Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

ああ勘違い;ベルイマンのために

2012-07-14 10:33:04 | 日記

これまで、茂木健一郎の連続ツイートを何度かネタにしてきた。
それは賛同よりも非難(or 批判)であった。

しかし下に引用する連続ツイートは、ひたすら、“イングマール・ベルイマン”という監督の映画に注意を喚起するためである。

残念ながら、ぼくがある映画や小説をこのブログで絶賛しても、その影響力はゴミにひとしい。
もし“有名人”に価値があるなら、彼らの発言が、多くの人々に“影響力”があるということだ。

この茂木健一郎のツイートを読むことで、いちどもベルイマンの映画を見たことがないひとが、ベルイマン作品を見るなら、たしかに“この社会”にかすかな希望がひとつ増えると、ぼくには思われる;



☆ kenichiromogi 茂木健一郎

あか(1)スウェーデンのイングマール・ベルイマン監督と言えば、本当に美しい映像を撮る詩人である。『ファニーとアレクサンデル』の冒頭、白い雪の中に色とりどりの花が置かれた景色とか、『夏の夜は三たび微笑む』 で、仕掛け時計の人形が回るシーンとか、ため息が出るほど美しい。
2012.07.13 06:56 twitter

あか(2)そのベルイマン監督に、『処女の泉』という名作がある。白黒映画で、全編に叙事詩のような荘厳さがある作品。人間の感情の振れ幅や運命の深さ。復讐をしようというお父さんが、蒸し風呂に入って、自分の裸の身体を枝でぺしぺしと叩くシーンが、印象に残っている。
2012.07.13 06:57 twitter

あか(3)この『処女の泉』を見たのは、確か池袋の文芸座(まだあるかわからないけれども)だった。二十歳そこそこの頃。古ぼけた名画座で、ベルイマンの映像世界に浸っていると、周りの様子がどうもおかしい。へんなおっさんがあちらこちらに来ていて、なんだかもぞもぞ落ち着かない様子である。
2012.07.13 06:58 twitter

kenichiromogi 茂木健一郎
あか(4)やがて、おっさんたちは、「あ〜あ」と退屈したようなそぶりを見せ始め、一人、二人と映画の途中なので出ていってしまった。不思議なこともあるものだと思ってそのまま映画を見続けた。終わって、劇場を出た瞬間に「あっ」とわかった。あのおっさんたちは、勘違いしていたのだ。
2012.07.13 07:00 twitter

kenichiromogi 茂木健一郎
あか(5)ベルイマンの『処女の泉』は文芸大作なのに、題名で勘違いして、よからぬ期待をして入ってきたのが、全然違うので、つまらねえ、と出ていってしまったおっさんたち。道理で、どう見ても名画座に来る観客とは違うとは思っていたが、まさに「ああ、勘違い」の一幕だったのだ。
2012.07.13 07:01 twitt

kenichiromogi 茂木健一郎
あか(6)題名だけで、こんな感じなのか、と思っていて、実際には違うということはある。ツルゲーネフの『初恋』は、想像していたようなソーダ味ではなく悲惨な話だったし、それを言うならトルストイの『アンナ・カレーニナ』も。そもそもタイトルを、『アンナ・カレニーナ』と長らく勘違いしていた。
2012.07.13 07:04 twitter

あか(7)勘違いと言えば、いちばんの勘違いは庄司薫の名作『赤頭巾ちゃん気をつけて』であろう。読むまで、赤頭巾ちゃん=女の子が、悪いオオカミさんに狙われて、キケンな思いをするちょっといやらしい小説とばかり思っていた。実際に読んでみたら、感動の青春小説であった。
2012.07.13 07:06 twitter

あか(8)タイトルの『赤頭巾ちゃん気をつけて』も、ある素敵な場面に由来しているのだが、これ以上書くとネタバレになるので、まだの方は是非読んでください。同じように『ライ麦畑でつかまえて』も、読むまで、ライ麦畑で男の子と女の子が捕まえごっこをするのだと、勘違いしていた。
2012.07.13 07:08 twitter

あか(9)「ああ、勘違い」の不思議なところは、実際に作品を読んで、その実体を知った後も、何とはなしにその前のイメージの残像があるということである。あの日、池袋の文芸座でベルイマンの『処女の泉』を途中で出ていってしまったおっさんたちの脳には、一体どのような残像があるのであろうか。
2012.07.13 07:09 twitter

みなさんも、恥ずかしい勘違いはありませんか? あったら、告白してみませんか? 以上、連続ツイート第654回「ああ、勘違い」でした。
2012.07.13 07:10 twitter

(以上引用)





ぼくがベルイマンやタルコフスキーの映画に感じる感情は、”圧倒的な懐かしさ”である。

ある時代の、ある映画館の暗闇の。

懐かしいものとは、失われたものである。




*注記;

ぼくはベルイマンの映画を’みんな’見たわけではない。

ぼくが見ることができたなかで、いちばん好きなのは、「野いちご」です。







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