晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

コート・ダジュール(紺碧海岸)は山国だった。ニース周辺に<山里を訪ねる No.1>【日曜フォトの旅】

2013-04-07 23:43:38 | 旅行とレジャー
一週空いて、再び「コート・ダジュール」の続編で、今週は<山里篇>をお届けしましょう。



     
     典型的地中海の切り立った海岸線



ヨーロッパで、「文明」と言う言葉は『地中海』を意味した。


つまり、文明が栄えるには「経済活動」が発達し、人間の生活状態が満たされる必要が有る。

いち早く商業が発達し、貨幣経済の社会が有ってこその文明であった。

経済的裏付けの有る社会では、人はひたすら生きる為に喰う段階から、「生きる事」に喜びを見いだす様になる。

そこに文明が発達し、文化が栄えるのだ。


ちなみに20世紀後半以後は、経済が人間を支配し「精神文明」を退化させてしまう段階にまで、至ってしまったが。


と言う訳で地中海沿岸は、食料生産を可能にする豊かな土地と気候に恵まれて、人々の経済活動が活発になり、定住地から移動して生活圏を拡げて行き、その各生活拠点の間に物資を輸送し、商業活動が更に活発になって行った。

古代地中海世界の周辺の辺境とは、基本的に人が住みその生活の水準を上げて行く様な環境には無かった。

北は唯ひたすら寒冷な森林地帯。

東は強烈な太陽に焼かれた荒涼とした乾燥地帯。

南はアトラス山脈でそれ以南はサハラ。

西は大西洋の大海原である。


必然的に『地中海沿岸』に人間の生活拠点が広がり、文明が発生して行く事となった。


古代にいち早く広範囲に交易を行って、拡散して行った民族に『フェニキア人』が居た。

地中海の東端、レバノン辺りの海岸に発祥し、西へ西へと交易路を拡大し、その要点に植民して都市を築いて行った。

そのフェニキアの植民都市の中の、最も栄えて遂に強大な国家となったのが『カルタゴ』である。

2千5百年程前、北アフリカは先進地だったのだ。

そのフェニキア人達が「西方貿易」の拠点として植民したのが『マッサリア』後の「マルセイユ」である。


その後、エジプト北海岸の「アレクサンドリア」に一大拠点を置いた「海賊」達が、地中海世界を席巻する様になって行く。

フェニキア人は、「マッサリア」を東から攻めて来る海賊から守る為に、マルセイユの東に「橋頭堡」を築く事になった。

海岸からやや突き出た岩山の島が、対海賊の防戦の拠点として選ばれて、砦が築かれた。

そこが『ニカイア』。

今のニースである。

その後、海岸の目の前に有ったその小高い山の様な島は、陸地とつながって、その周辺にも人々が住む様になる。



ところで3億5千年程も前に、今の「アフリカ大陸」と「ユーラシア大陸」とが、長い年月の大陸移動で激突する。

衝撃で地面が盛り上がり、そしてその衝撃の直後に、反動で両大陸が逆の方角にはじかれた事で、ぶつかってつながった大地が引き裂かれた。

その裂け目に膿が流れ込んで出来たのが『地中海』である。

ちなみに、衝撃で盛り上がった北側が『アルプス山脈』で、南側は『アトラス山脈』と名付けられる事となる。


言いたかった事は、地中海の沿岸部の背後は、直ちに山となって切り立っている、と言う事なのです。

従って、ニースですら後背地はすぐに山国となり、冬季は雪山が望まれる。


文明栄える所は、富みが集中して豊かである。

当然、それら富みの集中する都市部を狙って、海賊が跋扈した。

古代からルネッサンス期に至るまで、その伝統は延々と続く。

アフリカ海岸は「アレクサンドリア」の他にも「アル・ジャザイール(アルジェ)』を始め、現在チュニジアの「ジェルバ」やその他、格好の退避可能な湾が有った。

ヨーロッパも負けていない。

特にイタリアの海洋都市国家として栄えた「ピサ」や「ジェノヴァ」は、アフリカの海賊に恐れられた強敵であった。

そのご、9世紀半ばからおおよそ百年間、ノルマン人(バイキング)がヨーロッパ中の河をさかのぼって荒し回り、遂に地中海に進出して黒海まで至った。

シチリア島に植民して「ノルマン王国」を建設する。

近東のアラブ人の海賊、アフリカ系アラブ人の海賊、それを迎え撃つヨーロッパの海賊、そしてノルマン人達が入り乱れて、互いに相手の沿岸に攻め寄せ、町や村を襲撃して回った。

必然的に、海岸沿いにあった町や村は、襲撃から身を守る為に、背後の高台へ、山の頂上へ、と移動して行く事となった。

地中海沿岸に多い「鷹の巣」の様な頂上にへばりつく町や村の登場である。



さて、前置きが長くなり過ぎた様です。


ニースから、背後の山岳地に北上する事45分で、『ペイユ』という「鷹の巣村」がある。


     
     ペイユ全景



この村は、他の典型的な「鷹の巣村」に比べると、山の頂上という感じでは無いが、麓の道路からつづれ織りの道をヘアプンカーブの連続で登って行くと、否が応でも高い山の上に登って行く感覚が実感出来る。



     



     
     丸いドーム型の屋根は「サン・セバスティアン礼拝堂」



     
     「サン・セバスティアン礼拝堂」の屋根



この村の教会は、紅い素焼きの瓦の円屋根が、東方教会(ギリシア)の影響を忍ばせる。



     



     



     


この村は、山の頂上自体ではなく、「頂上近く」の斜面にへばりついているので、村の中には<等高線>に沿って平行する小径が何本か通っている。



     



     



そして、その平行する道が主たる通りとなり、その間を結ぶのは必然的に階段の道である。



     



     



     



     



     
     市役所。


ここは、感覚的には「村」だが、ちゃんと『Hôtel de Ville(市役所)』と表示してあるので、一応「町」と訳すべきか。

ちなみに、村だと役場は『Mairie』と言うのです。


     



一軒小さな「食事処」みたいなレストランがあって、めちゃめちゃ「田舎の家庭料理」の『今日の料理』の表示が有ったが、残念ながら未だそこで食事をした事は無い。





更に、この「ペイユ」の町から10分程ニース側(南)に引き返すと、これ以上無い典型的な「鷹の巣村」がある。

『ペイヨン』村である。



     
     「ペイヨン村」全景


ここは、山の頂きなので、直線の道はない。

斜面をジグザグに折れ曲がる、緩やかな坂道か階段である。



     
     


家々の玄関も、階段を上って扉に至る造りが多い。



     



     



そして、例に依って家のしたをくぐるアーチ型のトンネル部分も沢山ある。



     



外周部の階段はなだらかで、途中に噴水も。



     



一番天辺は教会である。



     
     『サン・サクルモン聖堂』



17世紀の建立なので、村自体の存在に比べてそれ程古くはないが、内部のフレスコ画が素晴らしい。



     
     聖堂内のフレスコ



     
     別の角度からの全景


車で天辺まで上り詰めると、村の入り口が車10台程留められる駐車場になっている。

その直ぐ前に、一段高い斜面の上にレストランが有る。



     
     レストラン『オーベルジュ・ド・ラ・マドンヌ』


このレストランは、7~8年前にモナコの天才「アラン・デュカス」のプロモーションで一つ星になった。

お昼の定食は、30ユーロでグラス・ワイン付き。

もの凄くお買い得です。




     
     店内の客席



     
     テーブルのセット



冬の間は、前菜に「カボチャのポタージュ」などが出て来るが、すこぶる繊細で美味。

夏は、グリーンピースのポタージュ冷製が、圧巻です。

今回は、敢えてお料理の写真は無しにします。



コート・ダジュールの魅力は、海だけではありません。

絶対に「山」の角度からも味合わなくてはいけないのです。

続きは、来週に。











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2 コメント

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言葉も有りません! (Himbeere)
2013-04-08 09:40:14
パリさま、

ドカンと落ちました。^^
「コート・ダジュール」の<山里篇>とは・・・、この様な場所が有るとは、全く思っても居りませんでした。礼拝堂のお帽子の様な屋根、この様な屋根も初めて見ました。何とも優しい屋根ですね。

「家々の玄関も、階段を上って扉に至る造りが多い。」このお写真の素敵な事。その上の方にあります小路・・・。何と雰囲気のあるところでしょう。山の上に村があるのですよね。中世そのもの!凄い所は、崩れていない事です。石の建物は、凄いですね。

田舎料理、ちょっと試してみたいですね。この様な山の中に一つ星のレストラン、テーブルセッティングが洗練されている事。お食事も洗練されているのでしょうね。

今週もありがとうございました。来週も楽しみです。^^
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Himbeereさま。 (時々パリ)
2013-04-09 19:37:53
コメント有り難うございました。
毎日毎日、ハラワタ煮え繰りかえりそうな日々を送っていますと、浮世離れした話題も、毒では無いかと思いまして。
この手の「鷹の巣村」は、訪れるともの凄いエキゾチックな雰囲気に感激しますが、住んでる人達は大変だろうなあと、ふと考えてしまいます。
階段の上り下りが毎日続き、ちょっとした買い物でもビッグイヴェントになりそうで。
でも、実際住人達はそれが当たり前で、その生活に何の疑問も持って居らず、自分の村を愛している。
私たち日本人が、いかに軟弱になってしまったかを、痛感させられます。
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