケハンに成功している。米国本社の大手通販サイトといえば誰もがアマゾンを想像するし、意識しているのは間違いない。本体からの圧力が強いのは実際はどうなんだろう?ブランド名が違うけど、黒とオレンジのブランドカラーが似ている。

まさかアマゾンに倉庫ではないでしょうと思いつつ、この映画ロケ地はどこだろう?と思っていたら検索して機械工具商社「トラスコ中山」のサイトにロケ地として協力したニュースリリースがあった。埼玉の幸手と群馬の伊勢崎にあるという。ネットを見たらまさに映画に出てくる倉庫だ。いいとこ見つかったね!と言ってあげたい。

⒊物流問題
今やまともな会社であれば、業種問わず物流問題で頭を悩ませるはずだ。運転手が確保できるのか?物流倉庫をどの場所に置くか?受けてくれる配送業者がいるのか?品目あたり単価いくらで合意するか?政府のお達しもあり、労働時間問題とも直結する。この映画ではまさにアップデートな問題にも関わりを持つ。

火野正平と宇野祥平が2人でやっている零細の業務委託系の運送屋もクローズアップする。通販サイトで注文すると、必ずしも大手の配送者が配達に来るだけではないのは自分も承知している。映画のセリフでは一個あたり150円の単価で引き受けているのだ。爆弾が入っているから受け取れないとなると金にならない。ガソリン代その他を加味して利益出るのかなと思ってしまう。

ところが、こういう配送業者がいないとネット通販全盛の現代の生活は成り立たない。困ったものだ。なつかしいアメリカの「ヴェンチュラハイウェイ」をバックで流す。2人が運転する軽自動車に妙にお似合いだ。



⒋野木亜紀子
TVドラマに縁がなくなった自分でも「逃げるは恥だが役に立つ」は好きだ。他のTV番組は見ていない。映画では「罪の声」「カラオケ行こ」は観ている。両方とも好感をもっている。でもその2作と比較してこの映画は格段にいい脚本だ。通販会社や物流会社の関係者にそれなりの取材をしないと書けないと思う。セリフに不自然さがない。

爆弾仕掛けた犯人探しというこの映画の主題に関しても、ここでは言えないが数人にあやしいと思わせる行動をさせたり、セリフをいわせたりして我々の予測を迷わせようとする。うまい!若手エリート社員と言われる面々のセリフがいかにもそれらしく生意気なのが現実的に聞こえる。


意識的だと思うが、映画内の配役でそれぞれの幹部に女性を揃えた。主演の物流倉庫センター長だけでなく、米国本社も女性幹部で、麻生久美子演じる警察の署長も女性である。もちろん監督、脚本に加えてプロデューサーも女性である。女性比率が高い作品だけど、配送関係者の男性の苦労にも言及を怠らずフェミニスト的な匂いは感じられない。いずれにしても次回作も楽しみだ。
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映画「お母さんが一緒」 江口のりこ&古川琴音&橋口亮輔

2024-07-20 08:33:02 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「お母さんが一緒」を映画館で観てきました。


映画「お母さんが一緒」橋口亮輔監督がキネマ旬報ベストテン1位の「恋人たち」以来9年ぶりに放つ新作である。ずいぶんと長い間が空いたものだ。親孝行で連れてきた面倒くさい母親の傍らで罵り合う三姉妹の姿を描く。大好きな江口のりこ「あまろっく」に続く主演というだけで気になり、最近でも「言えない秘密」でキャリアを広げている古川琴音の共演というのも惹かれる。

もともとペヤンヌマキによる舞台劇だった作品を橋口亮輔監督が脚色した。個人的に室内劇のような映画は苦手で、それだけが気になっていた。でも、観終わるとその懸念は遠ざかる。旅館という空間を使い切り閉鎖感はない母親は出てこない。めんどくさい人というだけだ。三姉妹のトーク炸裂を要旨にまとめずらいので作品情報を引用する。

親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。長女・弥生(江口のりこ)は美人姉妹といわれる妹たちにコンプレックスを持ち、次女・愛美(内田慈)は優等生の長女と比べられてきたせいで自分の能力を発揮できなかったと心の底で恨んでいる。そんな二人を冷めた目で観察する三女・清美(古川琴音)。三姉妹に共通しているのは、「母親みたいな人生を送りたくない」ということ。

母親の誕生日をお祝いしようと、三姉妹は夕食の席で花やケーキを準備していた。母親へのプレゼントとして長女の弥生は高価なストールを、次女の愛美は得意の歌を用意し、三女・清美は姉たちにも内緒にしていた彼氏・タカヒロ(青山フォール勝ち)との結婚をサプライズで発表すべくタカヒロ本人を紹介するつもりだったが。(作品情報 引用)


女のイヤな面が炸裂する演技巧者による短編のような小品だ。男性が観てもおもしろい。
もともとの舞台劇は知らない。ただ、原作と配役を見比べて、配役に合わせたキャラクター設定になるように橋口亮輔監督が脚色している印象をうける。このあたりがうまく、コメディ的要素が強くなる。笑える場面は多い。サプライズも少しづつ織り交ぜる。

母の誕生祝いで、温泉旅館に来た三姉妹。江口のりこは40歳、内田慈は35歳、古川琴音は29歳の設定だ。いずれも独身だ。旅館に着くやいなや、何でこの旅館を選んだのかと長女と次女で面倒な罵り合いが始まる。


長女の江口の性格はひねくれていて、次女を非難する。会社でいちばん嫌われるタイプのいかにもハイミス的女だ。母親はもっと面倒くさい女らしい。ところが、三女の突然の結婚宣言を機に場が一変する。おおらかで普通の若い女性で、結婚に希望を持っている。チャンスは何度かあっても、結婚に至らなかった上の2人は素直に喜べない。上の2人は男運が悪かったようだ。

普通に家庭を持っている夫なら、この手の悪口は聞き慣れているかもしれないが、結婚したがらないと言われる若い男性は映画を観て女性に失望してしまうかもしれない。長女と次女の言動も常に矛盾している。


三女の結婚相手が妙にさっぱりとして好男子なのも対照的だ。夜にはこの付き合いが終わってしまうのではないかという言い合いがあって、三女が落胆してしまう。それなのに翌日酒も飲んでいないのに結婚相手が前夜のことは覚えていないというアッケラカンとした場面には能天気で笑える。


40代にさしかかる独身という役をやらせると、江口のりこは天下一品だ。うまいなあとうなってしまう。江口のりこは中卒でこの道に入った女性なのに、「あまろっく」では京大出で会社にリストラされた女性で、この映画でもいい大学へ入って就職してという設定だ。何でもできてしまうところに自分のキャラを確立した強みを感じる。

旅館の送迎車が佐賀ナンバーで、三女の結婚相手のクルマが長崎ナンバーだ。しらべると原作のペヤンヌマキ長崎県出身のようだ。言葉は自分には博多弁にきこえるけど長崎弁なんだろう。でも、ロケ地の温泉を調べるとなんと山梨だ。貸切の温泉旅館でおもしろい映画をつくったものだ。
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映画「ルックバック」河合優実&吉田美月喜

2024-07-11 06:46:44 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ルックバック」を映画館で観てきました。


アニメ映画「ルックバック」藤本タツキの漫画の映画化作品である。監督脚本は押山清高。他の作品と違い料金1700円均一である。アニメ系はあまり観ない自分も珍しいので気になる。先日観た「先生の白い嘘」とは好対照に評価が高い。何か特殊な仕掛けでもあるのかと勘ぐるが、入り口でコンパクトな漫画本を渡される。映画を観てからのぞくと、登場人物の名前は違えどほぼ映画の内容だった。

漫画家を目指す少女たちが主人公とわかっている以外は先入観なく映画に見入る。「ハケンアニメ」「パクマン」のような漫画やアニメでの名声を得ようと奮闘する若者の物語は好きで相性がいい。人気急上昇中の河合優実が主人公の吹き替えを担当する。


小学校4年生の藤野(河合優実)は学年新聞に4コマ漫画を発表して好評だった。ある時、先生から今度隣のクラスの京本(吉田美月喜)に一部掲載場所を譲ってくれないかと頼まれる。京本は不登校の女の子だった。不登校の子に絵が描けるかと藤野が思っていると、京本が描いた絵の精度の高さに驚く。藤野は一気にやる気をなくしてしまい連載をやめる。

卒業式の日、藤野は先生から京本の卒業証書を自宅まで持っていくように頼まれる。同じ学年新聞で投稿した仲ではないかと言われ渋々自宅に行く。呼び出しに出ないので家に入り込むと凄まじい量のスケッチブックがあるのに驚く。証書を置いて外に出ると、藤野に気づいた京本が慌てて出てくる。そして、自分は藤野の4コマ漫画のファンだったと告白する。意気投合して雑誌の賞を目指そうと2人はコンビを組むようになる。


長い期間を描く作品だけど、短編小説のような味わいだ。
目線を小学生から高校生のレベルにグイッと下げてみると、伝わるものが多々ある。ただ、一般の評価はちょっと過大評価だと感じる。

2人がコンビを組むようになる序盤戦から中盤にかけての盛り上がりには高揚感に近いものを感じる。でも、映画の肝と言うべき究極の場面設定だけに焦点がいって強引さを感じる。藤野の京本に対する態度が偉そうに感じて自分は好きになれない。逆に引きこもりだった京本は田舎弁を話していて素朴さに好感を持つ。応援したくなる。吹き替えの吉田美月喜が良かった。不用意に長い映画が多い最近の傾向には嫌気もさすのに、これは1時間にまとめる。それはいいけど、少しネタ不足で終わっているのかなと感じる。


この映画を観ても泣けなかった。究極の場面を唐突に感じてしまう。出版社に認められて連載をするようになった後でもっともっと逸話が作れたのかもしれない。もし2人が協力して漫画を描いた高校時代あたりの逸話がもっとあれば、京本に感情移入して自分も胸に沁みたのかもしれない。そんな感じを持つ。

と言いながら、来場者プレゼントの本を読み返すと、藤野の空想通りになって欲しかったとツイツイ気持ちが高ぶる。われながら支離滅裂だ。1700円でもプレゼント本付きで安く感じる。
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映画「先生の白い嘘」奈緒

2024-07-07 17:20:46 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「先生の白い嘘」を映画館で観てきました。


映画「先生の白い嘘」鳥飼茜の同名漫画を奈緒主演で三木康一郎監督が映画化した作品。原作は未読。長身のモデル体型の美女というより普通の女の子が主演を張る作品の方が直近で目立つ。どこにでもいる系女子の杉咲花、古川琴音と続き奈緒主演のこの映画に着目する。予告編で奈緒が教員だということがわかるが、事前情報なく映画館に向かう。日本映画のドラマは最近貧困で気の毒系ばかりでどうかと思っていたが、久々に若者の性に着目する作品。うわさ通り奈緒の熱演が際立つ。

高校の国語教師の美鈴(奈緒)は親友の美奈子(三吉彩花)より早藤(風間俊介)と婚約した旨伝えられる。美鈴は6年前早藤に強引に犯されてから、よからぬ関係を無理やり強要されてきた。直近でも早藤との縁が切れず困っていた。その頃美鈴が担任をもつクラスの男子高校生新妻(猪狩)に年上女性とホテルに入ったといううわさがクラス内で広まる。個別に真相を確かめると、その話は真実だと聞かされる。美鈴は動揺してしまい隠していた本音を吐く。それをきっかけに新妻が美鈴に急接近するようになる。


予想より見応えのある作品だった。
途中までは往年の日活ポルノを思わせるストーリーだ。普段まじめな女教師の乱れなんてストーリーは多かった。女教師と生徒のイケナイ関係なんてAVにもありがちだ。ただ、この作品は15禁であっても濡れ場目当ての作品ではなく、もう一歩踏み込む。踏み込んだ先は面倒な展開だ。少し違うが、「こちらあみ子」を連想した。

何より奈緒の好演がすばらしい。「告白(コンフェクション)」では出番が少なかったのでなおさら役柄への没頭を感じる。友人の彼氏との性的付き合いから抜けられない女で、いつでも逃げれば良いのに抜けない。イヤでイヤで仕方ない男にハマる世界は韓国のキム・ギドク監督が得意とした世界だ。相手の彼女とは性的に何もしていないと聞き、自分の方が性的に優位に立っている気持ちがあるのだろうか?映画では露骨に見せないが、そんな気持ちをもっている気もする。でも最終はキレる


一方で映画内での憎まれ役風間俊介が、映画を観ている自分にもむかつかせるイヤな男を演じる。ここまで一般人で性格破壊の男はいない。秘密を握ったヤクザのような威嚇をみせる。しかも、粗暴でラストに向けてはやりすぎの展開だ。演じている風間も精神的にこの役はしんどかったのではないか。よくやったと思う。

三吉彩花「ダンスウイズミー」での躍動感ある好演が光る。美形なんだけど、背も高すぎな上にキャラが中途半端で主役をやらせてみる題材がないのかもしれない。今回は、随分と頑張っている印象を持つ。夜の営みをずっと避けてきた彼氏が急にやる気になって交わる演技では胸をもまれる。ブラジャーを取らなかったのは残念。ここで脱いだら良い役柄がもっと回ってくるのではと観ながら思っていた。


それにしても、この作品映画comの評価は3点未満と最低。これもビックリだ。意地悪でもされているのでは?どうも中途半端に性描写がある物語の一般評価が最近きびしい印象をうける。日本映画で若手が誰も脱がなくなるんじゃないかという懸念を最近持つ。
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映画「朽ちないサクラ」 杉咲花

2024-06-23 21:41:56 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「朽ちないサクラ」を映画館で観てきました。


映画「朽ちないサクラ」は主演作品が続く杉咲花が警察職員を演じるミステリーである。「狐狼の血」などのミステリー作家柚月裕子の原作の映画化で監督は原廣利だ。主人公の子どもの頃からの親友だった地元紙の記者が殺された謎を警察官でない警察職員の杉咲花が追うストーリーだ。昨年の「市子」での杉咲花の活躍は記憶に新しい。今回も期待する。

愛知県の女子大生が、ストーカー被害の末に神社の長男に殺害された。警察が女子大学生からの被害届の受理を先延ばしにし、慰安旅行に行っていたことが地元紙にスクープされる。県謦広報広聴課の森口泉(杉咲花)は、親友の新聞記者・津村千佳が約束を破って記事 にしたのではないかと疑っていた。ところが、その千佳が1週間後に変死体で発見される。泉は上司(安田顕)に訴えて真相究明に乗り出す。


警察の暗部に迫る原作者柚月裕子の大胆な発想の筋立てである。
傑作とまでは思わないが、杉咲花と安田顕がうまい演技を見せる。最後に向けての展開はこうもっていくのかと感心させられる。

何で当事者でない女性記者が殺されなければならないの?と途中まで思っていた。「警察の不祥事」「警察の公安部署」「オウム真理教を思わせる新興宗教」といったキーワードを基点として、ストーリーを動かす。世間で起きている事件を巧みに組み合わせている印象をもつ。


映画ポスターは桜の花の下に映る杉咲花だが、この映画におけるサクラは「公安」のことを指す。自分は警察内部事情のことはあまり詳しくないが、警察内における公安の立場に踏み込む。公安は起きた事件について捜査するわけでなく、事前に予防するべく秘密裏に怪しい組織などを内偵するのだ。捜査部門から秘密資料の要求があっても公安は提供しない。そんな縄張り争いにも注目する。

「狐狼の血」の時は、まだ原作者の柚月裕子に注目していなかった。「県警対組織暴力」に出てくる菅原文太のようなスレスレ刑事や「トレーニングデイ」デンゼルワシントンが演じた刑事を連想した。ここでも公安の論理をクローズアップさせる筋立てが巧みで、柚月裕子の作品も読んでみたいと思わせる。履歴を見ると、山形県在住で警察とは無関係なようだけど、どこで警察内部事情を仕入れたんだろう。ここでは元公安の部署にいた安田顕が柚月裕子の思いを渋い演技で対応する。いい味を出している。


杉咲花は割とどこにでもいそうな女の子である。「市子」での好演で起用が増えると思ったけど、まだまだ続きそうだ。最後に向けての安田顕とのやりとりは実に緊迫感があった。貫禄すら感じる。
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映画「違国日記」 新垣結衣

2024-06-09 05:36:10 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「違国日記」を映画館で観てきました。


映画「違国日記」ヤマシタトモコの漫画の原作を映画化した新垣結衣主演の新作である。監督は瀬田なつきで予告編ではたびたび見ていた。新垣結衣が気になる。身寄りのない少女を女性小説家が引き取るストーリーだとわかった。鑑賞候補の1つであったが,今週の日本経済新聞の映画評で5つ星をつけて優先となる。何か違うのかなと感じて、映画館に向かってしまう。

小説家の高代槙生(新垣結衣)の姉夫婦が交通事故で亡くなる。そして1人娘の朝(早瀬憩)が残された。槙生は葬儀の直会で,周囲が朝の扱いに無責任な発言をしているのに憤慨して,思わず朝を引き取ると言ってしまう。姉妹の仲は良くなかったのにである。姪とは初対面だった。


槙生は35歳の独身、結婚する気はなく人見知りする気質である。整理が苦手で自宅は散らかり放題だ。そこに中学3年生だった朝が同居する。朝は自分の母親を好きになってもらおうと槙生に働きかけるが、朝は聞く耳を持たない。几帳面で汚い部屋をきれいに掃除する。ただ、中学の卒業式に欠席をする気難しい少女だ。その後,高校に進学して軽音楽部に入部する。周囲との関係は良好だ。槙生は自分の母から日記を預かるが高校卒業時に渡してくれと書いてあるので,そのままにしていた。それで一悶着起きる。

期待ほど質が高いとは思えなかった。普通の映画である。
女性向けのコミックの漫画なので,ストーリー展開の起伏よりも、女性的な喜怒哀楽の感情がポイントのような気がする。男性の理解を超越する部分がいくつかある。新垣結衣を見に行く男性を除いては女性向きの映画であろう。

映画を見ていて、なんでこんなふうになるの?こんなことで何で腹を立てるの?そんな場面が実に多い。何で怒って卒業式に出ないのか意味不明?自分が変と思ったことも女性なら共感するのかもしれない。自分にはなじみづらい。5点の評価はどんなに甘くつけても3.5点がやっとの評価の映画と感じる。


2人が生活していく上では,そんなにいろんな出来事が起きるわけはない。そこで,朝が通う学校内での出来事をストーリーに混ぜ合わせる。朝の友人のエピソードも多く、高校生日記的な話題をいくつか乱雑に映画に詰め込む。ロングランの漫画だったので、時間を経るごとに印象的になるであろうエピソードが単発的に感じられる。流れがわるい。まさしくボトルネックだ。話が凡長になるだけに過ぎない。

ただ、新垣結衣も同居する高校生を演じた少女早瀬憩も悪くはない。新垣結衣もいつもと違う。身の回りの整頓もできないだらしない女として描かれる。彼女が書く小説の内容には触れていない。片手落ちだな。新垣結衣を相手に堂々と主演を張った新人早瀬憩の出番は多い。美形ではない。長身の新垣結衣の隣では女の子の普通の上背だ。でもどこでもいそうな普通ぽさに好感が持てるので、今後起用が増えるだろう。演技力は評価できる。


あとこれだけは良かったのは,ピアノ基調の音楽である。主人公2人の振る舞いに合わせてアドリブのように美しいピアノの音色が鳴る。観ている我々の感情をやさしく包み込む映像を見ながら的確に音色を考えたと思われ,これは適切だった。
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映画「あんのこと」 河合優実&佐藤二朗

2024-06-07 21:15:02 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「あんのこと」 を映画館で観てきました。


映画「あんのこと」河合優実が社会の底辺で彷徨う21歳の女性を演じるシリアスドラマである。「ビジランテ」など社会派の作品が多い入江悠監督作品で、佐藤二朗、稲垣吾郎が脇にまわる。「愛なのに」「少女は卒業しない」などでこのブログでずっと追っている河合優実がTV番組「不適切にもほどがある」で映画ファン以外にもブレイクした。テレビ番組が始まりしばらくして周囲の評判で見始めたが実に面白い。河合優実は1986年のツッパリ女子高校生を演じている。日本映画は、相変わらず辛気くさい題材ばかりだ。貧困家庭で育った少女のドツボぶりをここでも描いている。

21歳の主人公・杏(河合優実)は、幼い頃から母親(河井青葉)に暴力を振るわれ、学校にも行っていない。十代半ばから売春を強いられてきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅刑事(佐藤二朗)と出会う。多々羅は杏になんの見返りも求めず就職を支援し、取材を進める週刊誌記者の桐野(稲垣吾郎)も刑事とともに杏を支えていた。新型コロナウイルスが蔓延しはじめて、杏が通う職場や学校の人の出入りが制限されて、居場所が失われてしまう。


実話に基づく社会の底辺を彷徨う少女があまりに悲惨な物語である。
いきなり,河合優実赤羽の昼飲み屋街こと1番街を早朝に歩いている映像が映し出される。いつも見る場所だと思った後で,茶髪の河合優実が覚せい剤を打つ男とラブホテルでカネの押し問答をしているシーンに移り変わる。小学校でスーパーの万引きを始めて、小学校で実質中退。漢字も書けない。12歳で男に抱かれ, 16歳で売春を始めるそんな生き方をしている少女がまだいるのだ。実際のモデルがいるとすると、悲しい。

母と祖母と暮らす団地は固有名詞こそ出ないが、赤羽の公営団地だ。親は金を稼がないと、娘に激しく暴力をふるい,自分は男と飲んだくれている。母と娘の関係は昨年見た「市子」と類似している。どうにもならない母親役の河井青葉が好演だ。ひたすら河合優実演じる娘を蹴り、髪を持って振り回す。もともとモデル系の美形で「私の男」や濱口竜介監督「偶然と想像」にも出ている女優だけど、団地のゴミ屋敷状態の部屋に住む出来のわるい女を巧みにこなす。


刑事役の佐藤二朗が適役だ。覚せい剤と売春でどうにもならない底辺の生活をしている主人公杏を救う面倒見の良い刑事だ。介護施設の仕事を用意して、同じようにクスリに毒された人たちのコミュニティも紹介する。DVでキツイ思いをしている人たちが無料で住む住居も斡旋する。1人の刑事以上の仕事をしている善人かと思っていたら、予想もしない展開に進み事前情報がないまま観た自分は驚く。


途中からは河合優実演じる主人公にとっては、まさに次から次へと災難が訪れる。コロナ禍に突入して,通っている介護施設では、非正規の社員は自宅待機になり,通っている夜間学校は休校になる。せっかく作り上げてきた人とのつながりが全てなくなってしまう。しかも,同じ共同住宅に住んでいる隣人の女性が幼い子供を突然主人公に預ける。そんな時助けてくれた刑事も目の前にいない。住所を伝えていないのに祖母の具合が悪いと母親が突然来て引き戻される。

この映画は主人公をとことん貶める映画だ。光が差さない映画としか言いようにない。
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映画「からかい上手の高木さん」永野芽郁&今泉力哉

2024-06-03 21:22:40 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「からかい上手の高木さん」を映画館で観てきました。


映画「からかい上手の高木さん」は、山本崇一朗の漫画を今泉力哉監督が永野芽耶主演で映画化した作品。今回初めて知った作品でもちろん原作は未読。何より今泉力哉監督の新作だとすぐ観に行かなければならない。前作「アンダーカレント」は、脚本にも恵まれた。真木よう子の好演で2023年公開作品の中でも、自分が好きな1つである。予告編を見て、海辺の街にたたずむ永野芽郁がいい感じに見えた。

島の中学校で2年生の担任を受け持つ西片(高橋文哉)は,教頭(江口洋介)から教育実習生の面倒を見てくれと依頼をされる。ちょうどその時昔の同級生の高木さん(永野芽郁)から電話をもらっていた。すると、学校内で3週間教育実習を受け持つ美術教員として高木さんに出会い西片は驚く。

中学の時同級生だった高木さんに西片はいつもからかわれていた。ところが、高木さんはパリに行ってしまう。密かに恋心を抱いていた西片は久々の再会に喜ぶが、自分の気持ちは胸の内にとどめていた。


永野芽郁はかわいくて,バックに映る小豆島の風景はきれいだった。ただ、ダラダラ感が強く残念だった。

今泉力哉監督の作品を見るときは,超絶長回しは覚悟しなければならない。それでも,前作「アンダーカレント」はいつもよりも脚本がまとまっていて、ダラダラ感が少なかった気がする。正直今回はちょっと間延びしすぎた

「愛はなんだ」では江口のり子の使い方がうまくストーリーが引き締まったが,「街の上で」は下北沢の若者を描くのに、気にくわない登場人物も多くダラダラ感が強すぎた。あんまり好きではない。逆に「猫は逃げた」展開が絶妙で好きだ。今泉力哉監督の作品には、個人的に好き嫌いがずいぶんでる。今回は映画としては凡長な感触を受ける。


もともと田舎の海辺の街の映画は風景は抜群に良いのに,ネタが少なく話の内容がいまひとつ盛り上がりに欠けるケースが多い。途中も、最近の日本映画に多い無駄に長い時間が流れていた。この映画もおもだった内容は映画が終わる30分前には終了していた。そこからが長かった。おそらくこの長回し部分については賛否があるだろうが,僕自身はやりすぎと感じる。

ただ、永野芽郁は彼女自身が持つ魅力を最大限に我々に見せつけてくれた。高橋文哉に向かって、いたずらっぽく微笑む姿も素敵だし,結婚式のシーンで,ブーケをめぐって、高橋文哉がプールに飛び込むシーンがある。追いかけてプールに入る永野芽郁がなんて可愛いことか。それについては感謝したい。


残念ながら,香川県に行ったことがあっても,小豆島には行ったことがない。途中で小豆島と言う固有名詞が出てはいない。小豆島からは高峰秀子の名作「二十四の瞳」を生んでいる。永野芽郁がロケで映し出されるそれぞれの場面は実に素晴らしい景色であった。登校拒否の少年と一緒に小さな山を登り、上から海を眺める景色の美しさは絶品である。
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映画「ミッシング」石原さとみ&中村倫也

2024-05-20 21:51:23 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ミッシング」を映画館で観てきました。


映画「ミッシング」石原さとみ主演の行方不明になった娘を懸命に探す両親と事件を追うTV局との関係を描いた作品だ。「空白」吉田恵輔監督のオリジナル脚本である。ここのところ洋画にこれといった作品がなく、邦画を続けて観ている。「ミッシング」は後回しの予定であったが、石原さとみの熱演のうわさを聞き、とりあえず観に行く。

吉田恵輔監督作品は好き嫌いがあって、個人的には「空白」はイマイチで、負け続けるボクサーを描いた「BLUE/ブルー」と奇妙な三角関係の「さんかく」が好きだ。今度は気にいる気に入らないどっちに振れるかと思いつつ、映画館に向かう。

静岡の沼津、沙織里(石原さとみ)の6歳の娘が失踪する。預けていた弟と別れた後だった。夫(青木崇高)と共に街頭でビラを配り、懸命に捜している。TV局のディレクター砂田(中村倫也)は事件を取り上げ特別枠で放映される。しかし、娘の失踪時に沙織里がアイドルのライブに出かけていたことが判明して、ネットでは母親失格と中傷される。


視聴率を気にする局の上層部は、寸前まで娘と一緒だった沙織里の弟の証言に疑惑を持つ。上司命令で弟をテレビに登場させるように姉沙織里に依頼するが、SNSで犯人扱いされてしまう。

話自体に不自然さを感じて事前予想と異なる印象を持った。
石原さとみは好演だが、演じるキャラクターがイヤな女で好感が持てずまったく心を動かされない。むしろ、TV局のディレクターを演じた中村倫也板挟みの面倒な役柄をこなした印象をもつ。自閉症的な弟の存在も悪くはない。

舞台は静岡の沼津だ。人口20万程度の町の方が映画ロケはやりやすい。漁港のある沼津らしい海岸ぺりのシーンも多く、海辺の空気感もある。主人公の夫も魚市場に勤務している。ただ、こんな所で頻繁に誘拐事件が起きるのかな?といったそもそも論やSNSに振り回される住民がいるのかな?という疑問をもつ。「空白」の時も同じように思ったが、吉田恵輔監督が強引に話をつくっている印象をもった。犯人の存在を明らかにしない手法にも無理がある。

1.SNSによる誹謗中傷
事前情報では、SNSの誹謗中傷に翻弄される主人公という設定に思えたが、映画を観ると、それで落胆するような人物ではなかった。石原さとみが泣きわめいても常に強気でまったく何とも思っていない。途中でSNS上で中傷した人物を訴える場面があってもとってつけた感じを持つ。でも、SNS上に連絡先を伝えているためにイタズラする悪い奴が出てくる。

沼津に住んでいる主人公に愛知の蒲郡で見かけたとSNS上で発信。夫と蒲郡まで向かうが、途中で連絡がとれなくなる。挙げ句の果てにはアカウントがない。ひどい話だ。でも、こんな話はSNS上ではいくらでも転がっているかもしれない。

2.テレビ局の視聴率ねらいの取材
静岡のローカル局でしかも沼津、そんなに事件なんか起きるわけがない。少女の失踪事件でTV捜査網を張るなんて話はありえそうだ。ただ、それがエスカレートしていく。コンサートに行った時預かった主人公の弟に疑いの目が向けられているので、強引に嫌がる弟の取材をする。観ていてイヤなシーンだが、状況上仕方ない。TV局における視聴率への執着もテーマになる。


局の幹部と取材者との狭間にいるTVディレクターの存在は巧みにクローズアップできたと思う。地方都市では地元TV局に勤務する連中はエリートだ。中村倫也地方のエリートぽい雰囲気をかもし出していて適役だった。稚拙な若手女子社員特ダネに異様に執着心を持った男子社員との対比もいい。

被害者の親である主人公石原さとみがだんだんとTV局の言われるままになり、カメラ前で演技するようになる。印象に残るシーンとして、TV局が主人公石原さとみへのインタビューをしているときに、泣きながら答える石原さとみのセリフの中に「何でもないようなこと」と失踪事件を指すのを聞いたカメラマンがそれを訂正してやり直すシーンが気になった。


3,偽りの知らせ
もしかしたら、この映画のいちばんの見どころかもしれない。方々に手を尽くしてうまくいかない主人公の元に「お嬢さんが保護された」とTELが来る。歓喜して警察署にすっ飛ぶ2人のそばにはTV局のメンバーもいる。慌てて警察署に向かっていくと、対応する警察官からそんな知らせはしていないと。娘がいないで叫ぶ石原さとみが失禁している。ディレクターはその映像を撮るのを制止する。
蒲郡の件もそうだが、こんな悪さをする奴が存在するのかもしれない。最近のオレオレ詐欺の手口で電話番号を0110にして、相手を信用させるのがあるらしいね。何でこんなことやるんだろう。
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映画「湖の女たち」 吉田修一&大森立嗣

2024-05-18 10:10:40 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「湖の女たち」を映画館で観てきました。


2007年のある時から、観た映画の題名をずっと記録している。ちょうど17年で3333本となった。3が並んだキリのいい数字の記念すべき作品になる。

映画「湖の女たち」は、大森立嗣監督が,吉田修一の原作を映画化した新作である。この2人は自分が好きな名作「さよなら渓谷」でもコンビを組んでいて楽しみにしていた。関西の湖のほとりにある介護施設で起きた事件の犯人探しに動く刑事と施設で介護職に就く人たちとのやりとりを中心にストーリーが進む。スタートから夜明けの湖の映像が不気味である。ムードは決して明るくない。

湖畔にある介護施設で100歳の寝たきり老人が亡くなった。事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事の濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美(浅野忠信)が死因を確認すると、故意に人工呼吸装置が外されていることがわかる。これは殺人だ。

圭介は伊佐美から強い指示を受けて施設の担当介護士松本(財前直見)に執拗な取り調べを行なう。圭介は取り調べで出会った挙動不審な介護士佳代(松本まりか)に接近していく。


一方、事件を追う週刊誌の女性記者池田(福地桃子)は、この殺人事件と署が捜査を中断した薬害事件に関係があることを突き止めていく。調べていくと亡くなった老人が隠蔽してきた恐るべき真実に絡むことがわかる。

単なる老人の殺人にとどまらない重層構造のストーリーである。
取り扱う題材が多い。独立して映画ができるいくつもの題材を一つの映画に盛り込む。

ただ,主役2人の偏愛の意味は最後までよくわからない。

吉田修一、大森立嗣コンビの「さよなら渓谷」はじんわりと心に沁みる作品だった。真木よう子も大西信満もよかった。同じようなムードだけど、ただ長いだけになっているシーンも多かった。余韻ではなく無駄な時間が多い気がする。

松本まりかには偏愛も絡んだむずかしい作品だった。水中のシーンも含めて体当たり演技で頑張った。浅野忠信は性格の悪いパワハラ刑事役で福士のアタマを何度もこづく。刑事の熟練度で対比をみせるのは古典的刑事映画の手法だ。


題材が多い。
⒈介護施設において看護師と比較して地位の低い介護士
介護施設内でも序列があり、看護士より介護士の方が給与が低い。老人たちも看護士が薬を飲めと言えば飲むが、介護士の言うことは聞かない。犯人の疑いも介護士に向けられる。

⒉自白を強要する刑事の執拗な取り調べ
ベテラン刑事(浅野忠信)のパワハラがひどい。でも、警察署幹部は目をつぶる。財前直見演じる介護士はたぶん違うと若手が言っても、ベテラン刑事は他にありえないと若手刑事から無理やり自白させようとする。ひと昔前は常識と思われた自白の強要で、介護士の目の前に押印署名用の書類を置いて書けと強迫する。介護士が交通事故で負傷した後も繰り返す。


⒊第二次大戦中の731部隊の人体実験と薬害問題
ベテラン刑事は死者が50人も出た薬害問題の捜査に以前あたっていた。ところが、薬害問題を揉み消そうとする政治家からの圧力で捜査が中断する。今回は、週刊誌記者池田が問題の匂いを嗅ぎつける。そして、今回亡くなった故人の妻(なんと三田佳子久々見た)からも取材もしていくのだ。戦前あった故人の秘密があらわになる。戦後間もない帝銀事件の真犯人は平沢某ではなく、731部隊関係だと言われてきた。ずいぶんと壮大な話に転化する。


⒋優生思想
相模原の障がい者施設で起きた大量殺人事件とそれを題材にした映画「月」では、ヒトラー並みの優生思想で、生きている意味のないとされる障がい者が大量に殺される。それらに発想を得たのであろうか?同じように「生産性のない人は不要」と思う人たちが出てくる。それは意外な人物だった。

ネタバレに近いが、介護士の佳代を犯人のように仕立てて、ずっと追っていって、2つの事実を追う。この映画は最終的に断定しない。でも、万人がそうでないかと思わせる形で締める。くどいが、主人公2人の戯れはなんでこうなるのかよくわからない。
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映画「不死身ラヴァーズ」松居大吾&見上愛

2024-05-15 18:30:08 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「不死身ラヴァーズ」を映画館で観てきました。


映画「不死身ラヴァーズ」高木ユーナの同名恋愛漫画の映画化。「ちょっと思い出しただけ松居大吾監督がメガホンを持つことで気になる作品だ。あの映画が好きだ。主演の見上愛と佐藤寛太はあまりよく知らない。「青春18×2」観て以来、ラブストーリーが急に見てみたくなった。映画ポスターで主演は小松菜奈かと思ったら,見上愛だった。2人はよく似ている。

長谷部りのは幼い頃生死をさまよう病気をしたときに,ベットで同世代の少年甲野じゅんと出会い,思いがけずに回復してしまう。


やがてりの(見上愛)は中学生になり、甲野じゅん(佐藤寛太)と再会する。陸上部員として苦楽を共にして「好き」と打ち明けた時、突然じゅんが目の前から消えてしまう。高校生になってからも音楽部に所属するじゅんと出会うがまた消える。やがて大学に進学したりのが部活勧誘を受けてじゅんに再び再会した後で、じゅんが病気を抱えていることを知る。

ほのぼのとしているムードでも一途なラブストーリーである。
田舎町が舞台でのんびりとしたムードでストーリーが進む。エンディングロールで山梨県上野原市がロケ地とわかるが近くに水量の多い川が流れる緑あふれる場所だ。甲野じゅんが住む家は和風の古家だけど雰囲気がある。大学に入ると海辺の家だ。それも含めてロケハンには成功している作品だ。

見上愛小松菜奈に似ている。カエルのような顔をしている。一途な愛情を保つりのにぴったりの愛嬌のある女の子だ。実は出演作を見るとこれまで見てきた映画が多い。あ、そういえばあの時出ていたのかと思ってしまう。今まで存在を意識した事はなかった。ある男性のことを思い続ける、まさに愛の肯定だ。ロマンチックな話だけど、そこに難病の存在で変化をつける。


そもそも人が目の前から消えてしまうなんてありえない。まさに漫画チックなファンタジーだ。成長していくたびにじゅんに出会う。まさしく反復だけど、予想通りに進む寸前で若干の変化をつける。この辺りのかわしはうまい。あとはりのと同級生の男の子田中の使い方も上手い。途中から行きつけのバーのマスターになる。普通なら三角関係になるのにならない。徹底的に恋愛の肯定を追求する一方で、男女間の友情も追う二股がめずらしく成功する。


あとは最後の主題歌澤部 渡(スカート)「君はきっとずっと知らない」が良かった。
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映画「あまろっく」 江口のりこ&中条あやみ&笑福亭鶴瓶

2024-04-20 21:13:19 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「あまろっく」を映画館で観てきました。


映画「あまろっく」は江口のりこ主演の尼崎を舞台にした人情コメディーである。監督は中村和宏。私の妻は尼崎生まれで、小学校高学年までそこで育った。以前一緒に尼崎に行った時,阪神尼崎駅近くの古典的な商店街に驚いた。昭和にタイムスリップしたかのようだった。妻の生家の近くの風景が,映るので、気になっていた映画である。加えて、自分は江口のりこのファンで「ソロ活女子のススメ」が特に大好きだ。早速映画館に向かう。

京大を出て大手総合研究所に勤めていた主人公近松優子(江口のりこ)は現在39歳、会社で理不尽なリストラにあって尼崎にある実家に戻った。母(中村ゆり)は既に亡くなっていて,町工場を営む父親近松竜太郎(笑福亭鶴瓶)と一緒に住むことになった。ある日、父親から再婚しようと思ってると聞き承諾したが,連れてきたのは20歳の早希(中条あやみ)だった。市役所に勤める早希は育った家庭環境もよくなく、一家団欒に憧れていた。3人の共同生活が始まる。


ストーリーは単純にはいかず、面白かった。
たまにこういう日本映画を観るのはたのしい。演技巧者の江口のりこや笑福亭鶴瓶は、当然安定感があるが,中条あやみも、この2人を相手に堂々とした演技を見せてくれる。よかった。もし仮に本当に同じようなことが起きるなら,誰もがびっくりするだろう。娘優子は年齢相応の女性を連れてくると思っていた。最初は連れ子かと間違える。お嫁さんになった早希は一生懸命優子に近づこうとするが、なかなか受け入れられない。

やがて,大きな異変が起きる。父親の竜太郎が突如亡くなってしまうのだ。この映画は3人の生活を描いていくのかと思ったら,唐突に亡くなるのだ。結局2人で住むことになる。様々なできごとが起きていく。

しかも、竜太郎が亡くなっていたにもかかわらず,早希は妊娠してしまうのだ。


江口のり子演じる優子は、子供の頃から周囲と馴染めない性格であった。会社に入っても同様である。できない男を罵倒する。京大出のエリート社員だったにもかかわらず,リストラにあってしまう。近所のおばさんの息子が30代で、同じ京大出の独身ということで,お見合い話が出てくる。ボート部の選手だった優子の姿を知っていたお見合い相手が,裕子に関心を示す。この恋の行方も見どころの1つである。


飄々とした江口のりこのキャラは「ソロ活女子のススメ」に通じるものがある。長身の江口のりこに引けをとらないモデル出身の中条あやみの2人が並ぶと周囲が小さく見える。


バックに映る尼崎の風景は,いかにも庶民的で親しみが持てる。竜太郎が町工場の社長で、鉄工所や竜太郎が通う銭湯なども大衆的だ。昭和の匂いをプンプンさせる商店街も何度も出てくるし,阪神尼崎駅も登場する。観光名所の1種として尼崎城というのがある。今回は尼崎城で優子がお見合い相手とデートするシーンが何度も出てくる。あまろっくというのは、台風などでの水害に悩まされてきた尼崎を守る水門である。工場のベテラン工員役が佐川満男と知り、懐かしくなったが、訃報に接して驚いた。
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映画「一月の声に歓びを刻め」 カルーセル麻紀&前田敦子&三島有紀子

2024-02-12 17:36:38 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「一月の声に歓びを刻め」を映画館で観てきました。


映画「一月の声に歓びを刻め」は女流監督の三島有紀子が、幼児時代の性暴力体験に関するトラウマに基づき企画した作品だ。一線級の俳優が集まり、北海道、八丈島、大阪で3本の短編映画を撮る。三島有紀子監督の「幼な子われらに生まれ」荒井晴彦の脚本ということもあってか実に良かった。ただ、その後の監督作品「ビブリア古書堂の事件手帖」「Red」はストーリー自体に気にくわない場面があった。何気なく見たこのポスターの名前にカルーセル麻紀とある。ずいぶん久しぶりだなあと感じつつ映画館に向かう。

雪降り積もる洞爺湖の湖畔の家で一人暮らすマキ(カルーセル麻紀)が長女(片岡礼子)夫婦と孫と4人でおせち料理を食べながら新年を祝う。しかし、会話にはわだかまりがある。それは6歳で性暴力を受けて亡くなった次女の存在があったからだ。父親はその後性転換して女性になっていた。 

八丈島で牛飼いをしている誠(哀川翔)のもとに娘の海(松本妃代)が5年ぶりに帰郷した。妻は交通事故で亡くなっている。海はお腹が大きくて妊娠しているようだが、何も言わない。ただ、海岸で一人泣いていて海の様子がおかしい。誠が海のいない部屋に⼊ると⼿紙に同封された離婚届を見つけてしまう。


大阪の堂島、れいこ(前田敦子)は元恋人の葬儀出席で大阪に戻る。葬式帰り、鉄橋の下で悶々としていると、レンタル彼氏をしている男(坂東龍汰)に誘われる。名刺の名前に吸い寄せられそのまま男とホテルに入っていく。そこで、幼少期性暴力にあったトラウマで元恋人と向き合いきれなかった自分を回顧する。


久々に観たカルーセル麻紀の怪演に圧倒される。必見だ。
洞爺湖周りの雪景色が美しく、湖畔の家での家族の団欒のシーンでは、きめ細かくおせち料理の数々が美しく映し出される。老いてグレーヘアの少し変貌したカルーセル麻紀宇野祥平、片岡礼子との食卓での立ち回りがどこかおかしい。亡くなった片岡礼子の妹の存在は徐々にわかっていく。女性として生きてきた父親を、娘は今も受け入れていない。ツライ親子関係だ。

家族が帰った後カルーセル麻紀が一人で次女を憂うシーンや一気にニューハーフ系の濃い化粧に化けるシーン、雪降り積もる湖畔を歩きながら嘆き悲しむシーンが圧巻だ。10年ぶりの映画出演だというカルーセル麻紀が各種主演女優賞を受賞してもいいと感じる。改めて1942年生まれと確認して驚く。なぜなら、彼女と同世代の自分の元上司が近年次々と亡くなっているからだ。今の若い人はカルーセル麻紀を知っているだろうか。


自分が小学生の頃、当時はオトコ女なんて言われていたカルーセル麻紀はレアな存在だった。親に隠れてこっそり見るエロ系番組では常連で、TVのショーでスカートをハサミで切られる場面が50年以上たつけど脳裏に浮かぶ。モロッコでアソコを切った後、何かというとTVで見かけた日本のニューハーフのはしりだ。今回はカルーセル麻紀に出演をオーダーした三島有紀子のキャスティングの勝利であろう。すごい!

八丈島の物語は、5年ぶりに実家に帰ってきた娘が懐妊していて、その娘が結婚したことも親に告げずに離婚届を持ってきて慌てるという話だ。ちょっとした短編小説を読んだような後味をもつ。ここでの八丈島とその周囲を映し出すカメラワークは抜群で、じっくり映像素材になるシーンをストックするために長く島に滞在した感じがする。三島有紀子監督の映像センスを感じる。


三島有紀子自らの体験にダブらせるのは三島の故郷大阪を舞台に前田敦子が演じる短編だ。作品情報を読むと、大阪を舞台にした同作のロケハンで三島有紀子が訪れた場所で、偶然事件の犯行現場に遭遇したらしい。これもすごい話だ。そこで自身の過去を映画にすることを決意したようだ。

この映画だけモノクロだ。何か意味があるんだろう。やたらとを映すが、女性器を連想させるため?前田敦子がこの映画ではメインなんだろうが、正直なところこの短編がすごく良いとまで思わなかった昔の哀しみを表現するための長回しは三島有紀子自らの考えだろうが、ちょっと間延びした印象を持った。


カルーセル麻紀が雪の中演技し終わった後で太地喜和子から声をかけられたそうだ。人智を超えた記事があった。大酒のみの仲間だったのだろう。こんな台詞がカルーセル麻紀は似合う。なぜか昭和の怪優が復活した。一世一代の芝居だ。
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映画「市子」 杉咲花&若葉竜也

2023-12-20 21:42:53 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「市子」を映画館で観てきました。


映画「市子」は突然失踪した同居人女性は他人だったことがわかって、彼女の過去を追いながら現在の行方を探るミステリードラマだ。ここに来て主役での起用が増えている杉咲花と若者の偶像を描く作品で活躍する若葉竜也の共演。監督脚本の戸田彬弘監督作品を観るのは初めてでオリジナル作品だ。

予告編で、結婚を申し込んだのにその女性が別人だったという設定は分かっていた。ただ、それだけではストーリーの全容はわからない。昨年公開の死んだ夫が別人だった「ある男」をとっさに連想する。若葉竜也が毎度常連の今泉力哉監督の新作に出ずにこちらにかけたのかとも思いつつ映画館に向かう。

市子(杉咲花)が同棲している長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けて喜んでいる。ところが、市子は長谷川が帰宅する前にアパートを飛び出して行方不明になる。その長谷川を後藤刑事(宇野祥平)が市子の写真を持って訪ねてくる。そして、あなたの暮らしていた女性は市子ではないと言われあぜんとする。警察が捜査を進めるとのと同時に、長谷川は市子が歩んできた道筋を追いかけていく。



構成力に優れたミステリーだ。
時間軸をずらしながら、市子の歩んできた道筋を追っていく。途中でこの映画の結末がどのようになるのかよめないミステリー要素がある。映像から目が離せない。それぞれの場面に軽い伏線を残しながら、真実に迫る。俳優陣の演技もいいけど、巧みに構成して編集をまとめた戸田彬弘監督をほめるべき映画だ。予想外によくできている。もっと評価されてもいい。

時間軸は小学校時代、高校生時代、そして現在と3つの時代をめぐっていく。

小学校時代にすでに母親(中村ゆり)はシングルマザーで、夜は飲み屋で働いている。市子は小学校時代から普通ではない。カネがないので万引きもしてしまう。同級の友人とのお付き合いで、仲良くなったり、ケンカしたりするエピソードに伏線を散りばめる。それがのちのちの謎解きにつながっていく。

高校時代からは、市子を杉咲花が自ら演じる。市子の付き合っている男、市子を慕う男子の同級生母親のもとにたむろう男たちとの関わりが映し出される。シングルマザーの母親はいかにもという感じで男出入りが多い。そこからある事件につながっていく。


いくつもの時代を巡るエピソードで、少しづつ市子のこれまでの人生がわかっていく。市子はTVのニュースで白骨遺体が発見されたことに敏感に反応して家を飛び出す。でも、少しずつ謎が解けても肝心の市子が最終どうなっていくのかがわからない。どういう形でストーリーに区切りをつけるのかドキドキしながら追っていた。

杉咲花は身近にどこにでもいそうな女の子だ。高校生役を演じてもあまり不自然さはない。シングルマザーにまとわりつく変な男との微妙な関係を巧みに演じる。「法廷遊戯」でも殺人に絡んだが、むずかしいシリアスドラマを平気な顔をしてこなす。起用しやすいタイプなので来年も出番は多いだろう。


若葉竜也現代若者の偶像を描くには欠かせない俳優だ。失踪して探していく中で、刑事だけでなくむかし市子が関わり合った同僚、同級生、市子の身内など色んな人と交わる。探す側なので出番がむしろ杉咲花より多いかもしれない。今泉力哉監督作品などで超絶長回しをこなしているので、演技には安定感がある。

特に中村ゆり演じる母親と会う場面がよく見えた。徳島の海辺の町での場面は、海辺のロケーションも含めて肝となるシーンだ。ここのところ、シングルマザーがでる映画が多く、人気女優が次々と堕落したシングルマザーを演じている中でも美形の中村ゆりに実際にいそうな水商売独特の匂いを感じる。杉咲花に漏らすあるセリフにドキッとする。

もともとは舞台劇として設定した「市子」とは言え、今回は登場人物が住む寂れたアパート、むかし市子が住んだ古めの団地小学校校内ベイサイドなどロケーションが主体でリアルな空気を感じさせる。


エンディングの前まで、結末がわからなかった。最後はディテールを語らずにある人物を映し出した。
これでいいのではないか。
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