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映画「西湖畔に生きる」 

2024-09-29 19:48:04 | 映画(アジア)
映画「西湖畔に生きる」を映画館で観てきました。


映画「西湖畔に生きる」は中国映画、前作「春江水暖」で古い中国の雰囲気をにじませる映画を送り出したグー・シャオガン監督の作品である。前作は自分も魅せられた好きな映画である。前作同様杭州が舞台、直近でワンイーボー主演のダンス映画「熱烈」も都市開発が進み高層ビルが立ち並ぶ杭州を映し出していた。題名の西湖も出てくるが、郊外の中国茶の段々畑をドローン撮影で俯瞰して美しく映し出す。

杭州市の郊外に暮らす母・タイホア(ジアン・チンチン)と息子・ムーリエン(ウー・レイ)が2人きりの母子だ。10年前父は家を出て行方がわからず、タイホアは山の茶畑で茶摘みの仕事をしている。息子は大学出ても就職先が見つからず、やっと見つけた仕事も老人向け健康器具販売で詐欺まがいですぐ辞めた。タイホアは、茶畑の主人チェンと一緒に暮らすつもりが、その母親の逆鱗に触れ茶畑の仕事からを追い出される

一緒に辞めた茶畑での同僚の兄弟がいる会社に行こうと誘われて行くと、「足裏シート」を販売する会社だった。会社に行き集団で説明を聞き、違和感を当初持っていたタイホアも気がつくと周囲の熱狂に押されてマルチ商法の罠にハマっていた。


山水画の雰囲気を持つ風景の美しさと現代中国のドス黒い部分のコントラストが強い傑作だ。梅林茂の中華テイストの音楽が映像にピッタリと合う。
スタートから杭州郊外の緑あふれる段々畑をドローンで映す。小動物が動き回る田園風景の中で母子を映すカメラワークも柔らか「山水映画」の色彩が強いと思いきや一変する。


最近の日本では話題にならないが、まさしくマルチ商法の世界である。こういう悪い連中の拠点に行ったらマズイと言わんばかりだ。現代中国ではこういう詐欺がいまだに続いているのかもしれない。うさん臭い中国裏社会を描いた映画はどれもこれもおもしろい

⒈マルチ商法の手口
お茶摘みの同僚と一緒に勧誘される人たちが乗る大型バスに乗って行く。バスの中から洗脳が始まっているのだ。組織の女性が巨万の金が入ってくるよと集団全員に訴える。その勢いで現地に着くと、みんなを狂乱の渦に落とすショーのようになっている。足裏シートをたくさん売ってマネジャーになれば1000万元入ってくるよと主催者側が叫ぶと周囲は大歓声だ。母親のタイホアは疑心暗鬼だったのにだんだん周囲の勢いに同調するようになる。悪夢のような世界だ。

新興宗教にしろマルチ商法にしろ洗脳の構図は一緒だ。誘われて先方のホームグラウンドにいる時点でもうダメだ。この手の詐欺話は韓国映画に多いけど、中国でも詐欺は横行しているのか?前作は立ち退き問題を取り上げたが、今度は明らかな犯罪だ。


⒉詐欺に引っ掛かる母親と元に戻そうとする息子
最初の勧誘のシーンからしばらくして母親と息子がゴンドラのような小舟に乗って対面するシーンがある。もともとスッピンに近い母親がチリチリの髪でドギツイ化粧に変身する。完全に組織を信用している。息子は足裏シートを試すが、母親の部屋に行ってびっくりだ。商品の足裏シートの箱が部屋の中に大量にある。どうしたんだと聞くと、家を売って資金に充てたと。財産をぶっ込んだと聞き息子は大慌て。そして、組織を信じる母親の一方で懸命に母親を救おうとする。


こんなシーンを観ていると、安倍元総理の暗殺事件の犯人山上を連想してしまう。母親が統一教会に次から次へとお金を入れ込むことで、巡り巡って鉾先がとんでもない方に向かった。常軌を逸する行動でとても許されないことだが、犯人の気持ちは世間には通じて統一教会への締め付けが厳しくなった。この映画では息子はあの手この手でなんとか母親を助けようと奮闘する。

⒊西湖畔の美しさ
中国史の中でも古くから取り上げられる湖だ。杭州が舞台の映画「熱烈」では高層ビルが立ち並ぶ映像が多く、トレーニングシーンで湖畔が少し出ただけだった。マルチ商法の勧誘を西湖上の船で行ったり、歴史的な建造物の雷峰塔が出てきたりする。寺院を含めて建物の選択のセンスはいい。

この映画ではドローン撮影が効果的に使われている。先日観たノルウェーが舞台の「ソングオブアース」でもドローンから俯瞰して見る氷河や雪山の映像が良かった。時おり空を飛ぶ夢を自分が見て、地上を見渡して気がつくと目が覚める一歩手前のような風景が出てくる感じがいい。

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