映画とライフデザイン

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映画「BAD LANDS バッドランズ」安藤サクラ

2023-09-30 17:20:23 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「バッドランズ」を映画館で観てきました。


映画「BAD LANDS バッドランズ」は振込詐欺を描いた黒川博行の小説「勁草(けいそう)」の主人公を男性から女性に代えた安藤サクラ主演の新作映画だ。原田眞人監督の監督脚本である。予告編の時からアウトローで面白そうだなという雰囲気がにじみ出ていた。「ある男」「怪物」安藤サクラよりも予告編で見るようなクセのある女が見たかった。大阪が舞台である。裏社会が絡む世界はやっぱり大阪が似合う。安藤サクラは東京人だけど、周囲の俳優に関西出身者を集めているようだ。飽きずに140分盛りだくさんの内容である。

電話で振り込め詐欺の被害者を呼び出し、カネをおろさせて、金の授受の場所を指示して「受け子」が受けとる。振込め詐欺チーム戦だ。被害者の元を警察が尾行しているかどうかを見極めて判断するのがネリ(安藤サクラ)だ。一方で警察側も日野班長(江口のりこ)率いる特殊詐欺対策チームをつくって、佐竹刑事(吉原光夫)を中心に詐欺グループを摘発しようと躍起だ。

名簿屋高城(生瀬勝久)は表向きホームレスを救済するNPO法人を運営していながら、振込め詐欺の親玉である。裏社会にも政治家にもつながっている。西成の貧民宿舎には元ヤクザの曼荼羅(宇崎竜童)も住んでいる。生活保護や医療補助金でもらったお金を高木が吸い上げる。ネリは血のつながらない弟ジョー(山田涼介)とコンビを組んで貧困ビジネスにも手を染めている。


ジョーは裏の仕事を依頼する賭博場の胴元(サリngROCK)から仕事を依頼される。ネリが急用で不在になったときに手本引賭博で大きな穴をあけて借りをつくってしまい、危ない仕事に手を染めた後に予想もできない行動に出る。

これはおもしろい。安藤サクラが冴える。
いきなり特殊詐欺グループの親玉高城とネリが振込め詐欺でカネの受領に着手する場面からスタートする。銀行にいる被害者がTELの相手から大阪の銀行から難波、天王寺、中之島と大阪の主要エリアを転々と移される。ネリたちは身を隠しながら、チーム戦で被害者を罠に落とそうとする。あちらこちら行けば、被害者もおかしいと感じるのは普通と思いながら「受け手」を指示する安藤サクラが動く。これは成功しない。警察がキッチリ張っていたのだ。いきなり緊迫した場面が続き目が釘付けになる。同時に、特殊詐欺事件での詐欺側、警察側の動きを見せつける。


そもそも俳優二世で血筋もいい安藤サクラなのに、堅気の役柄より下層社会にルーツをもつ女の方が似合う。傑作「百円の恋」「0.5ミリ」もその類だ。ネリはもともと育ちがよくない。ギリギリのところで彷徨って生きてきた。機転が効いて悪知恵がはたらく。明らかに腕力が強い男が迫る危機一髪の場面になっても動じない。すごいヒロインだ。

普通だったら、安藤サクラのワンマンショーになってもおかしくない。でも、周囲もいい仕事をする。登場人物は多い。配役が適切で、それぞれの役割分担を短いシーンで示す。脚本が簡潔なのでわかりやすい。それらの人物を大阪の街に放つ。メインの繁華街だけでなく、猥雑な裏筋通りにもカメラを運ぶ。ギャンブル好きで有名な黒川博行の原作なだけに裏賭博の鉄火場や賭け麻雀の現場、競艇場なども映し出す。エリア描写がキッチリしていると映画のリアリティが高まる。


内田裕也亡き後、元ヤクザのならず者なんて役を演じられるのは宇崎竜童に限られていく。NPOの下層社会相手のアパートに住んで、しかも身体はボロボロだ。でも、肝心な時に安藤サクラをフォローする。信頼できる男だ。ダウンタウンの時代、阿木耀子と一緒に楽曲を提供した時代、映画をかじり始めた時代それぞれを思い出しながらいい役者になったと感動する。天童よしみ特殊詐欺組織の親玉に起用する。いかにも大阪のめんどくさいオバサンのキャラだけにピッタリくる。


弟役の山田涼介もチャランポランな最近のワル役がうまい。行動が極端で姉のネリが尻拭いをする。度胸よくのりこんでいくのに怖気づくシーンが笑える。最近流行の仮想通貨系青年実業家を演じる淵上泰史も最近のワルらしい風貌だ。裏社会としっかり繋がっている。高級個室で会食しながら妖しい女に性的遊戯を強制する。しかも、DVが半端じゃない。こんな感じのやつが世の中で悪いことをしているのかもしれない。

すごい存在感だったのがサリngROCKだ。初めて見るけど、裏社会の女そのもので見ようによってはカッコいい手本引の賭博が繰り広げられている鉄火場の胴元であるばかりでなく、チンピラをヒットマンに仕立て裏仕事を手配する。主要人物の動きなどの裏情報は誰よりも早く耳に入る。最後に向けても、金の精算で抜け目ないところを見せる。今後の活躍に期待だ。


江口のり子は自分が好きな女優だけど、ここではひょうひょうとした警察の係長を演じる。その下の吉原光夫演じる刑事がリーダー的存在だ。この映画は警察側の立場で特殊詐欺に対抗する動きを見せているのがいい。昨年「冬薔薇」が高評価だったが、警察側がまったく語られていないのが大きな欠点だった。「太陽がいっぱい」ヒッチコックの「見知らぬ乗客」を書いたパトリシアハイスミスは自らの著書で刑事ができる犯人への対処の暴力的限度は難しいと書いている。警察小説をいくつも書いている黒川博行なら信憑性ある警察の仕事を書けるかもしれない。

ラストシーンも良かった。いくつかのシーンでわれわれに迷彩を作ってわからないようにする。
これだけ悪いことをしても、主人公を応援したい気持ちにする。

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