Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

日本と西洋あるいは<世界>

2010-01-11 13:30:06 | 日記
たとえば、“海外の小説や思想”を愛読してきた(している)にせよ、時々、むなしくならないということはない。

しかし肝心なことは、それなら<日本>原産のもの“だけ”を読んでいれば、むなしくならないのか、ということである。

あるいは、“日本原産のものだけ”とは、なにを意味するのか?
端的に、そんなものはない、のである。

けれども(要するに)、その<書き手>が日本人である場合と、日本人でない場合の<差異>はあるだろうか、これは<ある>と思える。

たとえば、<ヘーゲル>を(誰でもいいのだが)、原文(ドイツ語)で読むのと、翻訳で読むのと、“解説書”で読むのと、へーゲルの思想を“使って”日本人が書いたものを読むのは<差異>がある(だろう;“だろう”というのは、ぼくはドイツ語が読めないから)

ならば、“ドイツ語が読めない”日本人は、ヘーゲルを“理解できない”のだろうか。
あるいは、“ドイツ語が読める”日本人も、“ドイツ人”よりヘーゲルが理解できないのであろうか。
しかし、ヘーゲルが理解できない“ドイツ人”もたくさんいるようである(笑)

逆に“日本人”が書いたものなら、“日本人”であるひと全員が理解できるのであろうか(爆)

しかし、たしかに、“日本人であることの悩み”は、ある。

このことを<悩む>ことこそ肝心である(いま思いついた!;笑)

自分が“わかる”日本語のなかで、<たわむれて=はしゃいで>いては、ダメである。


いくつか引用しよう;

★ 哲学の勉強をしていると、おかしな話だが、不断に<哲学とは何か>という問いにせまられる。ことに、もともとphilosophiaに当たる言葉をもたず、したがってそれによって名指される知の様式をもったこともないにちがいないわれわれ日本人が、西洋にしか生まれなかったphilosophiaの勉強をするという、考えようによっては滑稽な立場に身を置いていると、この問いはいっそう切実なものになる。その時どき、なんとか自分を納得させて勉強を続けることになるが、しかしその納得の仕方は必ずしも一貫したものではなく、恥ずかしい話だが、そのつど変わってゆく。
<木田元;『哲学と反哲学』(岩波現代文庫2004)


★ ミケランジェロをいくら研究しても、私は「西洋美術を理解する東洋の女」であるにすぎない。それまでは無我夢中だった。その結果、私はミケランジェロの本質がわかってきていた。まるで永年の知己のように彼のことがわかってきた。だが、そのことがとてもむなしかった。私と彼をつなぐものがなにもないからだった。なぜなら、彼は白人男性で、16世紀のイタリア人であり、私は現代の日本人だからだ。
<若桑みどり;『クアトロ・ラガッツィ』(集英社文庫2008)>


上記<引用>のぼくの<意図>は明瞭である。

しかしたとえば、上記引用に下記のような引用を<激突>させるべきである;

★ 戦後社会の可能性という問題を考えるとき、保守(自由主義)と革新(社会主義)という選択肢を考える人がいるかもしれない。いずれも国家の体制という大きな共同性にかんする選択肢であり、両者のあいだに過酷な闘争が存在したことも事実である。だが、こうした選択の平面は二次的なものではないだろうか。むしろ戦後社会の機軸ということで問題になるのは、政治体制のような大きな共同性にかんする理想が後退し、それに代わって、家庭の幸福や私生活のような個人をベースとする小さな共同性への志向が前面に出てくることである。もちろん、国民国家にかんする共同幻想と、家庭という小さな情愛の場とは構造的に連接しており、機能的には相関項であるといえよう。だが、この構造連関に支えられながら、「家庭」という凡庸な形象が異様に肯定的な場として浮上してくるのである。

★民主主義の時代は「生き延びる」ことが最大の前提になる。(略)民主主義は「形式的な手続き」に見えて、その内部に、あまりに自明なためその実質を問題にされずにいる「生の哲学」を内蔵していた。それは価値増殖によって自身の正当化を求める資本の論理に深く相関するとともに、フーコーのいう「生きさせる権力(生-権力)」の一形態でもある。三島由紀夫は戦後社会に浸透する西欧的な「生の哲学」を強く警戒していた。
西欧の工業文明は死をタブー視したが、それは「生-権力」と資本主義の論理に相関する現象である。日本の戦後社会においても、民主主義と高度成長が「日常」として定着するなかで、死のタブーとそのポルノグラフィ化――それと平行する「性」のタブー解禁――が徐々に浸透していく。三島によれば、人びとは切実なはずの「死」の問題を忘れようとしている。

<内田隆三;『国土論』(筑摩書房2002)>





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