下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
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麻耶雄嵩『あいにくの雨で』

2010-04-29 23:59:59 | 
久しぶりに手に取ってみた麻耶作品。
今までのことがあるので、恐る恐る読み進めましたが・・・


烏兎(うと)と獅子丸、祐今(うこん)の3人は高校3年の男子生徒。
初雪の降った夜、町外れの廃墟の塔に明かりがついていることを不審に思った3人は、
3人で塔に行って、様子を見ることにする。
塔の周りの広場には雪が積もっていて、塔に入っていく足跡が1筋だけついていた。
ところが、中に入ってみると浮浪者風の男が1人、死んでいた。
やがて、それは殺人で、男は8年前から行方不明だった祐今の父親であることが判明。
8年前に祐今の母親がこの塔で殺され、祐今の父親が殺して逃げたと思われていたが、
烏兎たちは8年前と今回の事件は同一犯だと考え、真相を調べ始める・・・


雪の密室です。
犯人の足跡が無い状況で、どのように殺人が行われたか・・・ということなのですが、
そこはさすが麻耶氏、一筋縄ではいきません(笑)
普通小説は「1」章から始まるはずですが、冒頭にいきなり「13」章があって、
速攻で密室のトリック解説がしてあるという不思議な構成です。
それには、やっぱり何か作者の意図があるんだろうと用心深く読んでいきました。

読み始めて思ったのは、格段に文章が読みやすくなっているということ。
『翼ある闇』で、あれだけ肩肘張ったような文章だったのが、
だいぶ流れて読めるようになったな~と素人が偉そうな感想を持ちました。
多分、高校生の探偵譚だし肩肘張ってる暇がなかったのかも。

ただ、この高校生たち、探偵ばかりしているわけではありません。
彼らの通ってる高校は不思議な田舎の高校(制服なし私服登校)でして、
生徒会や選挙管理委員会などがスパイ作戦や裏工作などを繰り広げています。
烏兎と獅子丸は生徒会の調査室=スパイ部のメンバーなんですよ。
調査室は裏の存在で、一般の生徒はその存在を知らないとい設定で、
使っている部屋(通称クリーク)にはパソコンがあって、
そこには学校の生徒の全データーが調査されて入っているのです!!
で、そこで起きた機密漏洩事件の謎にも、烏兎と獅子丸は取り組みます。

とまあ、高校生の学園ものではあるし、
麻耶作品にしては、本当に「普通」の本格作品になっています。
(あくまでも、麻耶作品としては、ですけど)
読後感も読中感も「爽やか」ではないですし、そこが麻耶氏らしいですが。

『夏と冬の奏鳴曲』と比べたら、これは断然「あり」の作品です。