★ ものを考えるのは、ある意味で、例外状態あるいはアブノーマルな事態から考えることです。たとえば、誰でも重い病気になると人生について考えますね。ノーマル(規範的)ではない形態から出発するというのは、ものを考える上での基本的な姿勢だと思うんです。しかし、それはノーマルな状態を軽蔑することではない。ただ、日常的なノーマルなものが、どんなに複雑であるか、またそれが堅固に見えてどんなに脆弱であるか、そういったことを知るために不可欠なのです。ニーチェはそれを「病者の光学」と呼んだと思います。それは、他のあらゆる事柄についてもあてはまります。
<柄谷行人;“議会制の問題”(1992早稲田大学学園祭講演)-『<戦前>の思考』>
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます